マクロスFに夏目友人帳――2008年の人気アニメが旋風を巻き起こした第3回声優アワード詳細リポート(3/3 ページ)
声優界のアカデミー賞として発足した声優アワードが3月7日、東京・秋葉原で開催された。声優アワードは今回が第3回となる。
新設された海外ファン賞、そして助演賞、主演賞の発表へ――
山寺さんが温めた空気を受けて発表されたのは今回新設となる海外ファン賞。昨今、声優という職業が海外でも注目され、活躍する人が増えてきたこともあり、より多くの視点からの評価を踏まえ、より多くの声優に賞を贈りたいという趣旨で新設された。公式ウェブサイト上で海外のファンたちから投票してもらったという。
栄誉ある初代海外ファン賞には福山潤さんが輝いた。福山さんは英語版DVDも発売された「コードギアス 〜反逆のルルーシュ〜」で、主役でありながら反逆者でもあるという複雑な表現が求められるキャラクター、ルルーシュ・ランペルージを見事に演じ、日本国内だけではなく海外でも強烈な印象を残し、多くのファンを獲得した。
福山さんは真っ白なスーツで登場し、「毎日のようにアフレコさせていただいて、自分が2年前にこちらのステージに立たせていただいたときに(※福山さんは第1回声優アワードにて主演男優賞を受賞している)こんな瞬間が来るなんて思っていませんでした。我々声優は作品ありきというのもあるんですが、何より日本語をしゃべって作品に命を吹き込んでいます。そんな中で海外の方々が、言葉の壁を越えて作品を観ていただいているだけではなく、我々の表現にも耳と気持ちを傾けてくださったということで、ただただ嬉しく、びっくりする気持ちでいっぱいです。作品を作ってきた全てのスタッフと共演者と、作品を見てくださった全てのアニメファンの方々にお礼を申し上げたいと思います」と、初代受賞者の名に恥じないコメントを残した。
第3回声優アワードも終盤に入り、助演賞の発表へ。助演賞は昨年発表された作品の中で助演として活躍した声優から選ばれる。今回助演女優賞を受賞したのは「マクロスFrontier」のシェリル・ノーム役で一躍時の人となった遠藤綾さんと、「夜桜四重奏(ヨザクラカルテット)」の五十音ことは役など、確かな演技力で多くの作品を支える沢城みゆきさんの二人。
遠藤さんは「すごく嬉しいです。これまで演じさせていただいたキャラクターたちは私が声を当てる前からすでに魅力的なキャラクターたちばかりでした。それにちょっとだけ命を吹き込むことができて、素敵な作品として色付けすることができて嬉しかったです。いただいた賞にふさわしい役者になれるように頑張りたいと思います」と、沢城さんは「座席に座っているときは緊張するなー、と思っていたんですけれども、先ほどから登壇されている大大大先輩の方たちのパワーに圧倒されています。ほとんどが今日初めてごあいさつさせていただいた方たちだったんですけれども、お顔を拝見すると緊張するのに、お声を聞くとずーっと知っていることもあって気安く話しかけてしまいそうで、いけないと思いながら嬉しくご一緒させていただきました。その方たちと同じ賞をいただいているということを私はもう少し考えていかないといけないと思い始めたところです。私自身は本当にこういう公の場は苦手で動揺することが多いのですが、マイク前だけは言い訳することがないように、1日1日やっていけたらと思っています」とそれぞれコメント。控えめながらも、強い意志が感じられるものだった。
助演男優賞には「夏目友人帳」でニャンコ先生と斑を好演し、その愛らしさとかっこよさのギャップでファンを魅了した井上和彦さんと、「伯爵と妖精」のレイブン役をはじめ、落ち着いた演技力と瞬発力のあるアドリブが多くのファンに支持された杉田智和さんが輝いた。「僕は仕事が楽しくて、毎日毎日仕事をやらせていただいて幸せだな、と思いながら心を込めてお芝居をしています。これからも精一杯心からお芝居をやっていこうと思っています。36年前に僕をこの世界に入れていただいた永井一郎さんに改めて御礼申し上げます」(井上さん)
そして、杉田さんが「ここまで携わってくださったたくさんのスタッフの皆さん、そして、投票制ということでファンの皆さんの支持あってこそだと思います」ここまではいい。「このですね、“なんとかキャ○ター”のステッキみたいなトロフィーでございますが、燃える血のような、たくさんの人々の血潮が詰まっているということで、持ちますと20キロくらいありますからね。なーんてね。どうもありがとうございました」……あっ気にとられつつも、客席からこの日一番の笑い声が会場に響いた。
そしてついに最後の賞となる、主演賞の発表! 主演賞は昨年発表された作品の中で、主演として活躍した声優から選ばれる。まずは主演女優賞から。主演女優賞は今やツンデレの代名詞とも言える釘宮理恵さんが受賞! 着物で登場した釘宮さんは「好きなことをしてこのような立派な賞をいただけるなんて、本当に光栄に思っております。応援してくださるファンの皆さん、テレビの前の皆さんと少しでも心のやり取りができて、本当に幸せだなと感じています。これからも日々、自分を磨いて精一杯頑張っていきたいと思います」と丁寧に述べた。
主演男優賞はパーソナリティ賞にも選ばれた神谷浩史さんが受賞。2008年は飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍だっただけに、文句なしの受賞といえる。「感激と緊張のあまり言葉がうまく出てきません。本当に、すべての方々に感謝をしております。その中でも夏目友人帳の原作の緑川ゆき先生、『さよなら絶望先生』の原作の久米田康治先生、このお二人に最大の感謝をして、この賞をいただきたいと思います。僕がここに立っていられるのはお二人のおかげです。本当にありがとうございます。神谷浩史、これからもずっと声優です! 本当にありがとうございました!」と主演にふさわしい、勢いのある熱いコメントを魅せた。
最後に声優アワードの締めくくりとして、会場に設置されたレッドカーペットを受賞者たちが練り歩いた。レッドカーペットの両脇には今回数々の賞を受賞した人気声優たちをひと目見ようと集まった数百人のファンたち! 彼らに祝福されながら歩く受賞者たちの表情は、みな一様に誇らしげに見えた。
日を追うごとにアニメーションに対する注目が高まる昨今、それに追随する形で声優への注目も高まってきている。作品のレベルが高くなるに連れて求められる演技力も高まっていくだろうが、それを乗り越え、今後も多くの声優たちが活躍することに期待したい。
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