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インタビュー

約束ごとの大事さを知る――「さんかくぼうしのミンミン」インタビュー

ストーリーにかかわったゲームクリエイター野島一成氏と、本書のプロデューサーでありクリエイティブ・ディレクターの谷澤伸幸氏に話をうかがった。

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あなたが大事にしている約束はありますか?

 3月1日に発売された幼児向けのデジタル絵本「さんかくぼうしのミンミン」をご存知だろうか? 作/野島一成氏・谷澤伸幸氏、絵/林田秀一氏による子供向け絵本のシリーズで、その第2弾が現在制作中である。

 主人公は不思議な女の子「ミンミン」。不思議な世界でできた友達「メタモー」と魔法の帽子とともに、冒険を通じて「きまりごと」や「約束」、「友情」の大切さ、すばらしさを知ってゆく物語となっている。

 今回、「さんかくぼうしのミンミン」は、FFシリーズでおなじみにゲームクリエイターである野島一成氏と、プロデューサーでありクリエイティブ・ディレクターの谷澤伸幸氏にお話をうかがった。絵本ならば短期間でできるとふんで関わることにした野島氏だったが、実際試行錯誤していくうちに3年もの月日を費やしてしまったと振り返る。そこへ谷澤氏が加わり、半年後に日の目をみることになったというが……。


―― 実際にかかわることになって、当初の思惑と最終的に完成したものとの差異や変化は?

野島さん 当初は、例えば現実とは思えない風景や、珍しい生き物を見た時の驚きや感動をそのまま絵本にできないかと試行錯誤していました。ストーリーは一歩引いた感じで不可思議と驚き優先で。でも、谷澤さんやスタッフと話していくうちに、大人には「普通」の基準があるから見慣れないものに驚くけれど、子供はまだ基準を持っていないので見方が全然違うのだということに気がつきまして、そこから基本に立ち返って物語性を強く打ち出す方向にシフトしました。もちろん、驚きや感動を捨てたわけではなく、うまくミックスできるように工夫をしたのですが、そう簡単ではありませんでした。いつもは長いRPGのシナリオを作っているので実質15シーンというのは想像以上に手強かったです。

―― 絵本を製作するのに一番大切なことはなんだと思いますか?

谷澤さん 子供がどういう色や音に敏感で対象物の情報から何を得ようとするか。子供の目線で話を作り、そして、両親の目線で絵本を通して楽しませながら「何を伝えようとするか」という、多量な情報をいかに圧縮してシンプルに、ストーリーに仕立て上げるかという点でしょうか。ただ、情報の圧縮という点では、広告表現にとても近いのですが絵本は、そこに“美学”があると思います。

野島さん そうですね。「省略の美学」でしょうか。この省略された部分に絵本が親子のコミュニケーションツールとして長く愛されている秘密があるのだと思います。

左が谷澤氏、右が野島氏

―― 一番注目してほしいところは?

野島さん ミンミンの表情です。恐ろしい場面なのにうれしそうだったり、叱られているのに他のことに気を取られていたりと、落ち着かないミンミンの様子は、大人から見ると少々困った子ではありますが、同時に共感を持って頂けるのではないかと思っています。

谷澤さん いきいきとした、かわいい登場キャラクターたちもそうなのですがそれに劣らない背景画の素晴らしさです。本当に美しい背景美で見る人を必ず優しい気持ちにさせてくれます。

―― 特にどんな人に見てもらいたいですか?

野島さん 版を重ねた、いわゆる名作絵本のリズムがどうも間延びして物足りないというお母さん、お父さん、そしてそのお子様たちにぜひ見て、読んで頂きたいと思っています。

「第0話」

谷澤さん 実はこの絵本、「デジタル絵本」とうたっていまして。付録に、絵本になっている第1話の前話である「第0話」のストーリーが、丸々絵本テイストのアニメーションになって収録されていたりするのですが、それだけではなく、公式サイトの「さんかくぼうしのミンミン」でWebやモバイルを活用したインタラクティブな楽しみ方ができます。絵本やアニメの背景には隠し絵として様々な動物や昆虫が隠れていて、それを見つけ出して公式サイトにある「ミンミン動物図鑑」と照らし合わせて遊べたりできちゃうんです。そういった、絵本の新しい楽しみ方を試してみたい方には是非見ていただきたいです。

谷澤さん すべての絵本と同じく、実際のところ、作り手のいろいろな思いが詰まった絵本ではあります。でも、とりあえず、そういうことは気にせずにミンミンの冒険を楽しんで頂ければと思います。

―― 最後に、この絵本は約束について扱っています。あなたにとって「大切にしている約束」はなんですか?

野島さん 果たせないと恐ろしいので滅多にしませんが、妻子との約束です(笑)

谷澤さん 同感です(笑)

著者プロフィール

野島一成(のじま かずしげ)

1964年、北海道生まれ。日本の代表的ゲームシナリオライター。データイースト、スクウェア(現スクウェア・エニックス)を経て独立。 誰もが知る世界的大ヒットを飛ばしたFINAL FANTASYシリーズなど多数のヒット作のゲームのシナリオを手がけ、現在も活躍中。

谷澤伸幸(たにざわ のぶゆき)

1978年、東京生まれ。立教大学卒業後、電通に入社。カンヌ国際広告祭金賞をはじめ、One Show、D&AD、ロンドン広告賞など国内外の賞を多数受賞。映画・アニメの分野で活躍中。


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