現実空間に魔物?――セカイカメラが向う“ARゲーム”の世界
「北海道が魔王軍に襲われている。助けに行こうぜ!」「岐阜にある封印を解いてくれ」――アンビションが開発した“拡張現実RPG”「セカイユウシャ」が近くセカイカメラに搭載される。7月30日に発表会が開催され、ゲームの内容が紹介された。
「現実空間で自然に透明にゲームを遊ぶ体験性を開拓したい」――頓智ドットは7月30日、AR(拡張現実)サービス「セカイカメラ」の今後を紹介する「セカイカメラ新ビジョン発表会」を開催。iPhone版セカイカメラが搭載したゲーム機能「セカイアプリ」上で提供を予定する“拡張現実RPG”「セカイユウシャ」の内容が紹介された。
ARゲームで「リアルに冒険に出かける」
セカイカメラはモバイル端末のカメラ映像に「エアタグ」と呼ばれる電子コンテンツを付加するARサービスだが、現在はTwitterのようなインタフェースでユーザー同士が交流できる「セカイライフ」機能やセカイアプリ機能を備え、単にエアタグを見るだけにとどまらないサービスへと変化している。
特にセカイアプリは同社が現在最も注力している機能だ。同社の井口尊仁CEOは、セカイアプリの特徴を(1)人と人がつながるソーシャル性、(2)場所、移動のコンテキストをゲームに反映させる、(3)現実空間にコンテンツが重ね合わされたAR表現、だと説明する。また、多数のデベロッパーが参加できるゲームプラットフォームに育て上げる考えで、APIの整備などを進めている。
現在はゲームの第1弾として、AR空間に“ボム”をセットして遊ぶ「ばくはつカブーン」が公開されている。今後も、“セカイを花で埋めつくす”というコンセプトの「Flower Generation」や、鳩のARキャラクターが登場するTwitter機能「CooKoo」などがセカイアプリ上で体験できるようになるという。そして近日公開予定の注目作が、アンビションが開発した“拡張現実RPG”「セカイユウシャ」だ。
「セカイユウシャは“リアルに冒険にでかけよう”というゲーム」――アンビション 経営戦略部 部長の奥村大輔氏は、ゲームのコンセプトをそう話す。日本各地のAR空間に出現するモンスターを、ほかのユーザーと協力しながら倒し、謎を解きながらクエストを攻略していくのだという。「北海道が魔王軍に襲われている。助けに行こうぜ!」「岐阜にある封印を解いてくれ」といった、位置情報ゲームのようにリアルな行動を促すイベントが多数用意されているのも特徴だ。
ユーザーの交流の場としては、全国505カ所にプレーヤーが集まる“AR酒場”を用意しており、冒険仲間を集められる。また、内蔵したTwitter機能で情報交換を行うことも可能。そのほか、将来的には、ユーザーがアイテムを販売できる露店機能や、地域ごとの“ご当地クエスト”の提供、転職機能なども実装する予定だという。
セカイアプリは現状では課金ができないが、順次対応する予定で、アンビションはアイテム課金によって収益化を図る考え。また、観光地や宿泊施設をはじめとするリアル店舗とのタイアップも積極的に進めるという。当初は日本国内限定でサービスを始めるが、世界展開も視野に入れて取り組む。
Android版もセカイアプリに順次対応
セカイアプリはiPhone版セカイカメラのみが搭載している機能だが、Android版セカイカメラでも「長い間待たせることなく提供できる」と井口氏は話す。また、KDDI研究所のAR技術「実空間透視ケータイ」とのコラボにより実現したau端末向けサービス「セカイカメラZOOM」でも、ARゲームの横展開を目指すようだ。
ゲーム機能以外にも、セカイカメラのサービス改善は行われている。iPhone版セカイカメラは継続的にアップデートを実施しており、最近ではエアタグの位置の調整機能や、セカイカメラのエアタグにコメントがあったりした場合に通知が行われるノーティフィケーション機能などが利用できるようになっている。
また、新たに搭載された「エアショット」も将来が楽しみな機能だ。現状ではARコンテンツが映り込んだ画面をキャプチャーして写真アルバムに保存するシンプルな機能だが、今後は、写真をクラウドにアップロードして、映り込んだエアタグの内容をタップして表示するといった「ダイナミックな展開」(井口氏)を予定しているという。エアタグの機能が残った状態で写真を保存できれば、写真に映りこむエアタグのコメントが月日とともに更新されるのを楽しめるはずだ。思い出の写真を起点に、思わぬ交流が生まれるかもしれない。
「日常で当たり前のように使われるようなステージはまだまだ遠い」
2009年9月に公開されたiPhone版セカイカメラは、これまでに120万ほどのダウンロードがあったと井口氏は話す。また、Android版セカイカメラやセカイカメラZOOMに加え、世界の都市のエアタグが閲覧できるiPad版セカイカメラなど、サービスのマルチプラットフォーム化も着々と進め、利用できる環境を増やしてきた。
しかし一方で「日常で当たり前のように使われるようなステージはまだまだ遠いと考えている」と井口氏は語る。これは、かつてマスコミが大きく取り上げた仮想空間サービス「Second Life」との違いを問われた際の発言だ。
「仮想空間で生活することに対する夢が一時期盛り上がった。セカイカメラも一種の“拡張現実バブル”みたいなものに踊らされているという指摘もあると思っている」と井口氏は言葉を続ける。「デバイス、位置情報、通信環境、そして我々のアプリケーションにもまだまだ未熟な所がある。セカイカメラの新しい世界観やコミュニケーションを、どのように普及させるかに、日々チャレンジしている」
こうした“チャレンジ”の1つであるセカイアプリが、プラットフォームとして市場を形成するかどうかが、同社の今後に大きな影響を与えることになるだろう。
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