「ソーシャルゲームは生き物」 「怪盗ロワイヤル」大ヒットの裏側:CEDEC 2010(2/2 ページ)
「面白くない」「よく分からん」――当初、社内で散々な評価だったという「怪盗ロワイヤル」。大ヒットした秘訣を開発者が語った。
本質は最初の5分で見せろ ソーシャルゲームの極意
プロトタイプを作り、DeNA社員に見せたところ受けは悪く、「意見の9割はイチャモンで、つまらんと言われた」と振り返る。だが「いちいちへこんでいるわけにもいかない」。ソーシャル性は成り立っているか、ボスが強すぎるなどパラメータのチューニングはおかしくないか、そもそもゲームの根幹要素が崩れていないか――など、つまらない理由を分析した。
ソーシャルゲームでは、最初の5分でユーザーに何を伝えるかが肝という。「コンソールゲームは頑張って理解しようとするかもしれないけど、無料で始められるソーシャルゲームは自分に合わないと思った瞬間、2度とユーザーはやってこない。ゲームの本質の片鱗は最初の5分で見せないといけないと思っている」
とにかく「トライ&エラー」。開発工程では「ユーザーがどこの何にひっかかっているのかを見極め、ゲームのコア要素が何かを1行で答えられるように考える」ことを意識したいたという。
β版公開から正式公開までは、画面遷移やパラメータ、ゲームの基本構造を徹底的に見直す期間で、「ここで重要になるのがエンジニア」。「ソーシャルゲームは生き物なので、問題があったらいち早く修正していかないといけない。エンジニアが主体となって動けるかどうかは大事」
DeNAは、怪盗ロワイヤルのほか、星の文明を発展させていく「ホシツク」、敵船とバトルしながらお宝を探す「海賊トレジャー」などいくつかのソーシャルゲームをほぼ同時期に公開。公開から3週間でソーシャルゲーム全体の売り上げは3億円、ページビュー(PV)は45億と爆発的に伸びた。
モバゲー全体のPVは、昨年9月の170億から、今年7月は740億に。DeNAの売上高は、今年度の第1四半期(4〜6月)で241億円となり、前年同期の88億円から大幅に拡大。「ソーシャルゲームをフックに急成長」した。
怪盗ロワイヤルの公開直後、大塚部長は、トラフィックの負荷対策に追われ、会社から帰れない状態だったという。ユーザー対応にも忙しかった。ソーシャルゲームは公開すると「センスの良い企画者と開発者で成果が出せるフェーズから、マネジメント力・PDCA(Plan Do Check Act)力が問われるフェーズになる。ここでうまくいけばロケットスタートをキープできる」
適切な位置に人参をぶら下げる
ソーシャルゲームでは、ユーザーの“飽き度合い”を測る指標を定めて定点観測することが重要という。怪盗ロワイヤルでは、「登録してから〇日後にアクセスする人は〇割」という継続率を重視している。
怪盗ロワイヤルも「ミッション」や「バトル」といった行為を淡々と繰り返す作りで、ソーシャルゲームは、継続的なプレイが基本だ。継続率を上げるためには“繰り返す行為”が快適でなければならない。「目標に対して前に進んでいて、もう少しで“ツモれる”、うまくなっているという感覚が、適度なタイミングで与えられていることが大事」と説く。
一般的な目安として、100万人が登録しているゲームで、月間売り上げ1億円を達成するために必要な継続率は、7日後に3、4割。課金率は5〜10%、課金単価は1カ月に1500〜3000円が一般的なデータという。
課金効率を上げるための鉄則は、(1)ユーザーがシンプルに効果を実感できるか、(2)目標感が適切か、(3)ユーザーを焦(あせ)らせる要素があるかの3点。お金を使った効果が分かりやすいのは言うまでもなく、「適切な位置でユーザーの前に人参がぶら下がっている」目標感と、「今じゃなきゃ! というところがしっかりある」“焦(あせ)らし要素”が肝になると説明していた。
今後、怪盗ロワイヤルを越えるゲームを作るには何が必要か――セッションの最後で、来場者からこんな質問があった。
「ヒットしたものをオマージュしただけでは、元のものを越えるのは難しい」と大塚部長。「ゲーム構造は近くてもいい」が、オリジナルのおもしろさを提供できるかどうかがカギになるという見方を示した。
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