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話題の中心は成長の中国市場――アジア4カ国のゲームメーカートップ8人がアジアゲーム市場を熱く語ったTGS2010【アジア・ゲーム・ビジネス・サミット】

「東京ゲームショウ2010」は、テーマのひとつに「アジアNO.1の情報網羅性」を掲げている。このテーマを象徴するイベントとして、東アジア各国のゲームメーカートップが集まり、アジア圏におけるゲーム業界の将来を語る「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット」が9月17日に開催された。

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アジア4カ国から大手8メーカーがパネルに参加

 「アジア・ゲーム・ビジネス・サミット」は、17日の午後1時から幕張メッセ内の国際会議場Bホールで開催された。中国からは、盛大遊戯(シャンダゲームズ)副総裁の銭東海氏、騰訊(テンセント)互動娯楽業務系統副総裁の王波氏、韓国からはNHNハンゲーム代表のジョン・ウク氏、NEXON代表理事のソ・ミン氏、台湾からはガマニアデジタルエンターテインメントCEOの劉柏園氏、XPEC Entertainment会長の許金龍氏、そして日本からはスクウェア・エニックス社長の和田洋一氏、カプコン社長の辻本春弘氏が参加した。

XPEC Entertainment(左)とガマニア(右)は単独ブースで「TGS2010」に参加。とくにガマニアは、国内大手メーカークラスの大ブースを構え、新タイトル「DIVINA」などのステージイベントも開催する

 アジア圏のゲームメーカーは、多くが参加4カ国に集まっていて、韓国、台湾、日本の各メーカーは、日本でもサービスを幅広く展開している。一方、中国メーカーについては国内の直接サービスがないため、なじみが少ない方も多いと思う。そこで、シャンダゲームズとテンセントについて簡単に紹介する。

 シャンダゲームズは、中国でネットワークコンテンツを提供するシャンダグループ(盛大網絡)のなかでゲーム領域を担当している。2009年には32のオンラインゲームを中国国内向けにサービスを行い、アクティブアカウントだけで9000万を超えるという。一方、テンセントは中国で圧倒的なシェアを誇るインスタントメッセンジャー「テンセントQQ」などで知られる会社で、同社の「QQ ゲームポータル」にはMMORPGからカジュアルゲームまで多数をラインナップし、ユーザー数は6800万人という。

 現在、中国内のオンラインゲームのシェアはこの両社が1位、2位を争っている状態で、今回のパネルディスカッションは各国の最大手ゲームメーカーのトップが一堂に会したものだったわけである。そして、和田氏が「これまで、日本とアメリカ、韓国とアメリカ、台湾とアメリカといった会議はあったものの、こうしてアジア圏のメーカー同士で集まる機会はなかった」と語っているように、このような形のディスカッションは珍しいものだったのだ。

中国ゲーム市場の成長は間違いないが、外国からの進出は難しい

展示ホール6、7には台湾コーナー(左)、中国コーナー(右)が設けられ、各国からゲームメーカーのほかアニメーション製作会社などが出展している

 ディスカッションは日経BPの浅見直樹氏をモデレータに進行され、まずはパネリストによる各国ゲームの「マーケット感」の発表からスタート。トップバッターのソ氏が「日本は停滞している。韓国も数年前から停滞している。そうしたなかで中国は人口も多くマーケットは大きく発展している」と語ると、他のパネリストもほぼ同様の見解で一致。台湾の劉氏は「中国は特別な市場である。発展しているし文化も多元化しているので、今後もっと成長して欲しい」と希望を語り、許氏は「中国と台湾は4日前にECFA(経済枠組み協定: FTA=自由貿易協定に相当するもの)が発効し、今後より市場がオープンになり参入しやすくなる」と進出への意向を示した。日本からは辻本氏が「モンスターハンターシリーズについては中国展開を予定している」、和田氏も「今年あるいは来年から新しいパートナーを見つけて参入したい」と今後の方針を明らかにした。

 そのなかで、韓国のジョン氏だけはマーケット感については同意したものの「NHNにとって中国マーケットは厳しいです。以前に中国で自社サービスを5年間続けたのですが、失敗してしまいました」と、外国企業によるサービスの難しさを強調した。ライバルのNEXONは「シャンダゲームズと提携を結び、現在7タイトルのサービスを行っていていずれも好調です」(ソ氏)とのこと。台湾、韓国、日本のメーカーにとり中国市場進出は大きなテーマであるものの、単独での進出には高いハードルがあるようで、いかに優秀な企業となパートナーシップを結んでいくかが大きな課題のようだ。

 韓国については、オンラインゲームの普及が早かったこともあり「韓国はネットゲーム発祥の地で、世界全体の方向付けをしてくれる場所。われわれは学ぶことが大きい」(王氏)といった声がある一方で、韓国側からすると成熟市場のため「韓国は企業が飽和化していて競争が激しい」(ソ氏)「韓国は成長しきってしまっているので国外へと出て行きたい」(ジョン氏)というのが実感のようだ。

 一方、台湾については「台湾は『小さな宇宙』。台湾で成功すればほかでも成功できる。みなさんの進出を歓迎する。もちろん、われわれも世界に向かって進出しなくてはならない」(劉氏)といったように、韓国メーカーほど自国への閉塞感感じていないようだ。

 日本については「ゲーム大国」という認識は共通するようで、「日本はバスでもオンラインができる。ゲーム対する隙間がない。コンソールましんだけでなくオンライン化すればもっと発展する」(銭氏)「日本はモバイル市場で成功できなければ成功しない」(ソ氏)といった感じで、モバイル市場への発展に大きな期待が持たれているようだ。

中国から参加したシャンダゲームズ副総裁の銭東海氏(左)、テンセント互動娯楽業務系統副総裁の王波氏(右)
台湾から参加したガマニアデジタルエンターテインメントCEOの劉柏園氏(左)、XPEC Entertainment会長の許金龍氏(右)

 とはいえ、和田氏が「日本のゲーム市場は大きく、成長もしている。ただ、容易かというとそうではない。日本のユーザーは非常にセグメントが細かく、しかも早く変わる。そこはわれわれも苦労している」と指摘するように、日本ならではの難しさもあるようだ。

パートナー企業を選ぶのは夫婦選びのようなもの

 続いて、議論はアジア市場において各メーカーのパートナーシップがいかにあるべきか、という議論に移った。各メーカーとも、海外進出にあたりパートナーシップを重要視している点は変わらない。とくに、一度中国進出に失敗しているジョン氏は「ゲームには流通などさまざまな要素があり、それを全部外国の人が行ってやるというのは難しい。NHNの場合、強みは市場にあわせたゲームを作れることで、弱みはマーケティング、コミュニケーションの部分。この点については、その国の人にやってもらったほうがよい」と自らの経験を含めて語っている。

 パートナーシップ選びの際に重要視する点については、パネリスト全員が共通して「高い品質」「理念を共有すること」を挙げている。また、王氏が「パートナーシップは夫婦のようなもので、みなさん、結婚前は目を皿のようにして相手を見て選び、結婚後は目をつむってガマンすることも多い。それと同じです」、劉氏が「現地とのパートナーは長い時間がかかる。5年で判断してはいけない」とそれぞれ語るように、サービスが継続するオンラインゲームの場合、長期的な視点も不可欠なようだ。

韓国から参加したNHNハンゲーム代表のジョン・ウク氏(左)、NEXON代表理事のソ・ミン氏(右)
日本から参加したカプコン社長の辻本春弘氏(左)、スクウェア・エニックス社長の和田洋一氏(右)

 また、中国企業とのパートナーシップについては「中国は、日本や韓国、台湾と商慣習が異なり、会社法の違いから資本関係という選択肢はなく必然的に事業提携になる」と和田氏が指摘している。この点は、多くの日本企業が中国へ進出する際に問題とされる部分で、ディスカッションでは明かにされなかったものの、NHNの場合は中国進出にあたりその辺の読み違えがあったのかもしれない。

中国へのラブコールが目立った

 最後に、今後注目されるテクノロジーについての議論が行われ、各パネリストとも「モバイル端末」「スマートフォン」「ソーシャルゲーム」といった点に注目していることを確認して、パネルディスカッションは終了した。

 ディスカッションを通じて感じたのは、話題の中心は成長市場の中国であり、台湾・韓国・日本の各メーカーは中国でのパートナー企業を真剣に求めていることだった。NHNの単独進出における失敗経験、スクウェア・エニックスの和田氏が指摘した商慣習の問題などを考えると、中国進出にはパートナー企業が不可欠で、中国から参加したシャンダゲームズ、テンセント両社へのラブコール的な発言がかなり多かったのも印象的だった。

 議論の途中で、モデレーターの浅見氏がテンセントの王氏に「この会場にいらっしゃる方々のなかで、提携先としてふさわしい企業はありますか?」と話題を振ると「ごめんなさい」とジェスチャーで答えをはぐらかしていたが、水面下でかなりの動きがあるに違いない。実際、パネルディスカッション終了から数時間後に、スクウェア・エニックスとシャンダゲームズの提携も発表されている(参考記事→「ついに「FF」シリーズが中国上陸――スクウェア・エニックス、中国・シャンダゲームズとの戦略的提携を発表」)。

 今後、中国と台湾・韓国・日本の各メーカー感での提携が加速することはほぼ間違いない。そのとき、日本産ゲームが中国に進出するだけでなく、中国発のゲームを日本でも数多くのゲーマーがプレイする時代がやってくるかもしれない。

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