iPod touchは携帯型ゲーム機の新たな地平を切り開けるか?:iPodの生みの親に聞く(3/3 ページ)
ちょうど10年前、iPodは音楽プレーヤーとして誕生した。そして今ではゲーム業界でも影響力を持つ携帯ゲーム機に生まれ変わり、さらに輝きを放っている。iPodの生みの親でもある、米AppleのStan Ng氏(スタン・イング)に話を聞いた。
アップルが一目置く10本のゲームタイトル
ここからはAppleワールドワイドプロダクトマーケティングのShawn Ellis氏(ショーン・エリス)が、未発売タイトル5作品も含めてiPod touchの特徴的なゲームを紹介してくれた。
1つ目は「Cover Orange」(FDG Entertainment/115円)。ブロックや車輪と言ったアイテムをうまくタッチ操作でドラッグして落とし、オレンジが雨に濡れないように覆うパズルゲームだ。
キャラクターの絵は、かなり“バタくさい”アメリカンテイストだが、やってみるとアイテムを落とす場所が大事な面や、タイミングが大事な面など、パズルとしてはよく練られている。世界的大ヒットとなったゲーム「Angry Bird」が日本でも一部に受け入れられていることを考えると、このゲームもヒットする可能性がありそうだ。
2つ目は「Puzzle Bobble 2」(TAITO/価格未定/2月中リリース)。スリングショット(パチンコ)にセットされた色つきのボールをタッチ操作でドラッグして打ち放つ色ゲーム(同じ色のボールがある程度連なると消える)。
3つ目は、ほかのゲーム機でもお馴染みの日本語文字パズルゲーム「もじぴったん」(ナムコバンダイ/無料、ステージを後から追加購入)。ひらがなが並んだパレットから、文字をドラッグして単語を作っていく。
4つ目は2月リリースが予定されている「Bop It!」(EA Games/価格未定)。Bop Itという玩具をiPod touch/iPhone上で再現している。流れてくるリズムとかけ声にあわせてクラクション(タップしてならす)、ラッパ(引っ張ってならす)、ツイスター(ひねって音を鳴らす)をリズムカルに操作。Facebook Connectを使って、スコアをFacebookで共有可能。何人かでプレイするモードも数種類用意されており(各プレーヤーが最後までプレイするモードと、途中で次のプレーヤーに手渡すモードなど)パーティーゲームとしても楽しめる。
5つ目は、EpicがUnrealのエンジンを使って開発した超絶グラフィックスゲーム「Infinity Blade」(Epic Games/700円)。これはただのムービーだろうと思うような高精細な場面でも、タッチしてアイテムを拾ったり、微妙に視線の角度を変えたりできる。これはエリス氏の発言でなく、筆者自身による付加情報だが、Infinity Bladeは2010年12月のリリースから、たった5日間で26万本ダウンロードされ、最低でも1億3000万円を売り上げた、まさにApp Storeのまだ続くゴールデンラッシュぶりを再証明したゲームだ。
6つ目は「Resident Evil vs. Mercenaries」(CAPCOM/価格未定/2月リリース予定)。これは何を隠そう、カプコンの看板ゲーム「バイオハザード」シリーズの1つ。こだわりの操作感で定評のあるバーチャルコントローラを採用し、マルチプレイにも対応するようだ。
7つ目は「Asphalt 6」(Gameloft/600円)。本体を傾けて操作するレーシングゲームだが、高精細なグラフィックスが美しく、ゲームで獲得した車を眺めて楽しむガレージモードも充実している。さらにWi-FiやBluetoothを使って、iPod touchユーザー同士での対戦(レース)も簡単にできてしまう。
8つ目は「Devil May Cry 4」(CAPCOM/価格未定/2月リリース予定)。全世界でシリーズ累計680万本以上の販売をしているスタイリッシュアクションゲームの大ヒット作だ。元々はPlaystation 2で誕生したこのゲームが、今では手のひらにおさまるiPhone 4でプレイできてしまう。ちなみに、これも筆者による加筆だが、かつて大画面テレビでプレイして高画質だと思っていたPlaystation 2と、iPod touch/iPhone 4を比べると、実はiPod touchのRetina Displayのほうが高解像度なのだ。
9つ目は「Star Wars Falcon Gunner」(THQ/350円)。ファルコン号を操って線画の敵機を打ち落とすという、かつてあったスターウォーズのアーケードゲームをiPhone上で再現する。スターウォーズのライセンス商品なので、ゲームの途中などに懐かしい映画のシーンが組み込まれているのもおもしろい。また、高精細なRetina Display品質のグラフィックスで作り直され、拡張現実(AR)モードも備える。ARモードでは、iPod touchの向こう側に見える現実の景色の中に敵機が現れ、それを打ち落としていく。
最後はEAによるスポーツゲーム「NBA Jam」(EA Sports/価格未定/2月発売予定)。バスケットボールの2 on 2(2人対戦)を楽しむゲームだ。選手の表情まで描きだすグラフィックスの細かさが特徴。
実は本当に充実しているiPod touchのゲームタイトル
10年前、音楽再生専用機として登場したiPodが、今ではゲーム機に進化したというのが今回のアップルの主張だが、実はアップルはそうなるための“種まき”を数年前から始めていた。iPhoneとは別に打ち出したiPod touchのテレビCMでは、ゲーム画面を前面に打ち出し、タイトル数の多さを強調している。
スティーブ・ジョブズCEOも、いくつかの講演で、iPhone/iPod touchのゲーム・エンターテイメントタイトルは、とうの昔にNintendo DSやPSPのタイトル数と10倍以上の差をつけている、と述べている。
実際、筆者もいくつかの携帯型ゲーム機は一応持っているものの、ほとんど使っておらず、そもそも自分はあまりゲームをしない人間だと思っていた。しかし、ここのところiPhoneとiPadで、非常によくゲームをするようになった(アップル製品の使用頻度についてはかなりバイアスが掛かっているユーザーの1人だが)。
例えば、ワールドカップの最中は、GameloftのReal Soccer 11やEA SportsのFIFA 11で盛り上がった。アップルのデモ用iPod touchには「ウィニング・イレブン」が入っていたが、操作のしやすさやゲームの完成度ではReal SoccerやFIFA 11のほうが数枚上手に感じた(ただし、権利の関係か日本人選手の名前が正しくないので、試合前はウィニングイレブンをプレイした)。
ほかにもアメリカンフットボールゲームの「Madden NFL」にもはまった。格闘ゲームでは「Bruce Lee Dragon Warrior」や「UFC 2010」、「Touch KO」が秀逸だったし、パズルゲームでは「Jelly Car」や「Angry Bird」、そして何よりも「Slice It!」と「Osmo HD」の2本にハマった。
アドベンチャー系ではGameloftのアバター、スプリンターセル、アサシンクリード、ブラザー・イン・アームス、ヒーロー・オブ・スパルタカス、N.O.V.A(の1)はすでにクリア済みで、いずれも壮大なスケールの物語に感銘をした(アバターは映画と似て非なるエンディングなので、見た人も楽しめる)。また、(操作画面はぜんぜんiPod touchらしくないが)日本を代表する名作「Ghost Trick」のストーリーのできのよさには度肝を抜かれた。そしてネット対戦ものでは、密かに「EXO-Planet」にはまっている。
ほかのゲーム機にはおそらくなさそうなマイナースポーツのゲームも、たまにダウンロードをしては楽しんでいる(「Age of Curling」と「Badminton 10」、「Cricket」の3本をそろえている人は、そうそういないはずだ)。
こうして振り返ってみると、iPhone/iPod touch、iPadでハマったゲームがすでに軽く3ケタはある。やり込んでいる人なら分かると思うが、かなり面白いゲームが多く、それだけに電車などで、わざわざiPhoneで、これまでの携帯電話にもあったようなグラフィックスも操作もたいしたことがないギャンブルゲームをやっている人を見かけると、なんだかもったいなくて教えてあげたくなってしまう。
もしiPod touchを、あまりにも大きさや外観が異なるからという理由でゲーム機として見ていない人がいるとしたら、ぜひとも無料のお試しソフトからでいいので、まずは(ハズレも混じることを考えて)10本ほど、試してみてほしい。iPod touchで音楽を聞き、映画を観るのと同じように、携帯型ゲーム機としても最高の可能性を持つことに気づくはずだ。
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価格は、8Gバイトが2万900円、32Gバイトが2万7800円、64Gバイトが3万6800円。
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