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「スマートフォンならではのアプリ」は簡単なようで難しい――太田垣慶氏に聞いてみたOGC2011

DeNAにおいてスマートフォン戦略の中核を担う太田垣慶氏は、スマートフォンにおけるソーシャルゲームを再定義しようとしている。

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ケータイもゲームも苦手だったと語るDeNAの太田垣慶氏。今は“ソーシャルゲームのおもしろさ面白さを担保する役割”を担っている

 DeNAはかねてより「X-device」「X-border」を2本柱とする成長戦略を打ち出している。国内外でソーシャルゲームを展開するにあたり、「Mobage」を世界共通ブランド名とした。そんなDeNAでスマートフォンにおけるソーシャルゲーム戦略の中核を担っているのが太田垣慶氏。5月31日にベルサール秋葉原で開催される「OGC 2011」で太田垣氏は、DeNAのグローバルスマートフォンサービス戦略とゲーム開発エンジン「ngCore」による内製アプリの紹介をすることになっている。

 太田垣氏は2006年にDeNAに新卒で入社。ショッピングオークションサイト「ビッターズ」でアドバイザー、「モバゲー」で数々のコンテンツ制作&広告企画を経て、2009年4月よりソーシャルゲームの立ち上げPJTのリーダーに。2010年7月に海外スマートフォン向けに運営していたソーシャルゲームプラットフォーム「MiniNation」へ異動し、現在スマートフォンSG部 企画グループのグループリーダーに任じられている。最近では「忍者ロワイヤル」を世に送り出した。

 「忍者ロワイヤル」は、画面をタップして手裏剣を投げたり、スラッシュすることで刀を振ったりするアクションRPG。5月12日より、Android端末向けにアプリ版「Mobage for Smartphone」で提供している。

 太田垣氏はいわゆるフィーチャーフォン版でやっていたゲームの翻訳ではなく、スマートフォンならではのソーシャルゲームの再定義を主題にあげている。従来のソーシャルゲームに、よりリッチな表現やタッチパネルを生かした“ゲーム性”を加えていくことが狙いだ。それにはミニネーションでの反省を生かしたいと振り返る。

 ミニネーションは昨年、DeNAに吸収合併され、海外スマートフォン向けソーシャルゲームプラットフォームはngmocoが運営していくプラットフォームMobage Globalに一本化されることになった。ミニネーションではDeNAの強みであるWebベースのゲーム開発を進めたが、米国をはじめとしたネットワーク環境ではサクサク感が担保できず“laggy(ラグが多い)”と批評されたとか。また、スマートフォンならではのUI/UXはどうあるべきか? に対する理解も足りなかった。だからこそ、iPhoneのApp Storeで支持されているアプリをカジュアルゲーム含め研究し、スマートフォンにおけるソーシャルゲームがどうあるべきかを徹底的に考えた。

 DeNAの強みはエンジニアの能力の高さとチューニングにあると太田垣氏。忍者ロワイヤルのバトル部分は、実は新卒1年目のエンジニアが作っているのだとか。リリース後は社内の分析スペシャリストとタッグを組み、仮説を立てては施策に落し込み、数字を検証するプロセスを繰り返している。

 なお、DeNAがngCoreによって開発した自社タイトルは「忍者ロワイヤル」、「アクアコレクション」、「牧場ホッコリーナ」の3つ。「アクアコレクション」は魚を育成するゲーム、「牧場ホッコリーナ」は牧場を経営するゲームで、「忍者ロワイヤル」と同様、Mobageアプリを起動後、アプリ内からインストール処理が走りプレイできる。コーエーテクモゲームスとの共同開発「100万人のモンスターファーム」など、サードパーティーのタイトルも予定されている。「忍者ロワイヤル」はDeNAのフラグシップタイトルとして現在、テレビCMなどの広告効果も手伝い、登録数およびアクティビティを上げている。

 DeNAのカルチャーとしてソーシャルゲームのあるべき姿を考えると、「ゼロからというよりはいろいろ見て考えている」そうだ。ただ、マネは嫌いと太田垣氏。世の中に転がっているおもしろい要素をどのように組み合わせてオリジナリティにしていくかに時間を割いている。

 太田垣氏はWebを通じて人を動かすことに興味があると語る。文言やボタンひとつでユーザーの反応が大きく変わることを知っているのだ。お知らせの文言は新聞のラテ欄並にこだわるべきだし、画面遷移やユーザーインタフェースについてはアートディレクターとも議論を重ねるという。スマートフォンは画面の大きさやタッチパネルという性質上、より難しくなるが、ベターをベストにすべく考え続け、数字を検証し、また改善するプロセスが個人的にも好きなのだとか。

 日本向けと海外向けでは理想は“同一規格”としながらも、一部は仕様が違うべきだろう。その仕分けと、iOS/Androidという別OSでのソーシャルゲームをいかに効率的に運用するかが大きな課題になってくる。日々技術の進化に対応できるよう最新の技術動向にも敏感であり続けるべきと語る。

 太田垣氏はゲームについてはまだアプリが強い時代だと考えている。いずれは、HTML5によるゲームも台頭してくるだろうが、少なくとも1年はアプリの時代が続くと読んでいる。OGC 2011でも忍者ロワイヤルの開発舞台裏が明かされる見込みだ。

 スマートフォンならではのソーシャルゲームを世に出し、グローバルNo.1のソーシャルゲームプラットフォームを確立していけるのか――。太田垣氏はゲームが得意というわけでも、ゲームが好きだったわけでもないが、この命題はクリアしたいと意欲を見せていた。

 ちなみに太田垣氏は、DeNAでソーシャルゲームPJTを立ち上げることになった当時、まず最初に「ソーシャルゲーム」をググったとか。その後、facebookのソーシャルゲームを遊びまくり、なんとなくそれがなんたるかを会得したそうだ。

※DeNAは先日、代表取締役社長 兼 CEOの南場智子氏が病気療養中の夫の看病を優先するために代表の座を降り、通常の取締役となると発表。COOの守安功氏が代表取締役 兼 ソーシャルメディア事業本部長となると発表された。

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