Game Jamは福島にITという復興の種をまく:復興の現場(1/2 ページ)
東日本大震災の被災地各所で復興の種がまかれている。例えば福島では「Game Jam」というイベントが行われた。5人または6人一組になって、30時間ぶっ通しでプレイ可能なゲームを作るというイベントなのだが、復興の種になるか――。
5人または6人一組になって、30時間ぶっ通しでプレイ可能なゲームを作る――言葉にすると極めてシンプルな話だが、実際にやるとなると、睡魔と戦いながらさまざまな作業や調整の連続となる。プログラミングの世界でHackathon(ハッカソン)とも呼ばれるイベントにも似ているかもしれない。そのゲーム版とも言える催しが南相馬市で開催された。同行密着した模様をお伝えしたい。
会場は原発から約25キロ
Game Jamの会場となった南相馬市民文化会館「ゆめはっと」という公営施設。福島第一原発から約25キロのこの場所は、緊急時避難準備区域内にある。そこに、東京、東北から老若男女44人が集い、2日間(約30時間)でゲームを完成させる。この会場には東京から25人、東北から19人が集まった。イベント全体では福島県南相馬市に加え、国立情報学研究所(NII)や東京工科大学の東京サテライト、福岡サテライト、札幌サテライトの合計4都道府県、5会場で開催される規模の大きなものだ。
主催するのは、IGDA(国際ゲーム開発者協会日本)と株式会社ユビキタスエンターテインメント。IGDAはこれまで同様のイベントを開催しているが、福島で行うのはこれが初めてだ。また、ユビキタスエンターテインメントは、「9leap」(ナインリープ)というオリジナルゲーム開発支援・投稿サイトを運営し、5月には仙台で開発者向けイベントも開いているが、Game Jamへの参加はやはり初めてとなる。
なぜ、この場所でゲームを作るのか? 筆者もはじめその点が分からなかった。当然注目を集める場所だが、もしそのことが目的だとすれば不謹慎だと責められる性格のものかもしれない。だが、2日間のイベントの同行・密着することで、その懸念は払拭されることになる。長い目で復興を見据えたものであることはもちろん、いま海外勢に対して不振が語られることの多い、日本のゲーム業界への刺激ともなることも狙ったイベントだったのだ。
さまざまな年齢・職業のクリエイターが東京・仙台から集う
集まった参加者は、ほぼ全員が今回初めて顔を合わせる。チーム分けも現地についてから知らされる。不安はないのだろうか?
Game Jamにはじめて参加した佐藤さんは、専門学校でCGの勉強をしているが、ゲーム作りに参加したことはない。Game Jamの存在を知り、プログラムが書けない自分でも参加出来るし、おもしろそうと感じて参加を決めたという。主催のユビキタスエンターテインメントはじめ、サイバーエージェント、アダプテックなどがサポートするこのイベントへの参加は、食費(弁当代)の4000円だけで可能。主催者側が東京や仙台からのバスも用意し、学生にも参加しやすくなっている。
東京の大学に通う早川征志さんは4年生で就職活動中。ゲーム業界への就職を希望しているため、多くのゲーム関係者も注目を集めるイベントで経験を積みたかったと話す。実際チームには開発の現場で働く人がおり、その仕事の進め方を目の当たりにして刺激を受けたという。普段は別の仕事をしているが、趣味でプログラムを行う人たちなど、多種多様な人々が参加している。
最初はそのあまりの多様さから、なかなかコミュニケーションが難しく見える場面も見られたが、とにかく30時間後の完成を目指して、チームリーダーのもと各チームそれぞれのやり方で開発が進んでいく。
テーマは「つながり」さまざまなアプローチで挑む
Game Jamはもともとデンマークで6年前にローカルに始まったものが、3年前から国際イベントになったものだ。一定のルールやテーマに沿って、決められた時間内にゲームを完成させなければならない。今回参加者に与えられたお題は「つながり」。被災地を開催地に選んだこともあり、人と人、被災地とそれを支える地域など、さまざまなつながりをゲームの中に盛り込む必要がある。
参加メンバーも限られた時間の中で、どうその要素を組み込むか知恵を絞る。共通していたのは、ゲームの舞台やキャラクターに東北や南相馬市の特産品や地理を反映したことだ。例えば、福島から参加したイラストレーターの東海カイ(あずみ・かい)さんが参加するチームは、彼女のイラストを活かしながら、東北の方言、特産品をモチーフにしたミニゲームを30時間に7個作り出した。
ほかにも東北地方をあみだくじで縦断するゲーム、4〜6人同時プレイが可能なアクションゲーム、未完成ながら「あと数時間あれば」と思わされるパズル的ゲームなどGame Jamならではの作品が生まれることになる。これらのページから実際にプレイすることが可能だ。
スポーツにも似た楽しみが新しいクリエイション体験に
30時間の開発の模様はUstreamで中継。各チームも忙しく開発を行う合間を縫って、用意された番組に出演しその時点までの成果を発表しなければならない。1日目の正午過ぎには企画発表、その夜23時にはα版、翌朝8時にはβ版(仮眠スペースは用意されているが、ほぼ寝られない)、続いて10時にプレイアブル版のプレイテストが始まり、18時に発表会を行って終了という段取りだ。
東京工科大学の有志(チームBaNyaK・バニャ)が司会をつとめ、和気あいあいと進行したUstreamでの発表会。機材はスポンサーであるVCL(VisualCreatorsLaboratory)が提供している
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