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創業者の想いを受け継ぐ、パナソニック サイクルテックの電動アシスト自転車「ビビ」売れるのには理由がある(1/2 ページ)

パナソニック創業者である松下幸之助氏の商売の原点、自転車。氏が目指した「電気屋らしい自転車づくり」の集大成的存在である電動アシスト自転車は、今も創業の地、大阪で生産されていた。

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パナソニックと自転車の切っても切れない深い関係

 市場が飽和し売り上げが伸び悩む製品が少なくない中、今後の市場拡大が見込める製品として電動アシスト自転車は順調に売り上げを伸ばしている。

 パナソニックのグループ企業であり、パナソニックブランド自転車の製造・販売を担うパナソニック サイクルテックでも、電動アシスト自転車のここ数年の販売台数は年10%程度の伸びを示している。

 その電動アシスト自転車の出荷台数をメーカーが調査したところ、2010年に国内で販売された約40%がパナソニックのものだった。

 家電メーカーの自転車というと、「ビエラやディーガのついでに作っているのでは?」という疑念を抱く読者諸兄姉もおられるかもしれない。それについて、パナソニック サイクルテック 企画グループ 営業企画チーム チームリーダーの三宅徹(みやけ とおる)氏は、「パナソニック創業者は、9歳から自転車販売店の丁稚奉公で商売の基本を学び、自転車という製品には格別の愛情がありました。1952年の自転車製造販売開始にも、並々ならぬ覚悟とこだわりを持って挑んだのです」と、2012年で60周年を迎える自転車事業との深い関わり合いと歴史を説明してくれた。

画像 三宅氏の後方は、取材地だった「パナソニックセンター東京」のピアッツァ(前広場)に設置されている電動アシスト自転車のショウケース。三宅氏は、経営陣から「ぜひここに電動アシスト自転車置くように」という指示があったと、現在の経営陣が創業者の自転車への想いを継承しているエピソードを披露してくれた

電動アシスト自転車のルーツ

 電動アシスト自転車の歴史は、ヤマハのパスが1993年に地域限定発売されたところから始まった(全国発売は1994年)。パナソニックが電動アシスト自転車を発売したのは、それに遅れること3年の1996年だ。

 しかし、パナソニックも1979年に電動アシスト自転車のルーツともいうべき、電気自転車「Electric Cycle」を製造している。

 これについては時代を先取りし過ぎた感があり、当時は「電動アシスト」という概念もなく、試行販売はされたが市場の形成までには至らなかった。

 だが、そこで電気自転車の命脈が尽きることはなかった。

 モーターや電池などの電動アシスト自転車の構成部品が、家電メーカーであるパナソニックが得意とするものであったこと、創業者が「電気屋らしい自転車づくり」を目標に掲げていたことなどがあり、1996年発売の電動アシスト自転車開発に繋がっていくこととなる。

画像 パナソニックの電動アシスト自転車のルーツ、電気自転車「Electric Cycle」。電動アシスト自転車ではなくいわゆる原付扱い。運転免許やヘルメットの着用、自賠責保険の加入が必要だったこともあり、普及には至らなかったが電気自転車は国内初の試みだった

国内自社工場、一貫生産の徹底

 現在、どんな分野の製品でも、外国、特に中国で製造されているものが多いのは周知の事実だろう。しかし、パナソニックの電動アシスト自転車はすべて大阪で生産されている。

 パナソニックが約40種もの多彩な電動アシスト自転車を提供することができるのは、すべての工程が自社内で完結していて、委託先と打ち合わせる必要がなくきめ細やかな展開が可能なためだ。

 フレームなど車体だけでなく、モーターユニットも総合的に自社でまかなっている。これは自転車メーカーと家電メーカーの2つの側面を持つ、パナソニックならではだ。

画像 三宅氏が「おそらく今、国内でいちばん売れている電動アシスト自転車でしょう」と紹介する「リチウムビビ・DX」。この製品も含めて、すべてのパナソニックの電動アシスト自転車は国内で生産されている

幼児2人同乗自転車発売まで、2年間!?

 話題になったので覚えておられる読者諸兄姉もいるかもしれないが、2009年の道路交通法の改正により、強度など一定の基準を満たした自転車であれば、16歳以上が運転する場合に限って幼児2人を同時に乗せることができるようになった。

 そこで同年、ブリヂストン「アンジェリーノ」(自転車、電動アシスト自転車)、ヤマハ発動機「パス リトルモア」(電動アシスト自転車のみ)、丸石サイクル「ふらっか〜ず」(自転車のみ)の幼児2人同乗自転車が発売されている。

 だが、パナソニックの幼児2人同乗自転車(電動アシストサイクルのみ)は、今年(2011年)になって発売されたのだという。なぜなのか?

 それは「パナソニックの安全基準が桁違いに厳しいため」だと三宅氏。JISなど、日本の自転車に関する基準が厳しくないということはないだろう。しかし、パナソニックの基準はさらに厳しいと言う。

 例えば、JISの定める基準で100回するテストがあれば、パナソニック サイクルテックではその10倍の1000回行う。製品をある高さから落下させる衝撃テストがあれば、その2倍の高さから落とす、といったあんばいだ。

 それだけではない。新車種が開発された際などに行われるパナソニックグループ本社のテストは、パナソニック サイクルテックのテストよりもさらに厳しく、テスト項目も安全に関わる強度や耐久性に関する部分は当然のこと、使い勝手の部分にまで及ぶのだという。

 つまり、幼児2人同乗自転車を発売しようかどうか様子見をしていたということではなく、パナソニック基準で徹底的にテストを繰り返し、安全性を追求するためには2年間が必要だったということだ。

 そういった安全にこだわり抜く姿勢を最終的に支えているのが、国内一貫生産のシステムだともいえるだろう。

 ほかにも、パナソニックの安全に対する姿勢を示す事例として、バッテリーの材料に少し発火性は高いが性能が良くなるものと、発火性は低いが少々性能は劣るものがあった場合、迷わず安全性が高い材料が選ばれる。電動アシストのパワーを制御するコンピュータプログラムの味付けを「出足が弱い」印象になっても、高齢者にも安心して乗ってもらえるようなマイルドな乗り味にしているなどがある。

画像 「後チャイルドシート」を付けることで幼児2人同乗に対応する「ギュット・ミニ」。スタンドは発売直前まで試行錯誤した自信作で、テコの原理で軽く踏むだけで立てることができる。「着せ替えシートカバー」は取り外して洗濯が可能

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