第17回:これ以上ないプレイヤーへのご褒美!? 極上の快感を与えてくれるエクステンドの演出:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/3 ページ)
そもそもエクステンドってなんですか? 「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の17回目は、なんだかお得ですって話。
エクステンド時のイベントを追加することで、ゲームがますます楽しくなる!
ほとんどのゲームにおいて、エクステンドはひんぱんに発生するイベントでありません。もし簡単にエクステンドしてしまうと、ゲームの難易度が極端に下がってかえってゲームがつまらなくなってしまいます(当たり前ですよね……)。だからこそ、滅多にお目にかかれないエクステンドを達成したときには、それ専用の効果音が鳴ったり、デモ画面に切り替わる演出などを見られたプレイヤーはこのうえない快感を得ることができるのです。
筆者がエクステンドの演出で初めて感動したのは、ユニバーサルが1982年に発売したアクションゲームの「Mr.Do!」でした。本作では、体に「EXTRA」のいずれか1文字のアルファベットが描かれた敵のキャラクターが時々登場し、倒すとその文字を手に入れることができるようになっていて、さらに「E」「X」「T」「R」「A」の文字をすべて集めると、敵が白旗を掲げて泣きながら降参するデモ画面が流れ、主人公のストックが増えるとともに次のステージへと進める仕組みになっています。以下のムービーを見れば明らかですが、プレイヤーの達成感をさらに増幅させくれる見事なデモ画面になっていますよね!
なお余談になりますが、本作のエクステンドのデモ中に流れる曲は元々アニメの「鉄腕アトム」の主題歌が使用されていました。ですから、この曲が聞けたときは自分がまるでスーパーヒーローになったかのような気分にもさせてくれたのです。
「Mr.Do!」のほかにも、「EXTRA」などの文字を集めるとエクステンドになる例が古い作品では数多く見受けられます。その典型が、タイトーが1986年に発売したアクションゲームの「バブルボブル」。本作では、「EXTEND」の全6種類の文字が描かれたバブルをすべて割ると主人公のストックが増えるデモ画面へと移行し、次のステージへと進めるようになっています。
また、家庭用でこのシステムを取り入れた例としては、ナムコが1985年に発売したファミリーコンピュータ用アクションゲームの「ワープマン」があります。本作でも、ときどき「EXTRA」のいずれか1文字を持った敵が出現し、これを倒すことで文字が手に入ります。
それにしても、この「EXTRA」を集めるという面白いアイデアを最初に導入したのはいったいどのゲームなのでしょうか? 正確には分からないのですが、その起源はビデオゲームではなくコンピュータが導入される以前の時代に登場した、いわゆるピンボールにあったことはおそらく間違いないと思います。事実、筆者は何人かのベテランのゲーム開発者から、「ピンボールの演出を自分の作るゲームでも出したい」などと証言していたのを聞いたことがあります。
以下のムービーは、ナムコが1979年に発売した「キューティQ」です。本作はピンボールといわゆる「ブロック崩し」の要素を盛り込んだ作品になっていますが、ここでもやはり「EXTRA」を全部集めるとボールのストックが増えるチャンスが与えられるフィーチャーが登場します。
この他にも、タイトーが1979年に発売したブロック崩し型ゲームの「フィールドゴール」でも、1000点を超えると画面にカタカナで「エキストラ」と表示され、文字が表示されている地点にボールを当てるとやはりもう1球オマケされます。こうして調べてみますと、なかなかどうしてゲームの歴史も実に奥が深いですね!
さらに、上記のような「EXTRA」の断片をすべて集めるとエクステンドになるシステムを簡略化した例もご紹介しておきましょう。
ナムコが1984年に発売したシューティングゲームの「ギャプラス」は、一定のスコアを超えるごとにエクステンドするようになっていますが、特定の条件を満たすと出現するパーツを持った敵(クイーンと言います)を倒し、3種類のパーツを集めることでも自機のストックが1機増えるようになっています。同じくナムコが1987年に発売した「ドラゴンスピリット」では、敵を倒すとたまに出現する紫色のハートが描かれたアイテムを取ると主人公のアムル(ドラゴン)のタマゴが手に入り、さらに同じアイテムを2個集めるとタマゴの殻が割れ、晴れてエクステンド達成となります。
また、上記2タイトルのエクステンドシステムには面白いアイデアがもうひとつ盛り込まれています。それは、ゲームオーバー時に残ってしまったパーツおよび孵化する前のタマゴが、次のプレイヤーがゲームを始めたときもそのままストックされていること。これは第15回の当コラムでテーマに取り上げた、プレイヤーがついついコンティニューあるいはゲームを継続したくなる仕掛けの一環であるとも言えるでしょう。実際、筆者は少年時代にデモ画面を見てパーツが残っているのを発見したときは、このチャンスを逃すまいと喜び勇んでコインを投入したものです。(笑)
※「ギャプラス」:Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)1984 2009 NBGI
※「ドラゴンスピリット」:PS版「ナムコミュージアムVOL.5」を使用
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