第18回:「待って、もう1回!!」――いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文PART2:なぜ、人はゲームにハマルのか?(2/3 ページ)
リスタートの仕組みのスッゴイしかけ。「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の18回目は、続けたくなる“魔法の言葉”について。
シューティングゲームに見るリスタートシステムの変遷
ここからは、1970〜80年代の花形ジャンルであったシューティングゲームにフォーカスしてリスタートの仕組みを調べてみることにしましょう。
1978年にタイトーが発売した古典的名作の「スペースインベーダー」では、どこでミスをしても初めからやり直しとはならず、一度倒した敵が途中で復活するようなことはありません。同じく、ナムコ(現:バンダイナムコゲームス)が1979年に発売した「ギャラクシアン」や1981年に発売した「ギャラガ」でも、途中でミスをしてもそれまでに倒した敵は一切復活しません。
また、「ギャラクシアン」「ギャラガ」ではリスタート時にそれまで攻撃を仕掛けてきたすべての敵がいったん攻撃をやめ、画面上部へと必ず撤退するようにもなっています。この敵軍の律儀(?)な配慮のおかげで、プレイヤーはリスタート時にほんの一瞬ですが休息を与えられ、なおかつスムーズにゲームを再開できるようになっているのも見逃せないポイントです。両タイトルをご存知ない方は、以下のムービーでミスしてからリスタートするまでの間に敵キャラクターがどんな動きをしているのか、ぜひ注目して見てください。
このような復活の仕組みは同時期に登場した各社のシューティングゲームにも見られ、セガが1979年に発売した「スペースアタック」、日本物産が1980年に発売した「ムーンクレスタ」、KONAMIが1983年に発売した「ジャイラス」など、非常に多くの作品がこのシステムを取り入れています。
ちょっと変わっているのは、1984年に同じくナムコが発売した「ギャプラス」。本作では、敵の軍団が登場する前半のシーンでミスをした場合は最初からやり直しとなり、全軍が終結した後の後半戦でミスした場合はその場からリスタートするという、言わば折衷案を採用しています。「序盤でミスをするのはキミの腕が悪いからだ。ペナルティとして最初からやり直しだ!」という、何だか開発者からの挑戦的なコメントが聞こえてきそうな気がするのは筆者だけでしょうか?
上記のゲームは、いずれも背景のグラフィックスは単純な星空を描いた程度で、敵と戦うフィールド(マップ)は実質1画面分の広さしかありません。では、広大なマップがスクロールする形でゲームが進行するタイプの作品ではどのようなリスタートの仕組みになっているでしょうか? 調べてみると、大きく2つのタイプに分類されるようです。
まず1つ目は、ミスをすると特定の地点に戻されてからリスタートするタイプです。往年の名作タイトルから例を挙げますと、KONAMIの「グラディウス」シリーズ(※)をはじめアイレムの「R-TYPE」シリーズ、カプコンの「1942」などがその典型で、ミスをした場合はミスした直前(あるいは近辺)の決められたポイントに必ず戻されるようになっています。
もう1つは、途中でミスをしてもスクロールが停止せずにその場ですぐ復活するタイプで、KONAMIの「ツインビー」シリーズ、カプコンの「エグゼドエグゼス」、ケイブの「首領蜂」シリーズなどがこれに該当します。
さて、突然ですがここでみなさんにクイズです! 上記の各タイトルにおいてリスタート時に特定の地点に戻されるゲームと、その場ですぐに復活するタイプのゲームには、それぞれのグループごとに共通するある要素が存在します。では、その共通点とはいったい何でしょうか? お時間のある方はちょっと考えてみてください。
※「グラディウス」:ファミリーコンピュータ版を使用
(C)KONAMI 1986
※「R-TYPE」:Wiiバーチャルコンソール版「R-TYPE I」を使用
(C)HUDSON SOFT
(C)IREM SOFTWARE ENGINEERING INC.
※「1942」:プレイステーション2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用
(C)CAPCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.
※「ツインビー」:ファミリーコンピュータ版を使用
(C)KONAMI 1986
※「エグゼドエグゼス」:Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)CAPCOM CO., LTD. 1985, 2010 ALL RIGHTS RESERVED.
※「首領蜂」:プレイステーション版を使用
(C)ATLUS/CAVE (C)1996 S.P.S
お分かりになりましたか? 正解は、特定の場所に戻ってリスタートするゲームは2人プレイ時でも1人ずつ別々にプレイするのに対し、その場復活方式のゲームは2人プレイ時は同時・協力プレイが可能になっていることです。
もし2人同時プレイができる「ツインビー」などのゲームが、どちらか片方のプレイヤーがミスをするたびにステージの最初からやり直しになったり、「中間ポイント」からリスタートするルールだったとしたらどうなるでしょうか? 自分がミスをしていないにもかかわらず、仲間のミスにお付き合いする形で無理やり元の場所へ引き戻されるルールだったとしたら、なんだかゲームのテンポがブツ切り状態になってしまい、遊んでいてあまり気持ちよさを感じなくなるでしょう。よって、その場復活型のシステムは2人(あるいは2人以上)同時プレイと相性がいい、ということが言えそうですね。
ちなみに、プレイステーション 2用として発売されたKONAMIの「グラディウスV」、およびナンバリングタイトルではない「グラディウス」の関連タイトルである「沙羅曼蛇」シリーズは、いずれも2人同時プレイが可能ということもあって、リスタートのシステムはその場復活方式を採用しています。
ご参考までに、面白いリスタートの例を有名タイトルからもう1つご紹介しましょう。ナムコが1983年に発売した「ゼビウス」は、ミスをした地点がエリア(ステージ)マップの70パーセント以上の位置まで到達していれば次のエリアのスタート地点から、70パーセント未満であればそのエリアのスタート地点からリスタートするようになっています。つまり、そのエリアをある程度攻略できる腕がなければ先へ進ませないという仕掛けなのです。何だかプレイヤーの腕を敵軍が判定しているかのようで、失敗しても再びやる気を奮い立たせてさせてくれるようなシステムですよね!
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