あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 実践編:大日本技研に聞く(1/6 ページ)
ワンフェスから見た版権許諾の可能性とは。そしてそれを利用する心構えとは……。アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のドミネーターの立体化も再現してもらいました。
前編では、大日本技研の代表取締役である田中誠二氏が、どのようにガレージキットを生業として起業するにいたったかをうかがいました。後編ではもしかしたらあなたも参入できるかもしれないキャラクタービジネスの実態と、それに密接に関わり、模型・フィギュアの世界で重要な存在である「ワンダーフェスティバル」というイベントの歴史と役割、そして当日版権の取得を含めた参加方法について聞きます。
「ワンフェス」とは何か?
―― 前編では、ガレージキットメーカー「大日本技研」設立の課程が分かったところで、後編は代表取締役の田中さんも毎回出展されている「ワンダーフェスティバル」についてです。「ワンフェス」は、模型の世界では重要な役割を果たしているということですが、そもそもどういったイベントなのでしょうか?
田中氏 「ワンフェス」は、チョコエッグなどで有名な海洋堂さんが主催する、模型系展示即売会です。コミックマーケットの模型版、もっとくだけていえば、自分で作った模型「ガレージキット」を売るフリーマーケットのようなものということになります。
ガレージキットとは何か?
―― そういえば今まで「ガレージキット」「ガレキ」と何気なく口にしていましたが、プラモデルともフィギュアとも違うのでしょうか?
田中氏 一言でいってしまうと「個人レベルで作成したプラモデル」になるでしょうか。プラモデルなので完成した物が入っているのではなく、適当な大きさに分解されたパーツと大まかな組み立て説明書が入っています。ですから、購入者は入っている部品を自分で組み立てる必要があるんですね。パーツは、アイボリーやフレッシュ(肌色)など一色で成型されていますので、色塗りも自分でする必要があります。
―― それは……めんどくさ、じゃなくて手間がかかるというか、それなりの技術が必要そうですね。
田中氏 組み立て大好き、塗装も大好きな、模型製作が趣味の人向けなんですよ。フルスクラッチと呼ばれる、プラモデルの改造などではなくて、造形材料を使って0から立体物作る手法があるのですが、そのフルスクラッチした模型を仲間内に少数頒布(はんぷ)したというのが、そもそもガレージキットの始まりですから。
プラモとガレキの違い
―― ガレージキットを組み立てるのも大変そうですが、ガレージキットを製造するのもやっぱり大変なんでしょうか?
田中氏 大変かどうかは個人の主観が入りますから……。プラモデルの作り方と比較してみましょうか。一般に販売されているプラモデルは、「金型(かながた)」を使い、「射出成型機」を使って成型されています。金型は文字通り、金属製の型で、金属の塊を彫って作ります。まあ、鯛焼きの型を想像してもらえれば良いでしょう。この金型を射出成型機にセットして、素材になるプラスチックを溶かして金型に圧入します。鯛焼きにあたるプラスチックが冷えて固まったら、型から外せば、プラモデルの完成です。
さて、ガレージキットを作るときにこれを個人がやろうとすると、やればできないことはないかもしれないけれど、お金がかかり過ぎます。金型の作製は、専門の業者に依頼するのですが、これが高い。形状と大きさによって、かなり差がありますが、100万円単位の費用を覚悟しておいたほうが良いでしょう。成型に使う射出成型機も、工場で使うような機械ですから、1台1000万円ぐらいしますし。
だから、昔は立体物を個人レベルで量産する手段がなかったんですね。しかし、今から30年ほど前に、歯科技工等に使う、型取り用のシリコーンゴムと樹脂を使って立体物をコピーする方法が、模型の世界に導入されたんです。ポタージュ状のシリコーンゴム原液に硬化剤を加えると、数時間でゴム状に硬化します。これをフルスクラッチしたパーツの周囲に付けて硬化させると、型を作ることができます。その型に、2液を混ぜると数分で硬化するポリウレタン樹脂を注げば、元のパーツと同じ形ができあがります。この注型作業を繰り返せば、何個も同じパーツを複製することができるんです。この手法の優れたところは特殊な機械が必要なく、安上がりなことです。物にもよりますが、だいたい材料費2、3万円で複製できてしまいますね。
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