水島精二氏にアイドルについて聞いた! アイドルってなんぞ?:アニメ「アイカツ!」スーパーバイザー(2/3 ページ)
水島精二氏というとアニメに詳しい読者諸兄姉には「機動戦士ガンダム00」などの監督として認知されているかもしれません。その水島氏がスーパーバイザーを務めるアニメ「アイカツ!」にちなみ、水島監督にアイドルのことなどを聞いてきました。
水島氏から見たアイドルシーン
―― 水島さんは「アイドルにいちばん詳しいアニメ監督」という紹介をされることがあるそうですが、今のアイドルシーンをどう見てらっしゃいますか。
水島氏 いちばん詳しいわけじゃないと思いますが(笑)。先ほども言ったとおり、根が音楽好きで、とりあえずなんでも聴くのがモットーなので、アイドルの曲もいろいろ聴いてきました。「アイドル戦国時代」なんていわれている昨今ですが、本当にそうだと思います。
今はグループアイドルが全盛で、たくさんのグループがあります。それこそ、AKB(AKB48)や、ももクロ(ももいろクロバーZ)のような国民的アイドルグループだけでなく、SUPER☆GiRLS(スーパーガールズ)や℃-ute(キュート)のような歌って踊れてかわいい王道アイドルから、地方色豊かなローカルアイドルまで。
アイドルって厳密な資格があるわけじゃないから、言ったもん勝ちというところもあるし、本人がアイドルじゃないって思っていても、事務所の都合で「アイドルです!」という売り出し方になったりもする。
例えば最近でいえば、樹海で撮影した全裸(っぽい)PVが話題になったBiS(ビス)のような存在もいます。年齢もそんなに若いとはいえないですし、そんな崖っぷち感が、彼女たちだけの味になっているんですね。そんな強烈な個性を持っていても「アイドルだ」といい張ればアイドル、みたいなところもあって本当に多様化していると思います。
でんぱ組.incもかなりアイドルらしからぬグループですが、そのエッジ感ゆえにドラマに本人役でグループ自身として出演したりしていて、今すごくアツイです。
ももクロの全力さ、ハロプロのひたむきさ
水島氏 ももクロは一度ライブを観たとき圧倒されました。彼女たちのライブはすごくて25分ぐらい激しい歌と踊りのパフォーマンスをノンストップでやるんですよ。ハラハラして観ていたら、短いMCの後、またさらに25分をもう1セットという感じで。
観ている僕らのほうが圧倒されて「口あんぐり」な状態でした。(ステージの)袖に入ったら「酸欠で倒れてるんじゃないの?」と思うぐらいの全力さなんですよ。そんなほかのグループにはマネできないパフォーマンスが、今の成功に繋がっているんだと思うんですが。
僕は、AKBも、ももクロのステージも観るし、音楽も一通り聴きますが、それでもハロプロ(ハロー!プロジェクト)が好きですね。
ハロプロは、地方の会場を数多く回るツアーを精力的にこなして作り上げてきたパフォーマンスのレベルが抜きんでているんです。総合力が高いんですね。モーニング娘。のブレイクで一時期はメジャー第一線でしたが、今は武道館がとか、ドームがというのじゃなく、地道に地方巡業し、力を付けています。そんなハロプロ系のひたむきさが、僕の心を打っているんですね。そういった地道な活動って、ファンの心に届くものなんです。
水島氏 それから、「卒業」というとAKBを連想するかもしれませんが、あれは何かきっかけがあっての「卒業」でしょう? さくら学院なんかは義務教育終了までという年齢制限があって、本当に中学校卒業とともにグループからも「卒業」するのが明らかになっているんです。最近のアイドルは劇場型というか、そういった成長を見守るような要素が強くなっていますね。
AKBの握手券入りCDだとか、商魂たくましいとネガティブな方向でとらえられがちだと思うんですが、それ自体はアイドルでは当たり前のことで、買うことによってダイレクトに応援ができる。自分たちで支持したものが育っていくというのが、アイドルの醍醐味だともいえると思います。
誰も支持しないアイドルは活動休止になったり、グループが解散したりして残らないわけですから、CDを買ったり、ライブに行ってグッズを買ったりする意味は明らかにあるわけで、そういったことを感じ取っているから、これだけのファンが地方にまで追いかけて行ったりするんだと思うんですよ。
なかなか世の中、自分の支持したものがどうなっていくか、結果を見届けることができることも少ないと思いますし。いろいろな要素がせめぎ合うというのは、音楽業界にとってもよいことだと思うんですね。
現実と劇中に共通する「スポ根」の要素
―― そういった現実のアイドルの存在が、アニメ「アイカツ!」に与えている影響も多々あるということでしょうか?
水島氏 主人公だけでなく、ほかのサブキャラクターも含めて1人1人が魅力的なキャラクターということでは、現実のアイドルに即したものとなっていると思います。
最初は3人の仲良しグループ、友人でありライバルでもある彼女たちからはじまって、だんだんと登場人物が増えていくのですがどのキャラも独自の魅力があるんです。
「アイカツ!」のメインターゲット層が7歳から9歳の女の子なので、物語のおもしろさやキャラクターのかわいらしさももちろんのこと、分かりやすさというのも重要なんですね。いきなり、5人とか8人とか出てきてしまったら、名前を覚えるのも大変だというのがあって。
あとは、ももクロにも感じられると思うのですが、スポ根の要素ですよね。さすがに昔のように汗だく泥だらけではなく、明るいスポ根という感じですが、登場人物たちが努力してがんばったことで成長していくという要素があるんです。ランニングのときの「アイカツ! アイカツ!」というかけ声も、自然に制作の現場から生まれたんですよ。
スポ根なんだけど、明るい物語でギャグ要素もあって、ちゃんとサポートして育ててくれる善良な大人の存在もある、木村監督の本領発揮といった内容になっていると思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.