Apple Watchで“非言語コミュニケーション”が活発化する?(ホントに?)

Apple Watchに搭載されている、「指でタップした振動を別のユーザーにも送信できる機能」。どんな風に使えばいいんでしょう。

» 2015年03月17日 06時00分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 スマホでできる多くのことを、手首の上で完結させてくれるガジェットとして期待を集めているApple Watch。しかし、中には「これ何に使うの……?」という機能もある。

 その一つが、「画面をタップすると別のユーザーにタッチを触覚で伝える(=振動を送れる)機能」だろう。振動だけでなく、手書きのスケッチも、自分の心拍数までも送信できるそうだが、正直なところどんな風に使えばいいのかはいまいち見えてこない。今回はこうしたApple Watchのコミュニケーション機能について考えてみよう。

自分の心拍数を相手に送れる「ハートビート」機能。何に使えば……?

人々はどんどん「めんどくさがり屋」になっている

 「Web上のコミュニケーションにおいて、近年人々はより怠惰に、よりめんどくさがり屋になってきている」という考え方がある。

 古くはHTMLを直打ちしてWebサイト(「ホームページ」と言った方が正確かもしれない)を作り、情報発信していた人々が、あらかじめテンプレートが用意されたブログに移行し、アカウントを作るだけで友達とつながれるSNSになだれ込み、ついにはTwitterの140文字で十分、と思い始めるようになった。

 誰かが書いた文章には、わざわざ長文のコメントを残さなくても、「いいね!」ボタンを押すかスタンプを送って「読んだよ」という反応だけを表明することが可能になった。ビジネスでは「お世話になっております」「よろしくお願い致します」が当然だったWebメールも、文末に「iPhoneから送信」の一言さえあれば、用件のみの1行返信でもさほど失礼には思われなくなった。

 さて、そこで冒頭の「何に使うの?」の機能だ。この振動やらスケッチやら心拍数を送るという機能も、やはりこの「簡素化していく、省略されていくコミュニケーション」の文脈上にあると考えていいのだろう。

「久しぶりー、元気?」→「今日の活動データを見てください」

 Appleを語らせたら――で有名な名物ジャーナリスト、林信行さんが書いている「遠く離れた恋人同士が寝る前に時計をトントンと叩いて……」という話を読んで、筆者は何かロマンチックなような、一方で妙に滑稽なような、不思議な気持ちになった。古いたとえ話で恐縮だが、これはドリカムの「ブレーキランプ5回点滅……」というアレではないのか。あれがつまり非言語コミュニケーションの真髄か……(伝わっているだろうか)。

 振動や心拍数の他には、どんなデータが送れるといいだろうか。せっかくのApple Watchなのだから、健康/フィットネス機能と連携すると何かおもしろいことができるのでは、と思えてくる。長らく会っていなかった友達からの「久しぶりー、元気?」という連絡や、上京した子供を心配する親からの「ちゃんと食べてる?」といった連絡に、アクティビティデータで返すのだ。

 その日運動した時間や摂取したカロリーが数字で返ってきたら、「元気だよ」「ちゃんとやってるって」などの返信よりもある種の説得力が増すことは確かだろうが、文学的情緒に欠けること甚だしい。というかこれはもはや「元気なら元気であるというエビデンスを示せ」「はいどうぞ」というほとんどビジネス上のやり取りのようでもあり、さすがにコミュニケーションとは呼びにくいだろう。「元気?」という質問は、本人の体調についてだけ尋ねているわけではない、ということだ。

スケッチ送信機能。「お絵かきしりとり」くらいしか思い浮かばないのは筆者の発想が貧困だからか

 上では極端な例を挙げたが、こうした非言語コミュニケーションは(その行為自体は)簡素・簡易になっていく一方で、その意図や意味を読み解くことは決して容易ではない、むしろ高度な文脈読解能力が求められるのだと思う。「\(^o^)/」という日本中で一日何回やり取りされているのか想像もつかない顔文字ですら、「ヤッター」という意味で使う人と、「オワタ」(=終わった、もうダメだ)という意味で使う人がいるのだ。

 ましてや人々が「手首の振動」や「心拍数」から何を読み取るようになるのか、そしてそのコミュニケーションが一般化するのかは、筆者の想像の範疇を遠く超えている。数年後に「昔は文字ばっかり読んだり書いたりしてたよなあ」などという世界がやってくるのか――今日も何十通ものメールを処理しながら、それでも想像してみたりもするのである。

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