インタビュー
» 2015年08月01日 06時00分 公開

衝撃的にウマい「油で揚げないポテチ」誕生秘話 地方メーカー・テラフーズの挑戦の歴史(1/2 ページ)

先日、油で揚げないとてもおいしいポテトチップスに出会った。それが「テラフーズ」という会社が製造している「焼きじゃが PREMIUM」。どう作っているの? この会社は一体何もの!? そんな疑問から直接お話を伺ってみると、“普通の”スナック菓子メーカーとはまったく違う姿が浮かんできました。

[小林誠,ITmedia]

 「カロリーが低い」「油で揚げない」ポテトチップス、と聞いてどんな印象を抱くだろうか。「健康」「ダイエットに良さそう」というイメージとともに「だけど味はイマイチ」「おいしいけどポテトチップスとは別のお菓子」と思う人も多いのではないか。

 だが最近、筆者がハマっているナチュラルローソン(東京地区)などで売られている「焼きじゃがPREMIUM カロリーを気にせず食べられるポテトチップス」というシリーズは、そんな健康系ポテトチップスの「マイナスイメージ」を払拭した“ポテチ”だ。

焼きじゃがPREMIUM カロリーを気にせず食べられるポテトチップス
レビュー記事に思わず「とんでもないポテチが生み出された」と書いてしまった、その見た目

 詳しくはその感激を書いた記事を読んでみてほしいのだが、要は「おいしい」のだ。油で揚げていないのが信じられないほどパリパリの食感で、これでカロリー抑えめなんて。このようなポテトチップスが売られていることに衝撃を受けた。

 さぞかし有名な会社が製造しているのだろう、と思いきやその会社は大分県にある「テラフーズ」。筆者は聞いたことがなく、恐らく一般的な知名度も低いだろう(大分の方やスナック菓子業界では有名なようだけども)。

 しかも同社、一度「破産」しており、テラフーズの設立は2013年とつい最近。一体なにがあったのか、なぜ大手のスナック菓子メーカーが作れない夢の様なポテトチップスをつくれるのか、気になって仕方ない。

 というわけで直接お話を伺ってきた。

 お相手はテラフーズ会長の渡邊勲(わたなべいさお)氏。毎月大分から都内に商談のため上京しているそうで、この日も多くの開発中のお菓子を手にして現れた。トップ自ら第一線で励んでいることが、会った瞬間に分かるほどエネルギッシュな方だ。

原点はマグロジャーキー かつては人気商品「ポテかるっ」も

テラフーズの渡邊勲会長

――先日「焼きじゃが PREMIUM」を食べて、衝撃を受けました。油で揚げずにおいしくする技術にも驚きましたが、そもそもテラフーズとはどんな会社なのか、設立の経緯から伺ってもよろしいですか?

渡邊氏:私はもともとマグロの生鮮空輸の仕事をしていたんです。だけど海外の小さなマグロはあまり評価されなくて、二束三文で買いたたかれたり、せっかくの商品も返品が多かったのです。それがもったいなくてね。それでマグロのジャーキーを開発したのがそもそものきっかけです。

――失礼ですが渡邊会長はお幾つですか?

 私は昭和16年生まれ(74歳!)。太平洋戦争が始まった年ですよ。子供の頃は物がない時代で、とくに食糧がなかった。その体験のせいでしょうね。飽食の時代なんて言われても、物が捨てられないんです。だから返品された商品もリサイクルして付加価値をつけられないかな、と考えていた。昔は賞味期限なんかも緩かったしね。

――もともと大分が拠点だったのですか?

 いえ、私は東京生まれの東京育ち。ずっと東京で仕事をしていたんですが、大分県で誘致をしている土地があるということで、2000年に大分の国東に工場を建てたんです。これが今の会社の前身の「ユニバースフーズ」です。

――ポテトチップスへ参入したのは?

 2002年にスウェーデンがアクリルアミドの発がん性を発表し、米国FDAがトランス脂肪酸の健康被害を発表した。日本でも大手のスナック菓子メーカーが危機感を抱いて、うちの特許の技術を使ってポテトチップスをつくることになったんです。

――最近もトランス脂肪酸の問題が持ち上がっていますね(注:トランス脂肪酸はマーガリンをはじめパンやケーキ、揚げ物などに含まれる。悪玉コレステロールが増え、善玉コレステロールが減り、血液ドロドロ、心臓病の基になり、生活習慣病のリスクを高めるとされる)。

 米国で使用が禁じられましたね(注:3年の猶予を経て2018年から)。日本では消費量が少ないから、あまり問題化していない。そのため、より問題は深刻だと感じています。同様にアクリルアミドは「発がん物質」としてより深刻な問題です。日本ではこの問題をソフトランディングさせようとしている。だけどそれでは遅い。現在も苦しんでいる消費者がいるんです。

――健康的で、もちろんおいしい、さらに大手と組んでとならば、ずいぶん売れたんじゃないですか?

 商品のほうは好評でした。新商品を開発すると九州のイオンさんや生協さんで最初に売って様子を見たのですが、ほかの商品と比べても売れ行きはとても良かった。全国展開した商品もありますよ。

――ということは、これまでに私たちも食べたことがある?

 「焼きじゃが」とか「ノンフライポテト」といった名前で出した商品がたくさんあるからね。「ポテかるっ」は知ってますか? これも大手さんと組んでつくった商品です。

――おお! 「ポテかるっ」懐かしい! 確かに食べた覚えがあります。なるほどこれもテラフーズ(旧ユニバースフーズ)の技術でつくっていたのですね。

根強いファンも多かった「ポテかるっ」(現在は販売中止)も、前身のユニバースフーズの製法を用いて作られていた

破産を経験もファンのおかげで復活

――ビジネスモデルについてお伺いしてもいいですか?

 うちの工場は研究開発センター、R&Dのためにあるんですよ。だから生産力があまりない。そこで大手さんと組んで、特許の技術を提供し、契約一時金と、ロイヤリティーをもらう。それがうちのビジネスモデルなんです。

――スナック菓子をつくって売るだけではないのですね。特許は会長が持っているのですか?

 ええ、世界36カ国で特許を取得していて、商品が製造・販売されていれば継続的にロイヤリティーが入ってくる仕組みです。

テラフーズの製法で作られたPB(プライベートブランド)商品各種。(画像はテラフーズ公式サイトより)

――聞いていると事業はとても順調そうに思えるのですが、一度破産していますよね?

 そうです。大手と組むので、どうしても大手さんの方針に左右されてしまう。それでもうちの特許を目当てに他社からの引きがあるのですが、あるとき組んでいた大手さんからうちの工場を閉鎖しろという話がきてね。

 ちょうどその会社と組んで別の工場を建てたので、私の工場は不要と思われたようです。当時の株主構成は大手さんの出資割合が大きく、私も株は持っていたのですがうまくいかなかった。

――裁判に負けたんですね。どうやって復活したんでしょう?

 せっかくの地方発・大分の工場ということで、心情的に応援してくれる方が多かった。地元からも農業振興で期待されていたから。税理士さんやコンサルティングさんから優秀な弁護士さんを紹介してもらい裁判を闘った。破産後は交通費もない中、ボランティアで車を出してくれる人もいてね、大分から東京まで車でツテに当たるなんてこともありました。大変だったけどそのおかげで人脈が広がった。

――ですが工場や資金はないわけですよね?

 それがせんべいメーカーの知人からお金を出してもらい、地財、工場の競落に協力してもらいました。さらに裁判で争った大手さんからも工場を戻してもらえたんですよ。私どもでは「何度も奇跡が起きた」なんて言っているんですが(笑)。多くの人に協力してもらって会社を「テラフーズ」の名前で再開できたんです。

製法の秘密は次ページで!(写真はテラフーズ工場外観)
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