「2016年、いまだ黎明期」のスマートウォッチ市場 Apple Watchのキラーアプリは(2/2 ページ)

» 2016年12月17日 06時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
前のページへ 1|2       

 IDCによると、2016年第3四半期のスマートウォッチの出荷台数は270万台で、前年同期と比べて51.6%減となった。Garminの急進とSamsungの堅調な販売を除くと、Apple、Lenovo、Pebbleの3つのメーカーは大幅な減速となっている。

 Apple Watchの販売台数は110万台と見積もられており、前年同期に390万台を販売していたことから考えると71.6%減となった。販売シェアも7割から4割へと激減させている。

 9月7日に新機種が発表され、それ以前から新機種に関する期待が高まっていたことから、該当する四半期は買い控えが起きたことが考えられる。その代わり、2016年第4四半期(Appleの会計年度では2017年第1四半期)の急進に期待がかかっている。

 筆者は、スマートウォッチ市場自体がまだ黎明期を抜けていないと考えている。裏を返せば、人々がスマートウォッチに何を求めるのか、という目的性が定まっていない点が問題として考えられる。

 Appleがスポーツ機能に力を入れていることからも分かる通り、「iPhoneと連携するAppleブランドのアクティビティートラッカー」という位置付けを脱していないのがApple Watchだ。

 watchOS 3は、主となるインタフェースデザインも刷新し、文字盤と通知、そしてアプリにフォーカスし直した。

 アプリの起動を素早くし、グランスがなくても気軽にアプリの機能を利用できる仕組みを備えた。しかし初期のApple Watchユーザーは、アプリ起動の遅さが経験として残っていることから、積極的なアプリ利用よりも通知で情報が受けられれば、という意識が強いと考えられる。

 これでは、小さな文字盤を備えるアクティビティートラッカーや、アナログ文字盤でバイブレーションで知らせてくれるスマートウォッチでも同じことができてしまう。音声入力で簡単なメッセージは作成できるが、それ以外はやはりiPhoneでアプリを起動しなければならないからだ。

今後の注目点は、Apple Watchらしさの醸成

 Apple Watchは、アクティビティートラッカーとの競合状態を脱しない限り、ウェアラブル市場を支配する存在にはなりにくいと予測している。

 Apple Watchらしさを作り出し、広めていかなければならない、ということだ。

 そのタイミングが2017年になるのか、それ以降になるのかはまだ分からない。どんなアプリが登場し、人々のスマートフォンの使い方に変化を及ぼすのかを見極めていく必要があり、来年の本連載の役割でもあると感じる。

 Appleが2017年にも新しいハードウェアをリリースするかどうかはまだ分からないし、2018年3月頃までスキップすることも一行だ。前述のような、これから搭乗するキラーアプリ登場と買替え需要のタイミングをうまくマッチさせることが得策だからだ。

 スマートフォンとは異なり、「スマートウォッチの買い換えサイクル」はまだ検出できないため、こちらも見極めていくことになるだろう。

 現状考えられるキラーアプリは、Apple Payだ。そう思った理由は、日本でスタートしたApple Payを1カ月半ほど利用した経験からだった。

Apple Payが日本でスタートした直後に開始されたメディアイベントで、Suica対応を紹介するTim Cook氏。同氏はイベントの前週来日し、実際にiPhoneでのSuica利用を経験した

 筆者は普段米国カリフォルニア州サンフランシスコ郊外で暮らしており、2014年からApple Payがスタートしているが、それにもかかわらずApple Payを利用するチャンスはほぼない。Apple Watchにもクレジットカードを設定すれば、iPhoneなしでも買い物ができる。しかし、利用可能店舗が少なすぎて、話にならないのが現状だ。

 ところが、10月中旬から2カ月弱滞在した東京では、10月25日の日本におけるApple Payスタート以降、Apple WatchによるApple Pay利用をしなかった日はなかった。SuicaとJCBカードを登録すると、鉄道やコンビニ、タクシーなど、毎日の生活で必ず利用する施設や店舗で、Apple Payが利用できるようになっていたのである。

 あまりに毎日使うため、普段左手に装着しているApple Watchを右手に付け替えて、自動改札をよりスムーズに通過できるよう工夫したほどだった。Apple Payとこれを日常的に使える環境は、Apple Watchにとってまたとないチャンスとなる。

 今回のApple Pay対応でSuica向けに用意された、認証なしで改札を通過できる「エクスプレスカード」は、Apple Pay利用に大きな価値をもたらす。

 既に交通機関でのApple Pay利用ができるロンドンや、サンフランシスコへと拡大していくことができれば、都市ごとにではあるが、Apple Watch需要を刺激することになる。本丸は米国ではニューヨーク、そして中国の各都市だ。

 各都市のインフラが関係するため、そう簡単に話が進むわけではないと思うが、Apple Watchのキラーアプリ作りは、こうした産みの苦しみの連続になることが考えられる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」