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第18回 AppleはApple WatchをiPhoneのような製品に育てられるか“ウェアラブル”の今

米国時間の3月9日(日本では3月10日)に、いよいよ詳細が明らかにされるとみられる「Apple Watch」。果たしてAppleはウェアラブルデバイス市場に変革をもたらすのだろうか。

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Apple Watch
9月のイベントで使用されたApple Watchの説明の中では、水にぬれるシーンも流された

 Appleが2月27日、時刻に関する一言を添えたメディアイベントの招待状をメディアに送付した。3月9日に開催されるそのイベントで、「Apple Watch」の具体的な予約・販売方法や、各モデルの価格などが発表されることになるだろう。同時に、Apple WatchをサポートするiOS 8.2のリリースも行われるとみられる。

 そんな先週、AppleのCEO、ティム・クック氏は欧州とイスラエルを訪問していた。その道中、たびたびTwitterに投稿をしたり、行った先の人々が氏の様子をツイートするなどの露出があったが、クック氏はしっかりと、Apple Watchを愛用しながら旅をしていたようだ。


 興味深い発言は、Apple Watchの防水性についてだ。フランスのWebサイト「iGen」が、クック氏が「シャワー中でも付けている」と話したことを伝えた。

 Apple Watchの防水機能についてはガイドラインについては示されていない。運動をすると汗をかくので、ある程度の防水性能はあるはずだが、もしシャワーでも問題ないとすれば、「IPX5」(防噴流形)や「IPX6」(耐水形)あたりの防水性能を持つことになるはずだ。プールに対応するには「IPX7」(防浸形)相当が必要となる。

 ちなみにApple Watchには単体で音楽再生機能が備わっているため、クック氏の話が事実なら、好きな音楽を聴きながらシャワーを浴びる、という体験はできるはずだ。

2014年のスマートウオッチ市場は680万台

 Apple Watchが参入するスマートウオッチ市場は、2014年、680万台の販売があったそうだ。

 独立系の調査会社Smartwatch Groupによると、2014年の市場規模は1億2900万ドルで、1台あたりの平均価格は189ドル。この価格については2013年の平均225ドルから下落している。

 マーケットリーダーは全体の23%を占める、Samsung。GALAXY Gearシリーズは、独自OS、あるいはGoogleのAndroid Wearを搭載したモデルをそろえ、120万台を販売した。

 次いで人気を集めたのが70万台を販売したPebbleだったという。電子ペーパーを採用した低価格モデルの販売が好調で、クラウドファンディングからスタートした同社は、カラー電子ペーパーと新しいタイムラインインタフェース、スポーツトラッキング機能を備えた「Pebble Time」を新たなKickstarterキャンペーンで登場させている。

 ただしPebbleは価格の安さ、スタートアップであることから、販売台数の割には収益率は低い状態となっている。

 こうしたデバイスについても、Apple Watch登場を前にして、製品の性格付けや価格戦略の明確化を急いでいる。幸いなことに、平均価格が低下する一方で、Apple Watchは最も安いモデルが349ドルと高額であることから、低価格でスマートウオッチの機能を体験できる点はメリットになり得る。

2015年の市場展望は、7000万台規模へ

 調査会社Gartnerは、同社のリサーチディレクターアネット・ジマーマン(Annette Zimmermann)氏へのインタビューを公開している。この中で、ジマーマン氏はスマートウオッチにも触れていた。

 同氏によると、スマートウオッチとフィットネスデバイスなどを含めたウェアラブルデバイスの世界市場は、2015年に7000万台の規模になると予測している。この数字は前年比38%の増加を見込んだものだ。

 「2015年のApple Watchの登場によって、ウェアラブルデバイスそのものへの興味が集まるようになる」とも指摘し、2020年には5億1400万台を出荷する規模へと成長するとしている。

Apple Watchのシェアは、30〜40%に

 AppleはApple WatchをiPhoneのような製品に育てられるだろうか。

 “iPhoneのような製品”の意味は、初期の大きなマーケットシェアと高いロイヤリティの獲得、既存の製品群との連携を武器としたエコシステムへの編入、そして市場全体の利益の8割以上を占め、買い換え需要と乗り換え需要で長期的に継続的な成長を見込む、ということだ。

 Gartnerの予測による、2015年の市場規模7000万台のうち、Appleはどれだけのシェアを獲得するだろうか。ウォール街の予測は3000万台前後で、つまるところ市場の30〜40%のシェアを獲得すると考えられている。

 だとすると、利益の大部分を占めることはたやすいい。平均価格は2015年、おそらくApple Watchによって上昇することが考えられるが、通常モデルのApple Watch、そしてWatch Editionは、他社のスマートウオッチに比べて5〜10倍、あるいは20倍以上の価格が想定されているからだ。

ロングライフであればあるほど、Appleにとって都合が良い

Apple Watch

 一方、ロイヤリティと買い換え需要による長期的な成長については、Apple WatchがiPhoneのような数年に1度の買い換え需要を起こさせるものなのか、あるいはiPadのように、買い換え需要の喚起のタイミングがなく5年で減少に転じる製品なのかはまだ分からない。

 ただ“高級腕時計”としてApple Watchを見た場合、あまり積極的な買い換えが起きるとは思えない。つまりApple Watchの販売台数がひたすら伸び続けるということにはならないと考えている。

 ある程度行き渡ると、そこで一旦減少に転じる、iPadのような動きをするのではないだろうか。しかし一方で、Apple Watchを長く使えば使うほど、Appleにとって嬉しいこともある。

 Apple Watchはおそらく、iPhoneのみに対応する製品であり続けるだろう。つまりApple Watchを腕に付けている人は、その期間は必ずiPhoneを使い続けてくれる。つまり、Appleの主たるビジネスであるiPhoneの販売に貢献してくれることを意味する。

 この効果をApple Watchがもたらすには、少なくとも3年は高性能で耐久性の高いデバイスとして、動き続けてなければならない。S1プロセッサ、防水性、そしてバッテリーといった基本要素は、十分に高性能かつ、ソフトウェアのアップデートで進化する余裕が不可欠だろう。

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