NTTドコモはヘルスケア領域で何を目指すのか(2/3 ページ)
Runtastic for Docomoやらでぃっしゅぼーや、ABCクッキングスタジオ、ショップ ジャパンなど、さまざまな企業と手を組みヘルスケア領域での取り組みを拡大するNTTドコモ。その狙いはどこにあるのかを、キーパーソンに聞いた。
ウェアラブルの形には、適材適所がある
―― 今お話しいただいた、食事、運動、睡眠、保険・医療のエコシステムの中心にあるのが、活動量計のようなウェアラブルデバイスになってくるかと思いますが、ドコモとしてウェアラブルデバイスをどのように捉えており、今後どういうふうになっていくべきだとお考えでしょうか。
安部氏 これは私見ですが、活動量系は今さまざまな製品が登場しているものの、これからは淘汰されていく時代になると思うんですね。我々はその中から、お客様に最適なものを提供できるようにしたいと思っています。機器もサービスも、我々がお客様にきちんとつなぐ役目なのかなと思っています。
―― これからのウェアラブルの形はどうなっていくと思われますか。
安部氏 正直にいうと、何が残るかはわかりません(笑) ただ、現在リストバンド型が主流ですが、リストバンドだけですべてがまかなえるのかどうかという疑問はありますね。
例えば、オムロンさんの製品で、姿勢をチェックできる歩行姿勢計「Walk Scan」という製品があります。あれはクリップで腰の後ろに取り付けるものなんですが、あんな風にサービスやお客さまに提供する価値によって、機器の形状も測定項目もたぶん違うだろうなと思うんですね。ものによっては足につけても、靴につけてもいいわけですよ。
形状には適材適所がありますし、個人個人で必要なサービスは違うので、いろんなニーズに適したウェアラブルがあって、セットのような形で適用できるといいのかなと。いろんなもののセンサーをゆるやかにネットワークさせることで、よりニーズに応じた適切な測定ができて、それでサービスの深度が深まっていくということになるんじゃないかなと思います。
―― 機器が増えると、使う側でもデータの管理が大変になりそうですね。
安部氏 デバイスを変えたら過去のデータがなくなってしまうというのは問題なので、履歴はトータルでしっかり見られるようにしていくべきですね。ここでdocomo IDみたいなものを1つの軸にして、ちゃんとデータを管理できるというのが重要だと思います。docomo IDがキャリアフリーになっているのは、他のサービスにも対応できるようにという考えがあってのことなんです。
森山氏 スマートフォン、タブレットがある完成形に近づいている中で、ウェアラブルに関してはまだ完成形っていうのがないですよね。すでにリストバンド型のものは豊富にありますけど、まだいろんな可能性があって、それに対して我々もさまざまなチャレンジはしていきたいと思っています。
新製品発表会で加藤から発表させていただいたものの中には、ドコモとして開発している子供向けのウェアラブル「ドコッチ」もありますし、Samsungの「GALAXY Gear S」をアクセサリーの1つとして販売させていただいているし、この先もいろんなパターンがあると思うんですよね。いろんな形で最適なものをお客様に提案ができればと思っています。
―― データを集約するという意味では、Appleは「ヘルスケア」アプリ、Googleは「Google Fit」といったように、同様のことをしようとしてます。ドコモはどう捉えていらっしゃいますか?
安部氏 ああいう機器のOSをおさえているグローバルプレイヤーが、そういった仕組みを作ってくれるというのは、我々としては喜ばしい限りです。なぜなら、データ形式の統一が計れるからです。例えば今なら、体重1つとってもアプリごとにまったくデータの管理方法が違うんですよね。それがグローバルプレーヤーのサービスと連係させるためにデータ形式がそろうわけです。その形式に基づいていれば、全部データは統一されるわけですから、逆にいえばデータベースで苦労しなくていい。上手く連係させながら、我々自身のビジネスを展開できるんじゃないかと考えています。
―― 時計メーカーさんは「腕は一等地だ」っておっしゃいます。とはいえ、メガネなんかもあったりとか、あるいは腰に着けるものがあったりとかします。リストバンド型以外で可能性を感じているものはありますか。
森山氏 我々いろいろ見ているんですが、決定打がないですよね。ウェアラブルデバイスっていうのは、お客様のニーズによって必要なものがまったく異なります。スポーツをする方はスポーツに特化したものが必要ですし、一方、グラス型っていうのはメガネをしている人にとってはいいとかわるいとか……。
そういう意味では、本当にお客様に自信をもってお勧めできる形はなんだろうって考えています。リストバンド型以外では今回初めてhitoeを出しましたが、まだまだ考えなくてはなりません。ただ、リストバンド型には手に入りやすく、長時間装着しつづけやすいといった強味があるので、それはそれで大切にしていこうと。
いずれにしても、スマートフォンをハブにしていろんなものがつながる世界、ウェアラブルが直接つながる世界、これを双方向でいろいろ検討していく必要があるなと思っています。
ポストスマートフォンなんて言われている時代もあったけれど、実はポストスマートフォンでもなんでもなくて。スマートフォンはスマートフォンでどんどん進化しながら、それがハブになって、いろんなウェアラブルデバイスがつながる。1つだけの方もいれば、2つ3つつなげる方もいる。そういう意味ではいろんな可能性を追っているという状況ですね。
―― 最近の活動量系には、加速度センサーだけでなく心拍センサーなども搭載されるようになってきていますが、そうした傾向はどう考えていらっしゃいますか。
安部氏 hitoeは心拍が計れますが、手首だと脈拍ですね。精度も違うし用途も違う。hitoeの場合医療機器認定が取れれば心疾患の方の退院後の管理にも使えますが、リストバンドだと主にスポーツやダイエット。心拍強度に応じた運動をしようとかそういう使い方。どこまで精度を求めるかで機器の値段も変わってきますから、人の選択次第。我々はまず選択肢を広げてあげる必要があるかなと思っています。
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