タニタ社員食堂の管理栄養士が教える「やせやすい食べ方」と「続けるコツ」:燃え尽きランナー救済計画
タニタで社員食堂を担当している管理栄養士の荻野菜々子さんと開発部の小澤智子さんに、「やせるメカニズム」や「やせやすい食べ方」「続けるコツ」を伺ってきました。
ランニングを始めたは良いものの、結局続けられず挫折してしまう――そんな“燃え尽きランナー”にならないためのコツを、女優の高山都(たかやま・みやこ)さんと一緒に検証していく本連載「燃え尽きランナー救済計画」。
今回取材に行ったのは、社員食堂のヘルシー定食をまとめたレシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂」がシリーズ累計532万部のベストセラーとなったタニタ。同社員食堂の定食は、カロリーが500kcal前後、塩分が3グラム前後に抑えられるようコントロールされているのが特徴だ。
体脂肪計・体組成計のメーカーであり、社員の食事管理もしっかり行っていることから、対談では厳しめのアドバイスも覚悟していたが、返ってきたのは「タニタ食堂のレシピも、全部を取り入れる必要はないと思います」というお言葉。
お話を伺ったのは、タニタで社員食堂を担当している管理栄養士の荻野菜々子さんと、商品開発の基礎研究やアスリートのサポートなどに取り組む開発部の小澤智子さんだ。
「3カ月の壁」をどう乗り越える?
燃え尽きランナーの特徴として挙げられるのが、3カ月が壁になっている人達が多いこと。個人差はあるが、最初の1〜2カ月は順調に体重が減るのだけれど、3カ月目辺りから減りにくくなるケースが多い。どうやって、その“踊り場”と付き合っていけばよいのだろう。
――まずは、そもそもの体重が減りにくくなるメカニズムを教えてください。
小澤さん:簡単に言うと、身体が拒否しているのです。本能的、動物的な反応で、だれでも停滞期がきます。ダイエットを始めると、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスをマイナスにして、体重を減らしていきますよね。ただ、運動をせずに食事の量だけを制限したり、必要な栄養を取らなかったりすると筋肉も落ちてしまいます。すると、代謝が下がり、それを維持するだけのエネルギーしか使わなくなってしまうのです。
もう1つは飢餓の対策のために、身体が「減らさないで」と拒否しちゃう(笑)ので、体重が一旦落ちにくくなります。
高山さん:へー!
――そうすると、体重以外の指標も見たほうがいいのでしょうか。ほとんどの方が、体重と体脂肪率くらいしか見ていないと思うのですが。
小澤さん:筋肉量と体水分量。体組成計であれば、ほとんどの機種で計測可能ですね。体水分量は、体水分率で表示されるものもあります。
座っているだけでも代謝してくれる、やせやすい身体の目安になる指標が基礎代謝量です。基礎代謝量が低い人というのは、体重に占める筋肉量の比率が低いことが多いです。ですので、やせやすい身体になってきているかが分かるという意味で、重要な指標です。
高山さん:体重ばかり着目しちゃうと、踊り場を迎えているように錯覚してしまうけど、実はやせやすい身体になる準備が整いつつある期間だったりすることも多いってことですよね。筋肉量をはからないことでそれが分からなくなっちゃうのは、もったいないですよね。
――筋肉量を増やすために摂るとよいものはなんでしょう?
荻野さん:今日のメニューでいえば、鶏肉の皮を取り除いて調理をすることで、脂質の少ない状態で、筋肉をつくる良質なタンパク質が摂れます。あとは、副菜に入っている大豆ですね。
小澤さん:鶏肉はビタミンB6が多く含まれます。ビタミンB6は、摂ったタンパク質を筋肉にするのに必要な栄養素なのですが、このように、代謝にスイッチを入れてくれるような他の栄養素を一緒に摂るといいですね。肉、魚、卵、や豆製品などのタンパク質を多く含む食品、つまり主菜を、できれば毎食摂取していただいた方がいいです。最近、朝食はトーストとコーヒーなど、主菜を摂らない人が多いのです。
高山さん:そこに、ゆでたまごを入れるだけでも、全然違いますよね。
小澤さん:そうですね。たまごは良質なタンパク質源なのでぜひ加えてほしいです。
荻野さん:タニタ食堂のレシピも、全部を取り入れる必要はないと思います。忙しく働いている中で、毎日タニタのレシピを再現するのは難しい人もいると思うので、今日は忙しいから、1品つくってみようでいいと思います。今のゆでたまごを加えるみたいに。長くお付き合いするみたいな感じで。
高山さん:ランナーってマジメな方が多くて、特に男性の場合、急に走り始めたり、急にダイエットを始めたり、「急に」が多いですよね。もっとゆるやかに、できるところから、ひとつずつやっていけばいいと思います。
ランナーはもっとだらけていい?
――調査でも明らかになっているのですが、燃え尽きランナーほどランニング開始当初は毎日走っている傾向があって、逆に継続できている方は、「3日に1回」という方が一番多かったです。
小澤さん:ランニングも食事もほどほどに。
高山さん:ランナーはもっとだらけていい(笑)。
小澤さん:研究で分かっていることなのですが、一回食べ過ぎても、意外と本能で、その後の食事は少なめにするなどのように人間は調整できるそうです。だから完璧にできなかったからと言って、落ち込む必要はないですよ。
――すぐに実行できることって、何がありますか?
荻野さん:例えば、今はテフロン加工のフライパンなので、ひき肉などを調理するときは油を使わない。それだけでも、かなりカロリーを落とせます。それと食べる順番も重要です。野菜やお汁物を先に食べて、次に主菜を食べる順番にすると、血糖値の急上昇を抑えられます。男性は逆の方が多いですけどね(笑)。
高山さん:そうですよね。
――とはいえ、頑張ってしまうのが人の性でして。頑張ってしまった結果、日々疲労を貯金してしまう方が取り入れるといい食べ物を教えてください。私のことなのですが……。
小澤さん:ランナーの方でしたら、肉だけでなく魚も摂ることをおすすめします。血液の循環をよくしたり、筋の炎症を抑えるなど、疲労回復にとってもいい脂肪酸が含まれています。皆さん、食品の脂質をすごく敬遠されるのですけど、細胞膜を形成するには脂肪が重要な役割を果たしています。
ですから、これを摂らないとダイエットでお肌がカサカサになってしまいます。バランスと、どんな種類の脂質を摂るかを知ることが大事です。削ればいいという問題ではないです。
――どんな種類があるのですか。
荻野さん:代表的なものでは、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸ですね。飽和脂肪酸はバターやお肉に、不飽和脂肪酸は、青い魚やオリーブオイル、不飽和脂肪酸は、ある程度積極的に摂取していただいたほうがいいですね
「ランニングも食事の管理もほどほどに」というアドバイスが飛び出した今回。次回は、ランナーにとって不可欠な“ごほうび“との付き合い方について。「実はビールのために走っています……」というランナーの「それでもやせたい」というわがままな相談に、タニタの“食のプロ”が応えてくれました。
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