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スマホ経由で子育てサポート “乳幼児の睡眠”を可視化するハイテクマット「nana」

シンガポール発のヘルスケア系スタートアップ「mnh labs」が開発する「nana」は、乳幼児の睡眠の状態を可視化してくれるハイテクマットです。

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 2015年5月、シンガポールでアジア最大級のスタートアップイベント「Tech in Asia」が開催されました。数多くの出展者がブースを構える中でひときわ注目を浴びていたのが、シンガポール発のヘルスケア系スタートアップ「mnh labs」です。

 同社が開発しているのは、乳幼児の睡眠の状態を可視化し健康管理に役立てることのできるセンサー内蔵マット「nana」と連動したモバイルアプリ。その製品の特長と子育てへのメリットをご紹介します。

内蔵センサーで心拍数や呼吸、睡眠パターンなどを把握

 「寝る子は育つ」という言葉の通り、睡眠中に成長ホルモンが分泌されることが科学的にも実証されています。とくに、見る見るうちに育つ乳幼児期の子どもにとって、睡眠は心身の発達を大きく左右するもの。そんな子どもの睡眠状態をモニタリングし、生活サイクルの改善を促すのが、マット型のベビーモニター「nana」です。


子どもの睡眠状態をモニタリングするマット「nana」

まな板ほどのサイズで、自宅のマットレスの下に敷いて使用する

 「ベビーモニター」といえば、一般的には音と映像で子どもの様子を確認する無線LAN機能付きカメラなどを思い浮かべます。しかしこのnanaは、子どもの睡眠にフォーカスし、映像や音だけではカバーすることが難しい、睡眠時の状態や動き、時間などを記録することができます。

 nanaは、マットとそれと連動するモバイルアプリで構成されます。縦35センチ〜横20センチのまな板ほどのサイズのマットの中に、マイクロベンディングセンサーが内蔵されており、自宅のマットレスの下に敷くだけで、寝ている子どもの微細な心拍数や呼吸、睡眠パターンなどをとらえます。

 計測したデータは自動的にWi-Fiルータに送信され、クラウド上に記録されます。そのデータは、モバイルアプリ上でリアルタイムに確認することができ、子どもの年齢と性別などを入力すると、同年代のほかの子どもたちのデータと比較することもできます。


子どもの睡眠状況をあらわす「Sleep Graph」

 アプリは無料で、スマートフォンやタブレットなど複数の端末から利用可能。両親、祖父母、ベビーシッターなど複数のひとを保護者としてアプリで設定すれば、全員で子どもの様子を共有できます。

 ほかにも活用の仕方としては、子どもの成長に不安を感じたとき、あるいは子どもが体調を崩したときなどに、nanaで計測したデータをかかりつけ医に見せて相談することもできるでしょう。また、データを見ながら、寝室の室温や明るさなどを調整するなど、より快適に睡眠できるよう環境を整えることに役立てられます。

 特に家事や仕事で忙しい両親にとって、わが子の睡眠リズムやパターンを把握できるのはうれしいこと。なぜなら、短い睡眠を繰り返す新生児にとって睡眠のリズムは生活リズムそのものであり、いつ頃目を覚ますのかを推測しておくことはオムツ替えや授乳など保護者が生活の予定を立てるのに役立つからです。

 また、1歳に近くなれば、親としては早寝早起きの規則正しい生活を覚えさせたい時期になります。子どもの睡眠と生活リズムをつかむことができれば、子育てが少しラクになるかもしれません。

デリケートな子どもの安全にこだわったデザイン


マットレスの下に敷くだけ

 マットレスの下に敷いて使い、子どもに直接触れないので、デリケートな子どもの肌を傷つけずく、また睡眠を妨げる心配がないこともnanaの大きな特徴です。

 nanaの開発と販売を手がけるシンガポール発スタートアップ「mnh labs」の創業者 Chern Wern Mah氏はTech in Asiaの取材に対して「テクノロジーが私たちの身体と生活によりシームレスなかたちで活用されるようにしたい」と話しており、Webサイトでも、子どもを傷つけないデザインであることや、マットに内蔵されるセンサーは健康を害するものでないとし、その安全性を訴求しています。

 nanaは2015年11月に、まずはアメリカ、中国、シンガポール、ヨーロッパで発売予定。現在Webサイトでは、製品の事前注文を受け付けています。価格は249米ドル(1ドル=121.06円換算で、約3万円)。


5月にシンガポールで開催されたスタートアップイベント「Tech in Asia」に出展した同社のブース。多数の企業が出展する中、同社のブースは投資家など多くの来場者をひときわ惹きつけていました(撮影:岡徳之)

 子どもは成長とともに睡眠サイクルや生活リズムがどんどん変化します。1日のほとんどを寝て過ごす新生児も徐々に寝返りを覚え始め、目が離せなくなっていきます。ようやく昼夜の区別が付き始め、まとまって寝るようになったと思いきや、夜泣きが始まる1歳前後。その後も、早寝早起きの規則正しい生活リズムを身につけさせるために、両親が試行錯誤する日々が続きます。

 最近では、子どもでも睡眠時無呼吸症候群や夢遊病、不眠症など大人同様の睡眠障害もみられるそうです。子どもの睡眠リズムは、大人の生活スタイルを映す鏡とも言われます。子どもの睡眠を知ることは、快適な眠りをサポートしてあげられるだけでなく、家族全体の生活を見直すきっかけにもなるでしょう。

 nanaは、技術的には小さな子どもだけでなく、高齢者やよりよい睡眠を手に入れたい大人にとっても有効なはず。発売後の動きにも期待したいです。

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ライター:早川すみれ

2009年にフリーライターとして独立。仕事情報を発信する「CINRA.JOB」や「an」などでインタビューやコラムを担当。2014年に拠点をシンガポールに移し、「シンガポール経済新聞」など日本のニュースサイトやWebマガジンで執筆している。(編集協力:岡徳之)


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