ジョギングや水泳、サイクリングといった有酸素運動の多くは、いわゆる「気分転換」としても認知度が高く、うつ病などのメンタルヘルスのトラブルを改善する効果があると言われています。対して「筋トレがうつに良い」という話はあまり耳にはしません。しかし、実は各国の研究で筋トレにもメンタルヘルスを改善する効果があることが分かっているのです。
筋トレもメンタルヘルスに効く
スウェーデンのカロリンスカ研究所が科学誌『Cell』に発表した論文によると、運動による骨格筋への刺激が、うつ病などの精神疾患に関係のある物質を浄化する可能性が示唆されているのです。
アミノ酸の一つであるトリプトファンは、脳内の重要な神経物質であるセロトニンになる場合と、キヌレニンという物質になる場合があります。このキヌレニンは現在「うつ病の原因物質の1つかもしれない」と考えられています。ところがカロリンスカ研究所の論文によれば、骨格筋への刺激によって生まれるPGC-1α1というタンパク質がこのキヌレニンを無効化している可能性があるというのです。
「骨格筋への刺激」=筋トレ。マッチョの人たちが前向きに見えやすいのは、もしかするとこのPGC-1α1が大量に分泌されていて、キヌレニンをかたっぱしから浄化しているからなのかもしれません。
筋トレは脳の活性化に貢献する
さらに、筋トレは単純に脳の活性化にも効果を示すことがジョージア工科大学の研究で分かっています。研究では、被験者を筋トレをするグループとしないグループに分け、記憶力テストをしたところ、筋トレをしているグループの方が記憶力が10%ほど高いという結果が出たのです。
これは運動によって脳が刺激され、記憶の定着に関わっている神経伝達物質「ノルエピネフリン」が分泌されるから、と考えられています。意識がもうろうとするほどの筋トレはともかく、軽い筋トレは筋肉だけでなく、知性も鍛えることができるというわけです。
フィットネス後進国日本の現状
FITNESS BUSINESSが公表しているデータによると、日本はフィットネスクラブに参加している人口が、英米に比べて極端に低く、「筋トレをしている人はちょっと変わっている」という意識が少なからずあります。しかし精神疾患や記憶力の低下の予防策として、筋トレが見直されるべき時期が来ているのかもしれません。
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