東大とドコモ、ResearchKitで日常生活と糖尿病の関連性を研究するアプリ「GlucoNote」を開発
東京大学とNTTドコモが、国内で初めて2型糖尿病患者とその予備群を対象とした臨床研究用アプリ「GlucoNote」を開発しました。Appleの「ResearchKit」を用いたアプリで、多数の対象者から長期間にわたってデータを取得し、糖尿病と生活習慣の関連性を検証します。
東京大学とNTTドコモが設置した社会連携講座、東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 健康空間情報学講座の脇嘉代特任准教授と、東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻の相澤清晴教授らが、Appleが開発した臨床研究用のオープンソースフレームワーク「ResearchKit」を用いたアプリ「GlucoNote(グルコノート)」を開発しました。ResearchKitを用いたアプリとしては国内で初めて、2型糖尿病患者および糖尿病予備群を研究の対象としています。研究参加に同意した、2型糖尿病あるいは糖尿病予備群と診断された20歳以上の日本在住の人が参加可能で、研究期間は最長5年間になります。
GlucoNoteは、従来の臨床研究では収集が難しかった、家庭で計測した血糖値や血圧、体重、活動量などのデータ、そして食事、運動、睡眠といった生活習慣に関する情報を継続的に収集することができ、これによって2型糖尿病患者や糖尿病予備群の健康状態と日常生活の関連性を多角的に調査します。さらに、GlucoNoteには自己管理支援機能も用意しており、健康的な生活習慣の維持を促すことで、予後の改善に効果があるか検証します。
2型糖尿病とは?
膵臓のβ細胞が壊れて、インスリンが分泌されなくなってしまう1型糖尿病に対し、2型糖尿病は遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満や運動不足などを契機として発病する糖尿病で、インスリンの効果が出にくくなったり、分泌のタイミングが悪くなったりする病気です。自覚症状がほとんどなく、健康診断などで発見されることが多いのが特徴です。
2型糖尿病の治療は、生活習慣の改善が中心で、食生活と運動習慣を主とした療養指導が行われます。患者は主に自己管理によって健康的な生活習慣を維持する必要がありますが、スマホアプリでこの維持を補助することで、有意に改善が見られることが報告されています。
GlucoNoteでは、情報理工学系研究科電子情報学専攻の相澤研究室が、画像処理・認識技術で協力しており、撮影した食事の写真から料理名を検索してカロリーを自動計算して食事評価を行うなど、利便性の高い機能を用意しました。また「HealthKit」を用いて、iPhoneに蓄積されたデータを自動取得するため、被験者がデータを入力する手間はほとんどありません。
この研究のゴールは、スマホを活用して生活習慣が改善できるように自己管理を支援し、同時に生活習慣(食事、運動、睡眠)と在宅測定データ(血糖値、血圧、体重、活動量)の関係を明らかにし、より適切な自己管理支援につなげること。国立国際医療研究センターと日本糖尿病学会が合同して進めている、病院の電子カルテから得られた情報をもとに、糖尿病患者の血糖管理状況、治療状況、合併症の有病率などを解析し、日本における糖尿病患者の実態を明らかにすることを目的とした「診療録直結型全国糖尿病データベース事業(J-DREAMS)」の解析結果と、GlucoNoteで得られた日常生活情報の解析結果を統合的に用いることができれば、2型糖尿病患者の状況をより多面的に把握できるといいます。
日本における糖尿病研究の深化に寄与するこの臨床研究、対象の人はアプリをダウンロードして参加してみてはいかがでしょうか。
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