Apple Watch Sportの値下げと日本製のナイロンバンドから見えてくること:“ウェアラブル”の今
小型の「iPhone SE」や9.7型の「iPad Pro」の発表の影に隠れてあまり注目はされなかったが、Appleが3月21日に開催したイベントでは、Apple Watchについても、いくつかのアップデートがあった。
Appleは3月21日(現地時間)、カリフォルニア州クパティーノにある本社内のタウンホールで、メディア向けイベントを開催した。主となるトピックは4型ディスプレイを搭載した「iPhone SE」、9.7型バージョンの「iPad Pro」の発表だったが、発表の中で、「Apple Watch」に関するアナウンスも盛り込まれた。
今回Apple Watch関連の発表に割かれた時間は短かったが、Apple Watch Sportの50ドルの値下げ(日本では一律6000円の値下げ)のほか、新たな素材「ウーブンナイロン」を用いたバンドの追加、既存のクラシックバックル、モダンバックル、レザーループ、スポーツバンド、ミラネーゼループへの新色追加が行われた点が主なトピックだ。
販売台数、顧客満足度ナンバーワン
Apple Watchは2015年4月に発売され、間もなく1年がたとうとしている。具体的な販売台数のアナウンスはAppleからされていないが、調査会社の数字を総合すると、2015年は1400万台から1500万台のApple Watchが販売されたと見られる。
ティム・クックCEOはプレゼンテーションの中で、「世界で最も売れている、販売台数の多いスマートウォッチであり、顧客満足度もナンバー1である」と話した。
スマートウォッチに関する調査を行っているWristryによると、2015年7月、すなわち発売後3カ月の段階でのApple Watchユーザーの満足度は、97%に達しており、iPhone・iPadの発売後3カ月の顧客満足度(それぞれ92%、91%)を上回っているという。
また、TechPinionsによると、発売後6カ月にあたる2015年10月の段階でも、96%のユーザーが満足しており、引き続きApple Watchの製品力が高止まりしている。
通知、活動量と運動量の計測、カレンダー、マップなど、まだまだスマートウォッチの基本的な使い方の域を出ない、つまりキラーとなり得るサードパーティーアプリの登場を見ていない。
ただ、スマートフォンの補佐役としての役割期待が中心であれば、人々の期待値も大幅に高いわけではなく、概ね期待通りの役割を果たしてくれているのが現状、と見ることができる。
日本製の春らしい新素材バンドを追加
今回の発表で注目すべきは、Apple Watch Sportの値下げだが、それに加えて、各モデルで最も低価格な組み合わせで、シリコン製のスポーツバンドに加えて、ウーブンナイロン製のバンドを選ぶことができるようになった。
ウーブンナイロンは、ナイロンの糸を精密に編み込んで作られた素材だ。複数の色の糸の編みは、さまざまな色の表情を併せ持つ楽しみがある。また手触りもやや柔らかさを感じることができる。またシリコンよりも通気性に優れ、よりカジュアルな雰囲気を楽しむ事ができる点も特徴と言えるだろう。
タッチアンドトライ会場の説明スタッフによると、このウーブンナイロンは日本製であり、4つのレイヤーに編み込まれることで、色の表情を楽しむ事ができるようになったという。
色は「ゴールド/レッド」「ゴールド/ロイヤルブルー」「ロイヤルブルー」「ピンク」「パール」「スキューバブルー」、そして「ブラック」。いずれも単色ではなく、複数の色の組み合わせとなっており、2つのカラーネームが入ったバンドは、表裏で異なる色味を楽しむ事ができる。
バンドは各7色を購入することができ、価格はシリコンバンドと同じ5800円(税別)だ。原稿執筆時点では、出荷まで「1〜2週間」や「2〜3週間」となっている。
あらかじめウーブンナイロンバンドと組み合わせたモデルも3種類発売されている。「ローズゴールドアルミニウムケースとロイヤルブルーウーブンナイロン」「ゴールドアルミニウムケースとゴールド/レッドウーブンナイロン」「スペースグレイアルミニウムケースとブラックウーブンナイロン」の組み合わせは、バックルの色が本体のカラーに合わせて塗装されている。
また、Apple Watch Sportのスペースグレイ、あるいはApple Watchのスペースブラックと組み合わせてみたいのが、新たに登場したスペースブラックのミラネーゼループバンドだ。シルバーと同じ細かいメッシュのバンドだが、引き締まった印象の黒いバンドは、仕事向けにもさりげなく身につけることができるだろう。
42mmだけでなく38mm向けも用意されており、黒いバンドを試したい女性にもお勧めできる。
今はまだ、“身に着けるもの”としての存在感を高めている段階
交換用のバンドは、シリコン、ナイロン、レザー、ミラネーゼループと4種類の素材から選べるようになり、色も一段と増えてきた(一部の色はひっそりなくなったりしている)。もちろん、組み合わせるApple Watch本体の素材や色は、2015年9月から変化はなく、HERMÈSモデルのようなブランドコラボレーションもまだ増えていない。なにより、Apple Watchのハードウェアのアップデートは、今回の発表では見送られた。
S1プロセッサーを搭載する現在のApple Watchを、どれだけの期間販売していくのかは不透明だが、前述のように、スマートウォッチが果たすべき役割はまだ少なく、ハードの性能以上に、いかに人々が身に着けるものとしての存在感を高めるかに注力している段階といえるだろう。
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