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Apple Watch発売から間もなく1年、スマートウォッチ市場はこれからどうなるか?“ウェアラブル”の今

まもなく発売から1年を迎えるApple Watch。この1年、watchOSや交換用バンドについてはいろいろ発表があったが、本体のアップデートがどうなるのかは、まだ正式な発表がない。そのせいか、スマートウォッチ市場は踊り場を迎えているように見える。

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 Appleは3月21日に開催したイベントで、新しい「Apple Watch」をリリースしなかった。その代わり、「ウーブンナイロン」という新しいバンドと、スペースブラックのミラネーゼループを追加した。

Apple Watch
ウーヴンナイロンのバンドを披露するAppleのティム・クックCEO

 この2つの新しいバンドについては、追ってレビューしたいと思うが、ウーブンナイロンのバンドは、あらゆるApple Watchをポップに、そして重量をシリコンバンド以上に軽くし、Apple Watchの楽しみ方を伝える役割を担うことになるだろう。

 ただしそれは、技術的なスマートウォッチの進化を足止めするものになるかもしれない。

ウェアラブル市場は、スマホ市場のように推移する?

 Appleは、ウェアラブル市場でFitBitに次ぐ2位のシェア、そしてスマートウォッチ市場ではトップのシェアを獲得している。2015年第2四半期には75.5%のシェアを獲得し、2015年第4四半期・ホリデーシーズンには500万台以上のApple Watchが販売されたと見られている。

 IDCでは、AppleのwatchOSは、2016年に49.4%のシェアを獲得するが、2020年までには37.6%まで落ち込むと予測している。しかし稼働台数は倍以上に伸びると見る。

 この流れは、スマートフォン市場、タブレット市場がたどってきたものと同じパターンに見える。つまり、AppleによってiPhoneやiPadが時代の方向を決定づけ、市場の成長とともにAndroidとそのデバイスを作るメーカーが台頭していく流れだ。

 AppleはiPhone、iPadとも、それぞれのカテゴリーで最も成功しているメーカーであり、価格を高止まりさせていることから、最も収益率が高いビジネスを行ってきた。特に、いずれのデバイスも、発売以来毎年1回ずつ新製品を登場させ、新製品の価格は値上げすることはあっても、値下げはしていない。

 こうして、利益率が高い部分をAppleが確保し、それより下の価格帯を他のメーカーが奪い合う。そんな構造が、スマートウォッチにも生まれてきた。

 これまでと1点違うのは、349ドルからだったApple Watch Sportを、299ドルに値下げした点だ。Android Wear搭載のスマートウォッチなどは100ドル台のものも多いため、まだ価格差は十分に残っている。

 ただ、Motorolaの「Moto 360」やFossilの「Q Founder」、カシオ計算機の「Smart Outdoor Watch WSD-F10」など、デザインと機能性を高めたモデルは軒並み300ドル以上の価格をつけるようになっており、価格面でのAppleからの圧迫にさらされる結果となっている。

テクノロジーが満足度を高めない?

 Appleは、Apple Watchの次世代版をリリースせず、バンドの充実を進めている。これは、スマートウォッチが、機能面での進化を拙速に進める前に、スマートウォッチを着ける生活を楽しめるようにすることを優先しているから、と考える事ができる。

 これは、スマートウォッチが始めから、いわゆるテクノロジー面の発展、つまり高速なプロセッサや大きなディスプレイなどで販売台数が伸びる製品ではないというメッセージにも見える。

 加えて、スマートウォッチの技術的な進化を止めることで、テクノロジーに素早く適応する先進ユーザーから一般の人々への市場拡大を早めることも、狙うことができるだろう。

 Android Wear搭載のスマートウォッチを販売するGoogle Playストアをみてほしい。ここでも、Appleよりも素早く、さまざまなシーンに合わせたスマートウォッチが充実している様子が分かる。ファッションウォッチやアウトドア用、スポーツ用と、あるいは1人が数本所有しても良さそうなラインアップに、ブラウズしていても楽しい。

 一方で、こんな懸念も生まれる。アウトドア用スマートウォッチやシリコンバンドを採用したスポーツタイプのスマートウォッチをスーツと合わせて良いのかどうか。キラキラと石が埋まる宝飾品のような時計をスポーツウェアと合わせられるかどうか。

 1台のスマートフォンに、複数のスマートウォッチをペアリングして、その時々で切り替えて使える仕組みで対応すれば良いのだが、Appleはこれを、バンド交換で対応しようとしているようにも見える。

 ちなみに、新しいwatchOSには、複数のApple Watchを所有しても使い分けが可能な機能が採用されている。

踊り場の理由

 スマートウォッチは、あくまでスマートフォンとペアリングする補助的なデバイス、という位置づけに収まっている。そのうちは、スマートウォッチが、パーソナルテクノロジーの発展を牽引することも、毎年のように新しい機能が搭載され、人々がこぞって買い換えるようになることもないだろう。

 その原因を作り出しているのが、Apple Watchであることもまた、指摘できる。筆者はApple Watchの存在理由は、2つあると考えているが、それがそのまま、停滞させたい理由でもある。

 1つは、iPhoneより長いライフサイクルの製品であるiPhone専用の腕時計を購入したユーザーは、iPhoneのプラットフォームに留まる確度が高まり、iPhoneユーザーを減らさない、足場固めのツールになる点。

 そのためAppleは、iPhoneと組み合わせるApple Watchの顧客満足度を、何が何でも高止まりさせなければならない。毎年のアップデートよりも、Apple Watchをしっかり毎日装着してもらうこと、そしてできれば2年以上にわたって、習慣として定着してもらうことが重要だ。

 2つ目は、将来的に、iPhoneの役割を引き継ぐという未来だ。しかしこれには技術的な障壁が大きいため、またの機会に触れるが、スマートウォッチがiPhoneを代替することができるようになるまでは、あくまでiPhoneの引き立て役に徹するように、その進化のペースを調整することになるだろう。

 シリコンバレーの雰囲気から、テクノロジーの進化の速度と方向性に「お墨付きを与える」存在になっているAppleが、こうしたハードウェア的な停滞を良しとする姿勢を保つ限り、スマートウォッチは価格、バンドを含むデザイン、アプリなどをきっかけに購入に踏み切る人々を少しずつ生み出していく発展を続けることになる。

 確かに数と売上としては、スマートウォッチはウェアラブル市場の中で重要なポジションを占める。しかし、ウェアラブルによる破壊的な発展を遂げるには、まだ時間がかかるのではないか、と考えている。

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