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Apple Watchの新アプリ「Breathe」とは何か“ウェアラブル”の今

Apple Watchの機能が大幅に進化する次期バージョンの「watchOS 3」では、フィットネス機能に、「Breathe」という新アプリが加わる。Appleも「マインドフルネス」の領域へ踏み込んでいく。

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 Appleが開発者向けの年次会議「WWDC16」で発表したApple Watch向けの次期OS、「watchOS 3」では、フィットネス機能に、新たなツールが追加される。これまでは、運動計測、活動量計測に特化した機能が提供されてきたが、今度は心のフィットネスに踏み込んでいく。

 新たに搭載された「Breathe」は、名前の通り、深呼吸を行うためのアプリだ。「アクティビティ」のスタンド機能と同じように、1時間に1度のセッションを設定することもできる。

watchOS 3 Breathe
Breatheアプリは、スタンド機能と同じように、一定時間ごとにメッセージで呼吸を促してくれる

 新しいBreatheの機能については、WWDC16の基調講演で、カリスマトレーナーとして著名で、Appleのフィットネス機能の開発に取り組むジェイ・ブラニック氏が紹介した。

watchOS 3 Breathe
watchOS 3になると、Apple Watchに「Breathe」という新機能が加わる

深呼吸の習慣を作る

 Breathe機能の使い方は簡単だ。

 Apple Watchで何分間の深呼吸を行うかを選択すると、Apple Watchに大きくなったり小さくなったりする花びらのような青緑のアイコンが現れ、拡大していく間は息を深く吸い込み、収縮していくにつれて、ゆっくりと息を吐き出していく。これだけだ。

watchOS 3 Breathe
Breatheは、まず時間をセットし、スタートする
watchOS 3 Breathe
画面に映る青緑のアイコンが大きくなったり小さくなったりするのに合わせて呼吸を整える

 画面の拡大、縮小と同時に、Apple WatchのTapTic Engineの振動も手首に伝わる。息を吸い込んでいく時に、「トットットトトト」というテンポで振動し、この振動が頂点まで行くと、振動が止まる。これが息を吐き出すサインとなる。再び、振動が始まる時に、息を吸い込み始めるのだ。

 Breatheの機能を実装するに当たってAppleは、さまざまな研究を行ったという。

 画面のアニメーションをどう動かすといいか、という点はもちろんだが、TapTic Engineをどう振動させるのが最適か、といった点も研究から導き出している。息を吸う時には体に力を入れるため、振動を伝え、息を吐き出す際には静かな方が良いので振動がない、といった挙動になっているようだ。

 また、呼吸のペースについても、掘り下げると奥が深い。呼吸のペースや仕方によって、さまざまな効果を狙うこともできるという。ただし、Apple WatchのBreatheでは、「誰もがシンプルに、生活に深呼吸を取り入れられるようにすること」を主眼に、1つのテンポでの実装から始めた。

 具体的には、1分間に7回の呼吸を行うテンポに合わせられており、吸気と呼気の時間の割合は1:1.5に設定されている。これについても、より多くの人にとって、簡単で、かつ最もリラックスしやすいテンポを、研究を通じて決めたのだそうだ。

深呼吸についても、データを取る

 始めは、画面のアニメーションを見ながら深呼吸のセッションをこなせば良いが、慣れてくれば、手首に伝わる振動に合わせて、深呼吸のセッションを行えるようになるという。

 目をつむって、呼吸に集中しながら、より深いリラックスの時間を作ることが狙いだ。

 このように説明されると、Apple Watchに早くwatchOS 3を導入して、深呼吸の習慣をスマートウォッチにアシストしてもらいたくなってくる。平日の夜だけでなく、朝や日中にも、何度かこのセッションを取り入れてみたい、と筆者は思った。

 さて、フィットネスに関しては、Apple Watchではより確実なデータの記録が行われてきた。深呼吸のセッションについても、もちろんデータが記録される。

watchOS 3 Breathe
Breatheアプリで呼吸のセッションをこなすと、その時の時間の長さや心拍数などのデータが記録される

 いつBreatheのセッションをしたか。その時のセッションの長さ、そしてセッション中の平均心拍数も記録される。そして、前日のセッションと比較しながら、心拍数が落ち着いてこない時には、もう一度セッションをこなしてみよう、という判断もできるようになる。

マインドフルネスの流行に寄せて

 もちろん、呼吸と心拍数だけで、その人のリラックス度合いや集中力を図ることはできないし、人によって実感するかどうかも異なる。そのため、Breathe機能を使いながら、自分がどんな状態かを、自分で知ることが重要になってくる。

 こうした、リラックスや集中力を高める手法については、「マインドフルネス」というキーワードで、シリコンバレーや米国のビジネスシーンでの流行がある。

 本連載でも、眼電位と6軸加速度センサーを備えたアイウェア、「JINS MEME」が、スポーツからオフィスでの活用に転換する際に取り入れたのが、マインドフルネスの計測だったことを紹介した。

 しかし、JINS MEMEの方が先進的だ。体のバランスや安定感、そして瞬きまで認識できるため、より深いデータを取得し、トレーニングによる改善まで行えるのだ。「心」「集中」「体幹」をオフィス空間で鍛えながら仕事をする、そんなメガネだった。

 Apple Watchは、手首に装着しているため、JINS MEMEに比べると、多くのデータを取れるわけではない。ただ、1000万台以上販売されているウェアラブルデバイスで、こうした機能が搭載されることは、マインドフルネスの考え方そのものを広める役割を担うことになるだろう。

 Apple Watchが登場後も、FitBitやMisfitのような、フィットネス計測の専用機器の人気は衰えをみせない。そのことから考えると、Apple WatchのBreathe機能は、マインドフルネスに関連するデバイスの販売を盛り立てる可能性すらあると考えている。

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