ジェイアイエヌは1月18日、JINS MEME Flagship Store原宿にて、JINS MEME BUSINESS SOLUTION発表会を開催。2015年11月から販売しているセンサー付きアイウェア「JINS MEME」と、公式アプリである「JINS MEME OFFICE」を活用して、企業の生産性を向上するB2B向け「JINS MEME BUSINESS SOLUTION」を同日より順次展開すると発表しました。
開発背景や目的とともに、4つのソリューションが各社より紹介されたほか、特別企画トークセッションとして、今話題の「マインドフルネス」の研修を手掛けている二人の僧侶によるトークセッションや、JINS MEMEを使った瞑想(めいそう)中のセンシングデータのリアルタイム表示も行われました。
その働き方改革は本当に効果をあげているか? JINS MEMEで可視化
JINS MEMEは、2015年11月15日に発売されたウェアラブルデバイス。眉間と鼻パッドに搭載された3点式眼電位センサーと6軸センサー(加速度・ジャイロセンサー)で目の動き、まばたき、体の動きを測定できます。現在、フィットネス、オフィス、ドライブの分野でアプリケーションを提供中です。
集中力計測アプリケーションである「JINS MEME OFFICE」では、測定したデータから1日の集中時間や作業中の集中状態だけでなく、瞑想やマインドフルネス実施時の状態も可視化します。
ジェイアイエヌ JINS MEME開発担当の井上一鷹氏によれば、既にのべ5000時間を超えるデータが蓄積されてきているといい、1週間のうち何曜日に集中できているか、1日のうち集中力が高いのはいつ頃かといったことが分析できるようになっているそうです。
生産性の向上が叫ばれる状況にある
今回、JINS MEMEを用いたビジネスソリューションとして発表されたのが、Phone Appliの「“働き方改革”テレワーク支援サービスーコネクティッドオフィスワーカー」、コネクシオの「“働き方改革”アセスメント・サービス」、ジェイアイエヌの「JINS MEME OFFICE for Apple Watch」、インナーコーリングの「企業向けマインドフルネスソリューション“cocokuri(ココクリ)”の4種類。
冒頭で井上氏は、開発の背景について「日本においては長時間労働が増え、過労の問題がクローズアップされている。労働人口の低下に加えて、残業時間の削減によってさらに生産性を伸ばさなくてはいけない状況にある。加えて、われわれの生活を便利にさせるはずのデバイスが、集中力をそいでいるという研究結果がでている。IT化した世界でどうやって生産性を伸ばしていくかが問題」と説明。
また、「働き方改革の名の下に多くの会社が施策を講じているが、効果に対して懐疑的。誰も計れないというのが問題なので、どれだけ生産性をあげているかをJINS MEMEを使って測定して、PDCAをまわす一助にしたい」と述べました。
社員の集中度をリアルタイムに可視化「コネクティッドオフィスワーカー」
「コネクティッドオフィスワーカー」とは、Phone Appliが提供するWeb電話帳アプリ「PACD(Phone Appli Collaboration Directory)」と連携し、オフィスワーカーの集中度をリアルタイムに可視化しアイコンで表すというもの。1月11日から試験運用が開始されており、正式ローンチは4月3日を予定しています。
Phone Appli 代表取締役社長 石原洋介氏は、「深い集中に入るまでに23分かかるが、コミュニケーション手段によって集中が奪われている。個々の集中度が可視化されることで、中断させないような連絡方法を検討できるというメリットがある。まずは20社での導入を目指したい」と意気込みを語りました。
測定結果に応じて具体的な対策ができる“働き方改革”アセスメント・サービス
“働き方改革”アセスメント・サービスとは、コネクシオによる企業の生産性向上施策の効果測定サービスです。JINS MEMEを貸与してテストを行ったのち、レポーティングすることで、施策の効果を主観ではなく数値として可視化。PDCAサイクルを回し生産性を向上させようという試みです。参加企業を5社募り、1月18日からモニター開始。4月3日に正式ローンチ予定です。
半年前に検証したデータとして実験結果も紹介。1週間目はいつも通りに仕事し、2週間目はレポート結果に応じて施策を行った結果、集中力が15分伸びたほか、エンジニアは1日のうち後半のほうが集中力が伸びるという面白い結果も得られたといいます。
時間の使い方にメリハリがつけられる「JINS MEME OFFICE for Apple Watch」
JINS MEMEとApple Watchを連携させたのが「JINS MEME OFFICE for Apple Watch」。集中度を可視化するだけでなく、休憩を取るべきタイミングを知らせてくれるアラート機能を備えているのが特徴です。井上氏は「しっかり休んで攻めの“メリ”をつければ、次の“ハリ”につながるのでは」と説明。
対象デバイスはJINS MEME ESで、2月中旬対応予定。App StoreでJINS MEME OFFICEをダウンロードすることで利用できます。
僧侶がコーチのマインドフルネス研修プログラム「cocokuri(ココクリ)」
八正道を取り入れた企業向けマインドフルネス(※)ソリューションが「cocokuri(ココクリ)」です。実際にマインドフルネスを日々実践している僧侶がコーチとなり、JINS MEMEを使ってトレーニング中の集中力を数値で可視化することで、集中力、心を強める心的耐久力、心を高める社会的知力、心を広める創造的知力の4つを伸ばすという独自の研修プログラムとなっています。1月18日からサービス開始。同社のサイトから申し込みが可能です。
インナーコーリング 進行役員 水野由貴氏は「自分の集中状態の理解を深めるとともに、トレーニング効果を向上し、心の病から発生するGDP損失対策寄与を目指す。心の健康、心に気付くという潜在的なニーズをあげ、マインドフルネスのマーケットを開拓していきたい」としました。
宗派の違う二人の僧侶による異例のトークセッション
後半はJINS MEME ZENで瞑想プログラムの開発に携わった妙心寺・春光院 副住職 川上全龍氏と、「cocokuri」でコーチを務める浄土宗 光琳寺 副住職 井上広法氏の2人によるトークセッションを開催。宗派の違う二人の僧侶が「マインドフルネス」をキーワードに熱く語りました。
川上氏によれば、マインドフルネスは現在北米で1000億円もの市場を確立しているといいます。しかしぽこぽこと簡単に“老師”が誕生してしまい、「ポップコーン老師」といわれるほどになっているという現実も。
認定の基準が確立していないこともあり、井上氏も「ちゃんとした瞑想が本当にできているのか、実際測定したほうがいいのでは」と危惧。そんな井上氏の手首には、数珠とともにApple Watchが。「JINS MEMEを2016年の7月から使っているが、これまでは100%主観でしかなかった瞑想が、体調がわるいとすぐ数値にでる。自分の主観以上にデバイスが分かっていてすごい手応えを感じている」と語りました。
また、「日本人は不安を感じて生産性を落としやすい人種では? マインドフルネスが一番きくのは日本人ではないか?」というテーマに対して、川上氏は「1つのネガティブな不安や怒りに対して、3つのポジティブな経験が必要だが、進化の過程でネガティブなことに注目しやすくなっている」と語り、井上氏も「昔はネガティブなほうが生存率が高かった。ネガティブなものごとは生存を確保し、ポジティブは繁栄を確保した」とかならずしもネガティブであることはマイナスではないと説明。
しかし2人とも「現在は逆。ありもしない不安に対して気持ちが行って増殖しがち。ニュートラルにありのままに見るべきである。その点でマインドフルネスを強く勧めたい」とまとめました。
JINS MEMEを使って瞑想するときのコツも
その後、井上氏や水野氏を含めたスタッフらが3分間瞑想。そのときの状態をJINS MEMEでリアルタイムにグラフ化するというデモンストレーションも行われました。
JINS MEMEを使って瞑想するときのコツとして、川上氏は「センサーでまばたきを測定するので、目は半眼で。下を向くと呼吸に影響するので、椅子に座って視線は1〜1.2mくらい先を見る感じ。姿勢は耳と肩が一直線になるように。おへそを2〜3cm持ち上がるようにすると下腹部がもちあがる。呼吸はゆっくりと。吐く息を吸う息よりも長く、感覚としては倍くらい。5秒吸って10秒以上で吐くように。吸うときは鼻からがおすすめ」とアドバイス。
デモンストレーション中、表示されたのは「調身」「調息」「調心」の3点。「調身」は体の傾きから判断。「調息」は呼吸ですが、瞬きが強くなると呼吸がうまくいっていないことを表すといいます。「調心」も瞬きから推測しているとのこと。人は雑念が入り、頭が切り替わるとき瞬きをすることが分かっているため、瞬きの回数で雑念が計れるのだそうです。いずれも点数が高いほどいい状態を表します。
開始早々から安定したグラフで周囲を驚かせたのは、インナーコーリングの水野氏でした。
マイクで話す井上氏のすぐ脇に座り、川上氏などからも突っ込まれながらの瞑想となったのは、僧侶の井上氏。「調身」「調息」は終始100点を維持しながらも、「調心」のみがやや低い位置を推移。しかし、終了の3分に近づいたあたりから劇的に「調心」が上向きはじめました。その変化は驚くほどストレート。
終了後、井上氏は「言い訳になりますが(笑)、ふだん3分の瞑想はない。自分の場合3分経過したあとからMAXになっていく。JINS MEMEを使っていると、自分の瞑想のちょうどいい時間も見えてきます」とフォロー。
実際その通りとなっていただけに、僧侶の瞑想をリアルな数値として見られるという、非常に面白いデモンストレーションとなりました。
瞑想はよい眠りにもつながる
発表会終了後、井上氏に瞑想について伺いました。これからトライしようと考えている方にとって、1つの疑問が“雑念”ではないでしょうか。
「頭に雑念が浮かんでしまったときどうしたらいいか」という問いに対して、井上氏は「みんな頭の中をゼロにしなくてはいけないと思っているようだが、そうではない。鼻やお腹など集中する場所を決めて、心をゼロからイチにするのがポイント。雑念が浮かんで集中がズレたら、また意識を呼吸に集中させて心を戻す、この繰り返し。10分くらいがおすすめ」とアドバイスしました。「マインドフルネスはスピリチュアルではありません。アテンション、注意力の問題ですから」とも。
また、就寝時に余計なことを考えがちで、なかなか入眠できないという方にもマインドフルネスは効果的だといいます。
「起きているということは瞑想できているということ。瞑想できてないということは眠れているということ。どちらにしても成功なのですから」(井上氏)
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