家庭用ゲーム機から携帯に移植されたゲームは、いろいろある。しかし、「モンスターファームPOP」の取り組みは一風変わっていた。
特徴の1つは、携帯だからといって妥協せず3Dグラフィックスを採用したこと。また、携帯カメラとゲームを連動させて「街中のものを撮るとモンスターが誕生する」と設定した点も興味深い。
同ゲームを配信したテクモは、市場の反応に手応えを感じている様子。しかし開発の裏には、苦労もあったという。テクモのブロードバンド&モバイル事業部プランナー、伊藤雅隆氏に話を聞いた。
モンスターファームは、テクモがPlayStationなどの家庭用向けゲームとして提供していたゲーム。モンスターを誕生させ、育て、大会に出場させるといった内容だ。2004年秋にFOMA 900i向けに移植し、単純な移植ではなく「オリジナルアプリ」であるモンスターファームPOPを、月額525円で配信する形式をとった。
画面は、3Dグラフィックスを採用。携帯の画面内をモンスターがふわふわ、ウロウロと歩き回るさまは、携帯の表現力向上を実感させるものだ。
ただし、これを実現させるのは大変だったと伊藤氏。「もともとPlayStation 2のモンスターを移植したりしているわけで、CGクリエイターが『無理』というのを『作れコラ!』と」(笑)
苦労の原因は、携帯のデータ容量が限られていることもあるが、「グラフィックスエンジンの問題が大きい」と伊藤氏。
例えば、「丸いものを頂点で引っ張る」というスキンアニメーションで動いているモンスターがいる。この種の関節アニメーションは、グラフィックエンジンさえしっかりしていれば開発はさほど難しくない。
だが、いかんせん携帯のグラフィックエンジンでは「骨が動くと周りが連動して動く」程度の関節アニメーションしか用意されていなかったと伊藤氏。このため、動きをどう表現するか苦労したという。
「(携帯版とPlayStation版で)見た目は、モンスターが同じ動きをしているかもしれない。しかし、裏で動いている“動作原理”は異なるわけだ」
モンスターファームは、もともと音楽などのCDをゲーム機にセットすることでモンスターが生まれるというゲームシステムだった。どんなCDをセットすれば、どんなモンスターが生まれるか、それを探求するのが楽しみの1つだった。
携帯版のモンスターファームPOPでは、新たに携帯カメラを利用したシステムを導入。どこでも好きな場所を携帯カメラで撮ると、その風景に応じたモンスターが誕生するという仕掛けになっている。
開発過程では、実際にあちこち撮影して「画像認識エンジンがどう反応するか」を確認する必要があった。
「そこで、新人社員をつかまえてこう言うわけです。『お前街を歩いて“マクドナルド”の看板をかたっぱしから撮ってこい!』」
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