福岡から大宮へ15時間! 伝説の「はかた号」を越える新生「キング・オブ・深夜バス」はどれくらいエクストリームなのか試してみた:最後は謎の感動(3/4 ページ)
走行距離1170キロメートル、乗車時間は15時間10分。昨年12月にオープンした「日本最長」の深夜バスに乗って、福岡から東京まで帰ってみました。
午前0時10分(山陽自動車道のどこか)
走り始めてから4時間。昼間買っておいた100円ショップの空気まくらを膨らませ、僕もちょっと寝ておくことにする。
……つもりだったのだが、眠れない。考えてみれば飛行機でさえなかなか眠れない人間が、深夜バスですんなり眠れるわけがないのである。Twitterでも見ようとiPhoneを取り出すが、トンネルが多くぶちぶち電波が途切れてしまう。そういえば行きの新幹線でもこの区間はこんな感じだった。まだあと11時間以上あるのに、早くも「逆ウラシマ現象」という言葉の意味を噛みしめる。
午前1時50分(岡山の近く)
ちょっとウトウトしていたのに、腰の痛さで目が覚めてしまった。走り出してからもうすぐ6時間。ずっと同じ姿勢だと尻が痛くなってくるので、自然に体がずりずりと下がっていく。映画館もイスが合わないとこうなるんだよなあ、などと思いつつ、体を「よいしょ」と戻す。時間が経つにつれて、ズレては直してはのサイクルが短くなっていくのが分かる。iPhoneで現在位置を確認すると、まだ岡山の手前あたり。見なければよかった。
午前4時00分(神戸~大阪のあたり?)
1時間くらい眠れた、が、やっぱりすぐに起きてしまった。走り始めてからもうすぐ8時間。飛行機だったら今ごろはハワイである。ハワイ、行きたいなあ……。
午前4時25分(京都~滋賀のあたり?)
何の前触れもなく、いきなりオレンジの車内灯も消えてちょっと焦る。車内まっくら。iPhoneの画面がまぶしいので、設定で画面の輝度を最低にした。相変わらず眠れない。尻も痛い。この時間は完全に敵の土俵だということを身にしみて実感する。
午前5時50分(伊勢湾岸自動車道)
今はどのあたりだろうか。ふとカーテンをめくってみたら、なぜかバスが海の上を走っていて、夢でも見ているのかと目をこすってしまった。正確に言うと、海の上にかかった長い橋のようなところを走っている。海岸にはキラキラとまばゆい工業地帯の明かり。あの黒いグネグネとしたシルエットはもしかして、遊園地のジェットコースターじゃないか?
ここは一体どこだ、とiPhoneを立ち上げて現在地を確認。ああ、なるほど、伊勢湾岸自動車道を走ってたのか。ということは、あの遊園地はナガシマスパーランドだ。ここまで夜景らしい夜景も見ていなかったので、しばし窓の外の景色に釘付けに。
午前6時30分(浜名湖サービスエリア)
そういえば乗る前、加藤編集長に「日の出の瞬間とかも撮りたいよね」って言われてたんだった。外を見ると、すでに東の空はうっすら白んできている。が、山に隠れて肝心の日の出の瞬間は拝めそうにない。
そのうちにバスは浜名湖サービスエリアへ。休憩か! と一瞬期待するも、運転手さんが交代するために停車しただけだった。もう外はかなり明るい。日の出は掛川のあたりで見ることができた。
午前8時10分(富士川)
乗務員さんからアナウンスがあり、現在富士川を通過中とのこと。「カーテンを開けて富士山を見てもいいですよ」と乗務員さん。すっかり護送中の囚人のような気分になっていたので、こんな些細なことでも浮き足立ってしまう自分が悲しい。そういえば、バスに乗ってからそろそろまる半日(12時間)になる。
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