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「ねとらぼ」だから「虎坊」に行きたい――編集長の無茶ぶりから始まった、謎と神秘の「虎坊」探訪記謎の感動(3/4 ページ)

それは例によって、編集長の無茶な一言から始まった。「九州に行くならさ、虎坊ってところに行ってきてよ」。ええと、行くのはいいけど、そもそも虎坊ってどこ?

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明かされる「虎坊」の秘密

 岡本さんの家は市役所のすぐ裏手にあった。駐車場にいた男性に声をかけると、その人が岡本さん本人だった。あらためて企画の趣旨を説明し、「虎坊」について詳しく聞かせてもらう。

「ねとらぼって言うの? なんだか『ねたぼう』みたいな名前だなあ」

―― ねたぼう? どういう意味なんですか。

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「大人になっても仕事しないで、家に閉じこもって遊んでる人のことをこっちじゃ『寝た坊』って言うんだよ」

―― ……。

岡本澄雄さん。小城郷土史研究会の副会長だ

 市役所に務めていた頃から、郷土史の研究を行っていたという岡本さん。虎坊について尋ねると、自身の著書「『芦刈』その起源・人 ふるさとの地名をたずねて」を開いて見せてくれた。

「これは100年くらい前の地図かな。ほら、漢字で虎坊って書いてある」

芦刈の起源や地名の由来などについて、事細かに調査、記述されている
周辺の立野、八枝と合わせて、このあたりを「八立虎(はちりゅうこ)」と呼ぶそうだ

 岡本さんによると、もともと虎坊のあたりは「虎坊村(とらぼうむら)」と呼ばれていて、少なくとも1800年ごろの地図や文献にはその名前が見られたという(名前自体はもっと前からあった可能性もある)。境目がよく分からないのは、かつて農地の区画整理が行われた際に、道路や水路の位置が変わってしまったためらしい。

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 また、そもそも虎坊のあたりは干拓によって作られた土地で、昔はあのあたりを牛津川が流れていたのだ、とも。

「今は牛津川が西を流れてるけど、昔はもっと曲がりくねってた。ほら、(地図を指さしながら)今は水路になってるけど、ここが本来の流れだった」

地図の青いラインが現在、赤いラインが昔の牛津川の流れ

「虎坊」の名前の由来については、大きく2つの説があるという。1つは、「寅の方角の近く」という意味。「~坊」という地名には「~の近く」という意味があり、おそらくどこかから見て、寅の方角にあったから「虎坊」なのではないか、というのが第一の説。

 もう1つは、昔の修験者たちが寝泊まりに使っていた「坊(宿泊施設)」の名前がそのまま地名になったのでは、という説だ。このあたりには有名な霊場があり、それらを巡る際の中継点として「虎坊」というのがあったのでは、と岡本さんは推測する。ただ、どちらの説にしても、これといった決め手は見つかっておらず、あくまで岡本さんの推測なのだそうだ。

これが「ね虎坊」だ!

 そういえば、いつのまにか虎坊について夢中で調べていたけど、本来の目的は別にあるのだった。「ね」+「虎坊」で「ねとらぼう」! これをやらなきゃミッションを達成したとは言えないのである。岡本さんにそれを伝えると、

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「タクシーで行くの? せっかくだから連れてってあげるよ」

 うわーっ、こんな企画のために本当に申し訳ありません! 最後まで小城市のみなさんに助けられっぱなしの取材である。さっそく岡本さんの軽トラに乗り込み、最後の目的地へと向かう。

夢にまで見た(見てない)虎坊へ向けて、いざ!

 ……そして、畑の中を走ること5分とちょっと。岡本さんの軽トラがゆっくりと道路脇に止まる。

 おお、おおおお! さんざん地図で見た道路の形! 民家の並び!

「ほら、このへんだよ」

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 キターーーーッ!

 さあ、とんでもなく長い前フリになってしまったが、これがウワサの「ね虎坊」である。しかとその光景を目に焼き付けよ!

牛津川の土手から、「ね虎坊」!

 どうしよう。

 すごく普通の風景。

 なのに何だろう、この「やり遂げた感」は。

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 「誰得だよ!」と言われてもしょうがないと思う。でも今インタビューされたら、「自分を褒めてあげたいです」とか言っちゃいそうな気がする。大丈夫かなあ。この感動、ちゃんと伝わってるかなあ。せめて言い出しっぺの編集長くらいは、この感動を共有してほしい。

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