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地震発生! クロサイ逃走!――上野動物園の猛獣脱出対策訓練に密着してみた(2/2 ページ)

地震でクロサイがおりから逃走した――という事態を想定し、上野動物園で実施された「猛獣脱出対策訓練」に潜入。真剣な表情で臨む職員たちを追った。

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いよいよ捕獲へ

 すでに脱走から30分が経過。記者が知らないうちに来場者2人も突進を受けて重傷を負ったようだ。ここで再び園内アナウンスが流れる。クロサイは、来場者が避難しているはずの「フラミンゴ前の広場へと移動」したらしい。やばい。早く捕獲しなければ、もっと多くの負傷者が出てしまう。

突破を試みるクロサイ。職員が1人負傷した
職員を担架で運ぶ
すぐに応急処置を施す(あれ? 人が人形に変わってる……? のはご愛嬌。訓練ですからね)

広場へサイが現れた

 広場には訓練を聞きつけた多くの来場者が詰めかけていた。そこへクロサイが現れる。「あれがサイ!?」とどっと笑いが起こり、来場者は携帯電話で写真を撮ったりしている。だが警備員は至って真面目。「来場者のみなさんは危ないですから館内へ入ってください! ここから離れてください!」と誘導している。なんとも心強い。

 クロサイはのそのそした動きで、広場を歩いては止まりを繰り返す。そうこうしている間に30~40人ほどの職員によって、遮断網で四方を囲まれた。もう逃げ場はない。タイミングよく「捕獲班」と「麻酔班」の車が1台ずつ広場へ侵入。そして麻酔班の車の助手席から麻酔銃を発射!!!!

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 と見せかけて今回は訓練なので実際に針は発射されず、「プシュ!」と効果音が流れた。少し遅れてクロサイからも「ブシュ!」と鈍い音が鳴り、お尻から麻酔の針がニョキッと生えてきたぞ。ちょっとやり過ぎ(?)な演出に報道陣は笑いをこらえ切れなくなり、声が漏れる。

 麻酔を打たれたクロサイはというと、辺りを少しフラフラした後、動きがだんだん鈍くなり、直立不動状態に。麻酔が効いた……か? 捕獲班が車を降り、クロサイの元へ。麻酔の効果を確認すると、両腕で大きく丸の文字を作った。そして捕獲班総出で網をかける。「捕獲が完了しました」とのアナウンスが入り、遮断網を作っていた職員らは片付けを始めた。ふぅ、これにて一件落着!

広場をふらつくクロサイを遮断網で囲い込む
麻酔を打たれたクロサイ
麻酔班
そして捕獲へ……
しっかり網で包まれた
来場客は館内へと誘導された

「立派に順調にやれた」と土居園長


土居園長

 訓練後、土居利光園長(61)からは「この訓練を心の中に入れ込んで、また改めて業務に取り組んでください。連絡など立派に順調にやれたと思います」と労いの言葉が職員に贈られた。訓練に協力した上野警察署の代表者も「大変動きが良くて安心しました」と職員を称えた。

 報道陣に対し、土居園長は「実際サイはああいう形では動き回らないし、パニックになるときっと動かないと思うが、訓練ということなので負傷者の対応や捕獲など色んな要素を組み込みながら行った」と訓練の目的を説明した。

 おりは地震に備えて頑丈に作ってあり、木が倒れかかって逃走経路ができてしまうといった万が一のことが無い限り、動物は逃げ出させないという。そのうえ動物は「パニックになると始めは動かないので、その間に対処する」と、土居園長は力強くコメントした。

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クロサイに入った職員ら。普段はアシカやゾウの飼育をしているとのこと

 過去には、クロヒョウ(1936年)やインドゾウ(1967年、1977年)、ニホンザル(2010年)が実際に逃げてしまったことがある同園。以前の訓練では着ぐるみを使って動物を演じたが、着ぐるみは「なんかかわいい感じになってイベントっぽくなる」(土居園長)ため、今回は避けたという。

 クロサイの張りぼては大変重いため、中に入る人には「なるべく頑丈そうな職員」が選ばれた。その1人は「あくまで訓練なので笑いがあってはいけないので真剣に、職員を傷つけるぞ」という意気込みで取り組んだと、疲れた表情でコメントしてくれた。途中で少し笑ってしまった記者は自分の真剣度が足りなかったと反省。いやあ、本当にお疲れ様でした。

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動物 | 動物園 | 地震 | パニック | 取材 | 着ぐるみ | 避難

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