最大限の“痛さ”で札幌の新名物に 長栄交通の「痛タク」がつくるフリー経済:すごいぜ痛タクシー(2/3 ページ)
エヴァやバイオハザードとのコラボでも注目を浴びた長栄交通の痛タク。広告料や版権などのお金のやり取りをせずに実施することで最大限の“痛さ”を実現している。
痛タクの売り上げは、通常の車両の売り上げより2割以上高いという結果がもたらされている。乗車している車両からの売り上げが運転手の報酬につながるタクシーの仕組みの中で、その効果は運転手にとっても大きなメリットだ。この高い売り上げ傾向は、タクシーにラッピングされたコンテンツの有名無名には関係なく生まれている。
「広告のラッピングタクシーをしていても、広告料はタクシー会社に入るもので、運転手さんの収入にはなりません。痛タクは乗っている運転手さんの収入に直結します。今では、進んで乗務したいという運転手さんもいます」と竹内さん。まさに、タクシーのコンテンツ化でフリー経済が生まれている。
痛タクはラッピングだけではなく、タクシーの中にもその世界が広がっている。例えば痛タク第3弾「フランチェスカ」の車両。フランチェスカは地元の企業ハートビットが作った「北海道発アンデッド系キャラクター」で、車内ではテレビで同キャラを紹介するショートアニメが流れ、運転手さんからポストカードの進呈もある。もちろん運転手さんはコンテンツに関するレクチャーも受けている。
タクシーを「フリー」メディアにすることで生まれた可能性
このタクシーをメディアにした「フリー」の発想。竹内さんは「痛タク」以前から導入していたという。
「以前から車内の宣伝物も無料で置くことを私の発想で引き受けていました」と竹内さんは語る。タクシー車内での宣伝は普通、広告料をもらって引き受けるものだ。「北海道の景気は本当に悪く、お得意様になってくれた飲食店でも、経営が厳しいところが多かったのです。一方で、新しくお店を始めようと一念発起をする人もいる。この両方を私たちなりに応援したかったのです。そこで、宣伝枠を無料で提供しました」
ここでも広告料をもらうのとは違う効果があった。それは宣伝を出した店舗から、迎車の注文が必ず入るようになったこと。「痛タクと同じように、広告費でタクシー会社だけがわずかに、かつ本業外の収入をいただくよりも、運転手さんの収入に直結する、タクシーとしての本業で稼ぎたい。そしてタクシーの可能性を追求したい」と竹内さんは意気込む。
それにしてもなぜ、痛タクの発想にたどりつき、地元企業だけではなく、バイオハザードのタクシーまで成功させたのだろうか? 実は最初は広告モデルによるラッピングタクシーのビジネスを導入しようとしていた。
「札幌は観光地ですし、地域を盛り上げるためにも、観光やビールなど地域のブランド関係を広告にしたラッピングタクシーを提案したのです。しかしうちが小さな企業ということもあって、何処の会社も相手にしてくれなかったのです」
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