チルトシフト風の不思議な世界観 クリエイター木村世忍インタビューvol.1
チルトシフトとフィギュアを組み合わせ、独特の世界観を持った作品を作り出している木村世忍さんにインタビューした。
被写体をミニチュア風の遠景として写す手法が注目を集めるチルトシフト(tilt-shift lens)は、水平・垂直方向に動かすことのできる点が特徴の、カメラレンズの一種である。このレンズを通してピントやパースを意図的にずらしながら撮影すると、ごく普通の風景がミニチュア風に映し出され、味のある面白い写真に仕上がるのだ。木村世忍さんは、このチルトシフトとフィギュアを組み合わせ、独特の世界観を持った作品を作り出している。
Q. なぜこういうチルトシフト風の作品を作ろうと思われたんですか。
A. 以前、キャラクターの着せ替え人形のブームがあったときに、多くの方が自分のウェブページで自作のドールハウスを舞台に創作物語を公開していたんです。ただ、僕はそれでは何か面白みに欠けている気がして。外にあるもので物語を展開させたかったのですが、当然外のもののサイズに対し人形は小さいですよね。だから、背景を自分で作ってしまおうと思ったんです。大変な作業ですが、作っていると楽しいですしワクワクします。凝り始めるといつまでたっても終わらないので、1日1枚のペースですね(笑)。
Q. 凝る、というのは具体的にどんな部分に凝られてるのですか。
A. チルトシフトで撮ると、手前と奥の部分がボケてしまうんですね。でも実際には、遠くのものはボケて見えないじゃないですか。それを上手くするにはどうすればいいんだろう、一律にボカすのではなく、例えばビルの遠近に合わせてボカすにはどうすればいいんだろう、とかそんなことを考えだすと止まらなくて。自分でも面倒な作業だというのはわかっているのですが、とても楽しいんです。僕の目的は、あくまでフィギュアをミニチュアの世界で生き生きと魅せたいということです。CGの限界に挑戦している感じですね。
Q. どういった手順を踏んで、作品が出来上がるんでしょう。
A. 簡単な流れとしては背景を撮影して加工、その後にフィギュアを撮影、背景画像と合成し、陰を入れたり加工しながら一体感を出していきます。フィギュアを撮るときには、そこに木々があるのかビルがあるのかということを細かく意識して、光の加減を工夫します。アルミホイルや紙を置いてみたり、合成する背景写真の太陽の位置を意識しながらライトを当ててみたり……本当に小さな作業の繰り返しですね。全て自己流なので、面倒なぶん楽しいです。
Q. 背景写真を撮るときのコツを教えてください。
A. そうですね……出来るだけ、フィギュアの目線の高さに合わせることでしょうか。下から撮ったり横から撮ったりすると、後から合成したときにフィギュアが寝ているように見えてしまうので。戦車の模型など、地面との設置面積が広いものは特に注意しています。高さを合わせないと、大きさのバランスが崩れるので地面との遠近感が悪くなって、浮いて見えちゃうんです。
完成度の高い作品の背景には、撮影段階からの細かい気配りがあるのだ。次回は、加工の際のこだわりについてうかがってみる。→Vol.2へ
英文:A Mysterious World in Tilt-Shift Style - Creator Interview: Kimura Yoshinobu Vol.1
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