インタビュー

連載を取り消された漫画家の復活劇――『あいこのまーちゃん』が書店に並ぶ日漫画家・やまもとありさ インタビュー(1/4 ページ)

「不健全図書」に該当する可能性を指摘され、連載中止となった漫画『あいこのまーちゃん』。同作の単行本化に向け、クラウドファンディングやニコニコ生放送、273時間の作画配信などさまざまなことにチャレンジしてきた漫画家・やまもとありさ先生とは一体どういう人物なのか。ロングインタビューでやまもと先生に迫った。

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『あいこのまーちゃん』の表紙

 2014年6月27日、連載開始を2日後に控えたとある漫画が連載取り消しの宣告を受けた。漫画の内容が、東京都の定める「不健全図書」に該当するかもしれないと出版社が判断したのがその理由だ。

 漫画のタイトルは『あいこのまーちゃん』。少し天然な中学生の「あいこ」が、初潮を機に言葉を話すようになった自身の女性器「まーちゃん」とともに、少女から大人へと成長していく姿を描いた作品で、ノース・スターズ・ピクチャーズが運営するWebコミック誌「WEBコミックぜにょん」で連載され、ゆくゆくは徳間書店から出版される予定だった。

 この事件はネットでも大きな話題を呼び、取り消しの約2週間後には「漫画 on Web」で第1話が公開。8月から10月にかけては、作品の完結と電子書店での販売を目的にしたクラウドファンディングも行われた。

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 本記事では、作者・やまもとありさ先生にインタビューを敢行。その人物像に迫るとともに、連載取り消しの真相や、やまもと先生が作品完結へ向けて取り組んできたさまざまな活動などについてお届したい。全編見どころだが、本記事の最終ページは必見だ!

青年誌、レディコミに没頭した中学・高校時代


「まーちゃん」のぬいぐるみを手に、笑顔のやまもとありさ先生

―― まずは、やまもと先生についていろいろとお伺いしようと思います。漫画を描きはじめたのはいつごろからですか?

やまもと 小学1年生のときからですね。自由帳を自分でアレンジして漫画を描いていました。『金田一少年の事件簿』に自分や友達を登場させて推理問題を出したり、漫画やアニメをもじったものを描いていました。

―― そのころから漫画はよく読んでいたんですか?

やまもと 読むのも好きでしたけど、それよりも描くことの方が好きでしたね。「自分の方がもっと上手く描ける!」みたいな自信過剰なところがあったので(笑)。そのころから漫画家になりたいと考えていました。

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―― ええ! それはまたずいぶん早いですね。

やまもと そうですかね(笑)。小学校6年生のときに、初めて漫画誌に投稿しました。

―― 投稿した漫画誌についてお聞きしてもいいですか?

やまもと 『リボン』とかの少女漫画誌ですね、当時は少女漫画ばかり読んでいたので。それから、私は高知県出身なんですけど、地元の新聞が「黒潮マンガ大賞」という漫画賞を開催していて、それにも何度か投稿しました。

―― 今の作風は青年漫画寄りですよね、少女漫画好きだったというのは意外です。

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やまもと 中学の後半から高校に掛けては、青年漫画誌とかレディースコミックばかり読んでたんですよ。

―― それは何かきっかけがあったんですか?

やまもと 兄の部屋に『ヤングマガジン』があって、それを読んだりしてました。あと中学生のとき塾に通ってたんですけど、友達を待ってる間にスーパーの雑誌コーナーで『FEEL YOUNG』とか『YOU』とかのレディコミを読んでいました。少女漫画誌は、ひもで閉じられてて立ち読みできなかったので(笑)。

―― レディコミにはまる中学生……(笑)。高校生のときはどうだったんですか?

やまもと 中学校のときから自分の不満をぶつけたような暗い漫画ばかり描いていて、そういうのに憧れてたというのもあったんですけど、だんだん描くのがしんどくなって、漫画を完成させることができなくなっていったんです。

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 それで回り道しようと思って、高校1年生の途中からバンドをやり始めたんです。路上とかも経験したり。あと、美術系の学部で油絵をやっていて、小さいながら展覧会を開いたりもしていました。

―― 何というか、チャレンジャーですね。そういえば、高校時代に漫画甲子園にも出場されてますよね。

やまもと あ、そうですね。って、そんなことまで知ってるんですか(笑)。通ってた高校が漫画に強い学校で、漫画甲子園でも常連校だったんです。それで高校1年生の時に出場しました。

 漫画・アニメ部っていう部活に所属していて、会報誌で漫画を描いたりもしてました。部員は60人くらいいたかな、野球部かよって(笑)。

―― 普通の学校なら考えられない人数ですよ(笑)。その後は専門学校に進学されるんですよね。

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やまもと そうですね、浪人した後に専門学校に入りました。

―― それは高知県の?

やまもと いえ、渋谷にある漫画の専門学校です。その年の夏には、黒潮マンガ大賞で準大賞をもらいました。漫画家の西原理恵子先生とくさか里樹先生、それから編集者の八巻和弘さんが審査員を務めておられたんですけど、八巻さんにはその後も漫画のアドバイスなどでお世話になりました。

―― クラウドファンディングのプロジェクトページにも、八巻さんのコメントが掲載されてますよね。

やまもと 私からお願いしました(笑)。上京してから『モーニング』の「MANGA OPEN」に応募した関係で担当さんはいたんですけど、その人とは別に八巻さんにいろいろと指導してもらってたんです。

 八巻さんは小学館の編集者さんなんですけど、私がちばてつや賞(講談社の漫画賞)に応募したいと言ったときも、「別の出版社でも全然いいから、僕が作品を見るから仕上げてきて」と言ってくださって、とにかく作品を完成させてどこかに投稿することが大事なんだと教わりました。そのおかげもあって、『僕と少女おばさん』で「ちばてつや賞」(2010年第58回)の佳作を受賞することができました。

 2012年には『路上の唄』という作品で『コミックゼノン』の「マンガオーディション」優秀賞を受賞しまして、こちらは本誌にも掲載され、デビュー作になりました。


『路上の唄』は、デリバリーヘルスで働く少女を描いた14ページのサイレント漫画。少女の表情の変化が印象的な作品
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