どう生きるべきか 『少女終末旅行』つくみずは問い掛ける(2/2 ページ)
初のオリジナル作品でデビューしたマンガ家・つくみずさん。ディストピアな世界でほのぼのと生きる少女チトとユーリの物語を描いた『少女終末旅行』の魅力に迫る。
どうやって生きることが正しいのか、キャラクターを通して問い掛ける
―― チトとユーリにつくみずさん自身を投影していたりするのでしょうか。
つくみず 自分の中の光と影じゃないですけど、問い掛けを二人に代弁させるというのはあります。あとは、イシイとカナザワというゲストキャラも出てきますが、この二人も割と自分と重ねているところがあったりします。
―― どういった部分ですか?
つくみず カナザワは旅をしながら地図を作り、イシイは遠くへ行くために飛行機を作るという目的を持って生きてるじゃないですか。自分も連載が忙しくてやりたいことができなかったり、将来どうなるか分からない不安はありますけど、そういった日々の中でも、おいしいものを食べたり、風呂に入ったり、散歩したりといった楽しみはあります。
イシイとカナザワみたいに目指すものがあって生きる人もいれば、チトとユーリのように無目的にのんびり旅をする人もいる。どう生きるのが本当の幸福なのか、正しいことなのか。彼らはそういう問い掛けの中で生まれたキャラクターでもあります。
―― チトが日記を書いたり、ユーリがカメラで写真を撮ったりしていますが、二人が世界を記録するような役割を担ったりしているのでしょうか。
つくみず そういうわけではないです。終末世界を旅しながら記録していくストーリーはありがちな話かもしれませんが、この作品では二人はそういった役割を担っているわけではありません。何の意味も持たないというスタンスでたぶん最後まで描いていくと思います。
表現って何だろうということを常に考えています
―― Twitterに短めの動画(GIF)を上げられていますが、映像にも興味があるのでしょうか?
つくみず そうですね。アニメが好きで、自分でも描いてみたら面白くて。アニメ作品も作ってみたいと思っています。難しいかもしれませんが、トライはしてみたいんですよね。表現に対しての好奇心が強くて、絵でもそうだし、アニメだったり、詩を読むのも好きですけど、いろんなものに触れながら、表現って何だろうと常に考えています。
―― 作画はPCですか?
つくみず 下書きは鉛筆で描いて、それをPCに取り込んでペン入れやトーン貼りなどをしています。ソフトは「CLIP STUDIO PAINT」を使ってます。これがあればだいたい描けちゃうんですけど、将来的にはアナログでペン入れもやっておかなきゃなと思っています。
―― やっておかなきゃというのは?
つくみず デジタルとアナログどっちがいいのか分からないので、試してみないとなって。絵を描き始めたころからずっとPCでやっているので、アナログでの表現をあまりやっていなくて。マンガを描くときに、もしかしたら紙とインクの方がいいかもしれないなと最近思い始めたんです。
―― アナログからデジタルに移行する方が多い中、その逆というのは新鮮ですね。
つくみず 最終的に紙媒体になるのに、デジタルで描くというのもなって。デジタルだと拡大・縮小ができちゃうんで、紙面全体のバランスを把握しづらいんですよ。それがいま一番のネックです。
チトとユーリを描いてもらった
―― イラストまで描いてくださってありがとうございました! 物語はすでに結末まで考えられているのでしょうか。
つくみず そこはまだぼんやりと。結末らしい結末が果たしてあるのか、わたし自身も探りながら描いています。
―― まだまだ作品が続いてほしいという意味でも、二人にはもっといろんな場所を旅してもらいたいです。では最後に、今後の目標と読者の方へ一言お願いします。
つくみず 目標は、「少女終末旅行」に関して言うならば、「自分の納得するものを最終巻まで描き続けること」です。
ファンの方には、実生活の良さというものを見出しながら生きていってほしいです。この作品が、楽しく生きるための助けになればと思います。
―― 2巻発売でお忙しい中、ありがとうございました!
関連記事
ゲイアートの巨匠は“一般誌”で何を伝えるか
『さぶ』『Badi』といったゲイの専門誌での連載や、海外ではゲイアートの個展を開くなどしてその名を知られる田亀源五郎さん。5月25日に第1巻が発売された『弟の夫』の魅力を中心に田亀さんに迫る。人生を味わう極上の一杯『ラーメン食いてぇ!』の林明輝に聞く
講談社のWebコミックサイト「モアイ」に掲載されるや、またたく間に話題となったマンガ『ラーメン食いてぇ!』。ラーメンマンガとひとくくりにできない同作の魅力をお届けする。連載を取り消された漫画家の復活劇――『あいこのまーちゃん』が書店に並ぶ日
「不健全図書」に該当する可能性を指摘され、連載中止となった漫画『あいこのまーちゃん』。同作の単行本化に向け、クラウドファンディングやニコニコ生放送、273時間の作画配信などさまざまなことにチャレンジしてきた漫画家・やまもとありさ先生とは一体どういう人物なのか。ロングインタビューでやまもと先生に迫った。アイドル×オタクで面白さは加速する――アイドル群像漫画『ミリオンドール』の魅力とは
地方アイドルVS地下アイドル、そして在宅オタクVS現場オタクという二重構造で展開される漫画『ミリオンドール』。7月のアニメ化放送が決定した同作の作者・藍さんに作品について伺った。かわいい絵柄に小さなトゲ――北欧女子・オーサの描く4コマが魅力的なワケ
日本で見つけた不思議や驚きを4コママンガで描き、その独特の視点や絵の巧みさから注目を受けているスウェーデン人マンガ家のオーサ・イェークストロムさん。好きな作家に矢沢あいさんを挙げるオーサさんに、秋葉原のメイドカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノさんが切り込む。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.