まるで異世界! 『知床蜃気楼読本』の著者が語る蜃気楼の魅力:司書メイドの同人誌レビューノート
秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。
一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。
今週は、知床で見られる蜃気楼を観測し、同人誌として発表している知床蜃気楼・幻氷研究会さんにお話を伺いました。
紹介する同人誌
タイトル:『知床蜃気楼読本』
著者:知床蜃気楼・幻氷研究会
サークル名:知床蜃気楼・幻氷研究会
形態:A5 26ページ 表紙カラー・カラー
江戸時代には蜃気楼が着物の柄に使われていた!
ミソノ よろしくお願いします。まず初めに名前とサークル名をお願いします。
佐藤 知床蜃気楼・幻氷研究会、佐藤トモ子と申します。
ミソノ どうぞよろしくお願いします。本を手にしてまず「蜃気楼って見に行くことができるんだ……!」と驚きました。一生に一度見れるかどうかのような現象だと思っていましたので。
佐藤 蜃気楼は文学的・抽象的なイメージで捉えられていることも多いですが、紀元前から自然現象として親しまれていました。珍しい現象なので、江戸時代には吉兆の象徴として、着物の柄や、工芸品の模様に多く使われていました。
ミソノ 着物の柄! そんなに古くから有名だったんですね。
佐藤 現代では、光の屈折による科学的な現象であることが判明しています。特に富山県魚津市が蜃気楼を見られる名所として有名ですが、最近では、北海道でも多く見られることが分かってきました。
ミソノ 北海道に蜃気楼を見に行くというイメージはなかったですが、本を拝見すると、知床・斜里は年間50日も観測できた年があったとか。蜃気楼って狙って見られるものなのですか?
佐藤 季節によっても発生しやすい条件は違いますが、共通して言われるのは、晴れていて風の無い穏やかな日です。このようなときは、狙い通り見られることが多いです。
ミソノ 見てみたいです!
佐藤 ただし詳細なメカニズムはまだ完全には解明されておらず、毎日見に行っていると、出そうな日に出なかったり、出なさそうな日に出たりすることもあり、奥が深いです。
ミソノ 自然現象ですものね。でも蜃気楼って、一見して出現したのが分かるものなのでしょうか? 旅先で遭遇すると「もともとこんな景色なんだ、ふーん」とスルーしちゃいそうですが……。
佐藤 かなり大規模に出る場合だと、肉眼でも分かり、まるで異世界のように見えるので、蜃気楼初心者で、かつ旅先であっても気付く方もいるかもしれません。
ミソノ まるで異世界! 遭遇してみたいです!
佐藤 しかしおっしゃる通り、普段見慣れていない景色の場合、ほとんど気付かれないことが多いと思います。なので、ひんぱんに観察できる地域では、あらかじめ見えることを宣伝するなど、普及活動が大事と言えます。
蜃気楼の魅力とは?
ミソノ 普段そこに暮らしているからこそ、吉兆のしるしに気付く……って何だかいいですね。こまめに観察していらっしゃる様子が本からも伺えましたが、足しげく観察に向かわせる蜃気楼の魅力を教えてください。
佐藤 まだ解明されていない謎だらけなこと。幻想的な光景が現実に見られるところです。
ミソノ 古来から見られる現象だとおっしゃっていましたが、いまだに蜃気楼は不思議の塊なんですねぇ。写真を見ていると、実物を見に行ってみたくなります。現地で蜃気楼をたくさん見ていらっしゃる方々が、あえてこの同人誌を作ろうと思われたのはどうしてですか?
佐藤 北海道では蜃気楼が珍しくて面白い現象だと知られていないので、広く知って欲しいと思ったからです。
ミソノ えっ! 自然豊かだからこそメジャーにならなかった……のでしょうか? 確かに、知床で蜃気楼がひんぱんに観測されているという事を私も知りませんでした。知床で継続的に観察を続けていらっしゃる知床蜃気楼・幻氷研究会さんですが、何人くらいで活動されているんですか?
佐藤 10名くらいの方が観察に協力してくださっています。
ミソノ 実際に本作りに携わられたのは何人くらいですか?
佐藤 ほぼ二人で作りました。私が文章を書き、その他の作業をもう一人がやっています。
ミソノ お二人で! 本作りで印象に残ったことはありますか? 表紙もきらきらしていて、素敵です!
佐藤 キラキラコートはすごく悩みましたがやってみてよかったです!
ミソノ 蜃気楼の雰囲気と合っていますよね。また、かわいいイラストが現象を解説してくれて、蜃気楼に親しみやすかったです。そして、ページにどどん! といろいろな蜃気楼の写真がたくさん載っているのには驚きました。自然現象を写真に収めるのはなかなか大変ではないですか?
佐藤 最初は大変そうに思いましたが(特に氷点下での撮影など)、やってみると自然と触れられ、なかなか見られない光景に出会えるので楽しいです。
ミソノ 知床の冬は寒そうです……。その努力の結晶をこうして本で見ることができるんですねー! さて、これからはどういった活動をされる予定ですか?
佐藤 しばらくは、この本の販売促進活動をやります。来年は、一般の書籍にも私たちの蜃気楼の写真が掲載される予定です。いずれ道内のほかの地区でも写真展をしたり、他の地区のメンバーと交流してみたいと思っています。
ミソノ 「知床蜃気楼読本」は今のところ、知床の書店や博物館で取り扱いがあり、今後は通信販売も考えておられるとのこと! 知床の蜃気楼の魅力が、全国に広まっていくのが楽しみですね。知床蜃気楼・幻氷研究会の佐藤さま、ありがとうございました。
ミソノ流ワンポイント用語解説
『サークル名 Part2』
サークル名を付けるときは、「もしも自分のお店や、ブランドを持ったなら……?」と考えるとイメージしやすいかも! 幾つか候補を考えたら、ネットなどで同じサークル名が既に使われていないか、一度探して見るといいですよ。同じサークル名があっても、もちろん罰則はないですが、独自の名前の方が探してもらいやすいと思います。
かつて「海(カイ)くん」と「炎(エン)くん」という名前のキャラクターが出てくるロボットアニメが流行ったときのこと。海炎隊(カイエンタイ)というサークルさんが複数存在される事態が発生しました! 当日は迷わないように……ということなのか、同じサークル名さんがずらっと隣り続きに配置される珍しい光景になったことがありましたねー!
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