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伝説の漫画「MMR マガジンミステリー調査班」はこうして作られていた タナカ・イケダ・トマル隊員が語る「MMR」制作の裏側(前編)(3/3 ページ)

最新刊「新生MMR 迫りくる人類滅亡3大危機(トリプルクライシス)!!」発売を記念して、当時のMMR隊員たちに連載開始時から最新刊発売までの裏側を語ってもらいました。

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キバヤシとナワヤは現実でも名コンビ

―― 毎回の打ち合わせは、どんな感じでした?

イケダ 「MMR」の集中連載は年に3~4回でしたが、打ち合わせは何回もやって、長い時間をかけてましたね。キバヤシさんのころは1回の打ち合わせが7~8時間くらいかかりました。けど、僕の時代にはそんなに長くはないけれどほぼ毎週のペースでやっていまして。毎週そうやって情報を集めて、その中からどれを使うかと詰めていったので、すごく手間のかかる連載でした。

―― 打ち合わせは盛り上がりました?

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トマル はい、疲れましたけどね(笑)。毎回、5~6時間やってましたよね。前半2時間ぐらいはほとんど関係ないおしゃべりで。

タナカ それでみんなアイデアを出すんですけど、その飛躍の仕方が荒唐無稽で、みんなゲラゲラ笑いながらやってましたね。

―― そういう形で皆さんが集まってネームを作るのは、「マガジン」では一般的なやり方だったんですか?

タナカ もう昔のやり方ですね。企画ネタ物が多かったころには少なからずあったと思うんですけど。今はまずないかな。

―― 1人では出ない視点も生まれたりして、楽しかったと。

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トマル 漫画作りはどんな作品でも楽しいですけど、「MMR」は確かにそのとおりですね。僕がアマテラスで「MMR」を復活させたときは、本当に1人担当だったんです。元メンバーに相談はしましたが、やっぱり「MMR」ってみんなで作らないと面白くならないなと痛感しまして。キバヤシさんも交えて、みんなでワイワイ話している雰囲気にならないと、石垣さんと1対1でやると沈黙だけが続いちゃうので(笑)。

―― さっきの話にも出ましたが、初期はキバヤシさんが中心にいたんですね。

タナカ やっぱり頭の回転が早いし、このアイデアがダメだったら、じゃあこうしたらと代案も出せる。キバヤシとナワヤがちょうどいいコンビで、2人でいろいろと話し合いながら、これは面白くないなと言ったら「これはどうだ」という感じで。

―― 実際「MMR」でも、ナワヤさんがキバヤシさんに反論して、そこから話が転がっていってましたよね。

タナカ あそこまでムキになって反論するナワヤではなかったんですが、キバヤシが意見を言ったときには「違うだろう、こうしたらいいんじゃないの」というような立場ではありましたね。

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最初のうちはナワヤがキバヤシをリードする場面も(1巻135ページ)

あえて有名なスポットは外した取材先

―― 「MMR」は海外出張も多いですよね。

タナカ 僕はまったく行ってないのが悔しいんですよね。まあ、自分でミステリーな場所はいろいろ行きましたが。

イケダ 毎回メンバー全員では行ってないですね、さすがに。

―― 臨死体験の話からハワイの火山に飛んだ時は驚きましたが、編集長の許可が下りるのが凄いですよね。

イケダ ハワイは遊びに行きたいので行ったんだったかな(笑)。でも基本的に取材の必要性があれば、当時の編集部はNGを出さなかったですね。そこに行く理由があって、面白い漫画作りにつながるならばアリというのは、当時の五十嵐編集長の方針でもあったと思います。漫画のためになるなら、どこへでも行きなさいと。

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―― イースター島に行くための経費って半端じゃないですよね。

イケダ 私は他の仕事で行けなかったんですけど、いろんな情報を集めてもらう人に行ってもらいましたね。どうしても写真が必要だったので、借りるよりも行ったほうがいいだろうと。実際に行かないと分からない事実もあるし、面白いハプニングもある。それが編集部としてもOKだったのは非常にありがたかったですね。

実際に取材して作られたイースター島の遺跡地図(12巻26、27ページ)

―― その背景には「MMR」人気が高かった事情もあるんですかね。

トマル 「週刊少年マガジン」は90年代にはジャンプを抜かすぐらい勢いがあって、「MMR」の位置づけは雑誌の華だったんですね。単行本も売れてたんですが、連載をやるたびに必ず人気が上位に来て。当時の五十嵐さんは雑誌をいかに盛り上げていくかが最優先だったので、面白ければOKという感じがあったんですね。

―― 取材先を選ぶ基準は「話が膨らみそうな場所」だったんですか?

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イケダ 単純に考えると、遺跡で一番有名なのはエジプトのピラミッドですよね。でも、実は「MMR」は行ってないんですよね。そういう「いかにも行きそう」なところは外していたのが、いい目の付け所だったかな。旧ソ連の話でも、普通はあまり注目しない超常現象や、数十年前の超能力者の話を入れていくのが、担当していて面白かったなと。

―― ミステリー通の間で有名なスポットは避けたんですね。

イケダ そうしていたと思いますね。ピラミッドを扱うときも、あえてエジプトではなく(日本のピラミッドと呼ばれていた)黒又山にして(第11巻)。実際、そういうウワサがあったので。そういう意外性がある取材先を入れていくのが面白いなと思いました。

自動気功装置、そしてチャーリーは実在しなかった!?

―― 「MMR」の調査を壮大なストーリーにしているのが、石垣先生の画力ですよね。

タナカ コマ割りはこうしたほうがいいと打ち合わせはしたんですけど、絵に関してはそんなに言わなかったですね。原稿見たときには「うわ怖い!」という感じで。特にノストラダムスの絵には毎回、迫力満点で震撼しました。

―― 当時の先端の科学技術を分かりやすく絵にする説得力と、なんでもない出来事を陰謀に結びつけるファンタジーがありましたね。

イケダ 僕も知り合いによく言われたんですが、「胴が長い猫」(第3巻)がそうですね。あれは私が取材してる段階で、早稲田の近くで見たという友達がいて。それと「あちこちで意味不明の施設があるよね」という話をしていると、キバヤシさんが「早稲田に細菌研究所(漫画では遺伝子工学の研究所)があったらしいぜ」と言って。その2つを合わせた上で、ストーリーになったんですね。

―― 石垣さんの中で猫のイメージが広がったんですね。

イケダ はじめの石垣さんのネームは絵が入ってなかったんですよ。石垣さんは猫がお好きなんですが、コマだけあって、バーンと猫の字が入ってる。大したものじゃなかったんですけど、それが原稿になったとき、インパクトのある絵になっていて。石垣さんはそういうのが本当にすごくて、なんでもないエピソードを直感で拾ってさらに膨らませてくる。あんな風な猫だと話してないのに、車の下からダラ~ンと出てくるように描かれたのは、本当にすばらしいなと。

―― 冷静に考えると、猫を持ち上げると胴が伸びたりしますよね。

イケダ そんなオチになるとつまらないんだけど、そこを嗅覚で拾い上げてぎゅっと広げるセンスがすごかったなと。

インパクトありすぎな「長い猫」(3巻132ページ)

―― 例えばハイパークリスタル(自動的に気を集めて放出する自動気功装置。第7巻)も、現実にあったんですか?

イケダ これは気を集める「渦巻き理論」というのがあって、試してみたら、なんとなく本物っぽいけどやっぱりウソだなと。その一方で、よく雑誌の裏表紙に「私はこれで大金持ちになりました」という広告があって。そうか水晶には気を増幅する力があるんだということで、渦巻き論理と水晶を合体させてみました。

―― この造形って写真をトレースしたものにしか見えないんですが、実在した?

タナカ モノはないですね。石垣さんの想像力なんです。

―― 石垣さん、自動気功装置のメカデザインもされたんですか!

イケダ 僕らが適当なことを言うと、石垣さんが上手く返してきてすばらしい絵にしてくれて、急に説得力を持つんですね。打ち合わせの段階ではウソっぽかったのを、石垣さんがまじめに聞いて考えていただいて。石垣さんの画力は本当にズバ抜けて素晴らしかったですね。

写真をトレースしたようにしか見えない「ハイパークリスタル」(7巻68ページ)

―― 取材旅行は一緒に行ってないのに、事実を超えたイマジネーションを出されるという。

トマル 石垣さんはあっちこっち行ったりするのが、あんまり好きじゃないんですね。

―― メルマガでは、北海道に行く慰安旅行で、初めてご一緒したって書いてましたね。

イケダ けっこう誘ったんですけど、家に猫がいて、餌をあげないといけないから行けないとおっしゃっていて。それで北海道でも、環状列石(ストーンサークル)や、洞窟の中の壁画を観たり、取材らしきこともやったんですね。でも、どちらかと言うと夜においしいものを食べに行かれるほうに熱心でして。

―― 実在で気になるのが、イケダさんの友人で自称・海外隊員のチャーリーですよね。本当にいたんですか?

イケダ いませんね(笑)。

―― な、なんだってー!!!

後編に続きます)※3月11日掲載予定

(C)石垣ゆうき/講談社
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