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常に考えているのは「いかに気持ちよく悔しがらせるか」―― 打越鋼太郎×加藤隆生「脱出ゲーム」極限対談【PR】(3/4 ページ)

「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」発売記念、打越鋼太郎 × 加藤隆生 極限対談 「脱出×リアル脱出」編。

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悔しさは次につながるモチベーション

打越:
 加藤さんがリアル脱出ゲーム作りで心掛けていることってなんですか?

加藤:
 30項目くらいあって、どれが欠けても良いゲームにはならないと思ってます。全部を言う時間はないですが、僕が心掛けていて、普通のゲーム業界の方と違うかもしれないのは「いかに気持ちよく悔しがらせるか」ですね。「悔しさ」ってネガティブな印象があるかもしれませんが、実は次につながるモチベーションになるので。「上質の悔しさをどうやったらデザインできるのか?」みたいなことはずっと考えている気がします。「ここで失敗したら悔しいだろうな!」みたいな(笑)。

打越:
 ある公演で最後まで行ったのに、最後の爆弾が解除できなかったときは、まさしく「悔しいからもう1回!」でした(笑)。

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加藤:
 「これは出題が悪いんじゃなくて、自分のせいで失敗した」と思わせると、「悔しいからもう1回!」と考えていただけることが多いですね。逆に「こんなの解ける訳がない。理不尽だ!」と思わせてしまったらわれわれの負けですね。

―― デジタルのゲームは、多くのプレイヤーがクリアできる難易度が最適という印象なのですが、それと比べるとリアル脱出ゲームの脱出成功率はかなり低いですよね。その点はどうお考えでしょうか?

加藤:
 僕らの場合、脱出成功率は低くても、その公演の内容はエンディングも含めて全部お客さんに答え合わせでお伝えしているんですよ。ゲームの途中でも、明らかに謎解きのペースが遅いチームにはヒントを出すこともありますし。その上で成功か失敗かを決めているだけなので、脱出成功率が低くても不満の声はほとんどないんです。

打越:
 デジタルのゲームだと、難しくて途中でやめたらその先が見れずに終わってしまうので、やはり多くの人が最後まで進められる難易度にするのが主流です。

加藤:
 そうですよね。でも、「買った人の1割しかクリアできない脱出ゲーム」みたいな物を作ろうと思われたことはないんですか?

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打越:
 絶対に叩かれてしまうので、今は考えもしないですね。26歳くらいの若いころなら「絶対に解けないゲーム」や「ゲームオーバーになったら二度と起動できないゲーム」などを考えたことくらいはありますけど。ただ、コンシューマゲームだと、いろいろな事情でそれはできなかったと思います。

加藤:
 買ってきて5分でゲームオーバーになって二度と起動できなくなるのは、確かにダメな気がします。

打越:
 難易度の話だと、ウチのゲームは基本的に、僕を基準にして難易度を調整していますね。最新作では脱出ゲームパートを設計してるのは僕ではないので。僕が解けなかったら難しすぎるからヒントを増やすみたいな。

―― 物語の難易度についてはいかがですか? ほかのゲームと比べると、打越さんの作品は難解な印象なのですが。

打越:
 よく言われます。でもあまりやさし過ぎても面白くないですし、印象にも残らないと思うんですよ。難解な物語や設定を、遊んだ人が自分なりに考えて納得するところまで行くと、恐らく感動が生まれるんです。サラッと流せるくらい分かりやすい物語だと、その人の中もサラッと流れてしまうので。

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加藤:
 僕は「意味がある難しさ」と「意味のない難しさ」があると思っていて、「意味のない難しさ」は本当にクソですよ。作者の自己顕示欲を何で見せられなきゃいけないんだみたいな(笑)。

打越:
 加藤さんそういうの嫌いですよね(笑)。

加藤:
 大嫌いですね(笑)。だって難易度を下げることなんて簡単なはずなのに、それを難しいままにするなら、そこには何らかの強い理由がないとダメだと思います。その点、打越さんの作品は、難しい場所には難しい理由がしっかりと用意されているので。それに難しくて理解できない話題になっても、「今は理解できなくても、あとでまた解説してくれるだろう」みたいな安心感もあります。だから僕は打越さんの作品を難しいと思ったことは、実はあまりないですし、理不尽と思ったことは1度もないですね。

打越:
 「アイドルは100万回死ぬ」のデバッグ公演を見ていて、「初心者も長年遊んでいるベテランもいるから難易度調整が大変そう」と思ったんですよ。デジタルのゲームだと、プレイヤーの腕前に合わせて難易度を変更できるようにしておくこともできますが、リアル脱出ゲームだとそれはできないでしょうし。

加藤:
 もう、考えないことにしました(笑)。

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打越:
 そうなんですか(笑)。

加藤:
 以前はお客さんと一緒に僕らも成長していたので、あの手この手でヒドイ目に合わせて、這い上がってきた人たちにさらに難しい謎をぶつけるみたいなことをやっていたのですが、今は謎の難しさよりも最終的な満足度を重視しています。目標とする脱出成功率は今でも10%ですが、それは10%だと満足度が高い可能性があるから設定しているだけなので。もし脱出成功率90%でも満足度が非常に高くなるなら、そっちを選択するマインドに変わってきましたね。

 だから難易度の細かな調整よりも「物語世界を深く体験できるか」や「答えに気付いた時の驚き」などを優先して考えています。と言うか、そう考えざるを得ないですよ。8年前から付いてきてくれてるファンと、初参加の人に同じ謎を出したら、差が出て当たり前なので。もう1つの考え方としては、初心者の人が参加して失敗しても良い悔しさを与えられたなら、別の公演に挑戦してもらえるなと。それが普通のゲームで言うところの「コンティニュー」になるんですよ。

打越:
 ああ、納得しました。

加藤:
 そういう風に今は考えているので、「成功して面白かった、またやりたい!」でも「失敗して悔しいから、またやりたい!」でも正解だと思っています。それが難易度だけに依存しているとは思っていないですし、エンターテイメントとして提供する部分は初心者にもベテランにも同じであるべきですから。

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打越:
 「アイドルは100万回死ぬ」はまさにそれですよね。脱出成功率はほかの公演より高めですが、お客さんの満足度はすごく高いですし。

加藤:
 ホントそうですよね。

打越:
 謎解きの面白さだけじゃなくて、アイドルがかわいいというエンターテイメントも含まれているじゃないですか。アイドルを見に行くだけでもときめきますし、価値はありますよ。そこだけでも成立するクオリティですよね。

加藤:
 そこだけで成立するならアイドルのショーを見に行った方がいいんじゃないですか(笑)。

打越:
 それくらいクオリティが高いってことですよ(笑)。

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