人工知能学会、倫理指針を策定 「人類への貢献」「安全性」など全9条で研究者の職業倫理をあらためて表明
「当たり前のことをきちんと表明することこそが重要」とのコメントも。
人工知能学会倫理委員会が倫理指針の策定を発表し、全文を公開しました。主な内容は「人工知能学会は社会のために研究活動を行う」と、研究者としての職業倫理を示すもの。あらためて当然のことを表明することで、社会から理解と認識を得て対話の基盤とすることを目的としています。
序文では、人工知能は人類へ貢献すると期待される一方、「悪用や乱用により公共の利益を損なう可能性も否定できない」と負の面を提示。それをふまえて、研究者は人工知能が人間社会に有益なものとなるよう努力し、自らの良心と良識に従って倫理的に行動しなければならないとしています。
その価値判断の基礎となるよう定められた倫理指針は、全部で9条。「人類への貢献」「法規制の遵守」「安全性」など、人工知能の開発・運用に携わるうえで必要とされる、根本的な考え方が記されています。
第9条は「人工知能への倫理遵守の要請」。これは人工知能が研究者と同様、ほか8条を遵守できなければならないとするもの。松尾豊委員長は同条が、人々に「人工知能が倫理指針を遵守するってどういうこと?」などさまざまな疑問を投げかけ、それが社会全体における人工知能技術の理解を深めるのではないかとコメント。そこから「人工知能が社会のなかでどう扱われるべきか」といった議論を生み出すことが、第9条の主旨と述べています。
なお、この倫理指針はすぐに何らかの実効性を持つわけではなく、特定の論文や人工知能研究が指針に則っているか、チェックするような体制を作る意図はないとのこと。あくまでも大枠での合意を作り、議論ができる土壌とすることが目的です。今後は意見を募り、5月の人工知能学会全国大会で、あらためて倫理指針について議論することが予定されています。
(沓澤真二)
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