「なんだあの動きは?」「板岡錦だ!」 プリキュアがカッコよく動く、アニメーター板岡錦の世界:サラリーマン、プリキュアを語る(2/4 ページ)
板岡錦さん、初の作画監督、おめでとうございます。
キュアジェラート変身バンクのすごさ
この「キュアジェラートの変身」バンク、本当にすごいのです。
もちろん他のキャラの変身バンクもすごいのですが、個人的にはここまで「感情に訴えかける」変身シーンは初めて見ました。
どの構図がすごいとか、画の枚数が~とか、そういったテクニック的なことは言いません。
といいますか、自分はただのファンですから、そういったことは分かりません。
ただ、わずか1分10秒の変身バンクの間で「立神あおい」から「キュアジェラート」へ変わっていく「ストーリー」が超絶的な技法で描かれている、と僕は感じるのです。
キュアジェラートの変身バンクは、
「お嬢様」と「ロック」を、
「かわいい」と「カッコイイ」を、
「自由」と「情熱」を、
そして、「なぜ、立神あおいは、キュアジェラートになるのか?」
「立神あおいはどんなキャラで、キュアジェラートになると、どんなキャラになるのか?」を凝縮した1分10秒なのです。
キャラが良く動く
板岡さんの描くバンクシーンは、とにかく、よく動くのです。
しかも「カメラ」が動くのではなく、「キャラクター」が画面中を縦横無尽に動き回るのです。
変身シーンというと、「変身する箇所のアップでつないでいく」印象があるじゃないですか。
板岡さんの描かれる変身バンクは違うのです。
キャラが生き生きと、画面中を動き回り、躍動します。
変身バンク」で「キャラクターが180度回転する」ってすごいですよね。
「かわいい」と「カッコイイ」を両立
さらに、「かわいい」と「カッコイイ」を両立させる画の力がすごいのです。
立神あおいってどちらかというと、カッコイイキャラだと思うのですけど、変身シーンでときおり見せる「かわいい」しぐさと表情にドキっとさせられるのです。「カッコイイ!」と思ったら、次の瞬間「かわいい!」になり、と思いきや最後はまた「カッコイイ!」となるのです。
特に変身バンク中に描かれる「目」に力が宿っているのを感じるのです。目力がすごいのです。
アイデア満載の変身。
バレエっぽい動きから変身開始。
アイスクリームに包まれて、衣装を身にまとう。
ジャケットを羽織る姿。
片方のソックスを上げるシーン
ギターを弾きながらの名乗りシーン。
変身シーンの随所に、面白いアイデアがこれでもか、とばかりにちりばめられています。
特に、しゃがんでソックスの片方を上げるシーンは女児向けアニメとは思えない大胆な構図なのです。
締めは、メロイックサインですしね。
変身シーンにストーリーがある。
バレエで始まった変身シーンが、「自由」と「情熱」を混ぜ合わせ、躍動、跳躍し、ロックで完成する。
これは自分の想像ですけど、
お嬢様が、その抑圧された感情を最大限解放し、プリキュアになる。
そんなストーリーを連想せずにはいられません。
素人がバンク演出とか語っても陳腐になるだけなのですが、とにかく「画面から伝わってくる熱量」がとんでもなく高く、「たのしい、かわいい、カッコイイを子どもたちに届けよう」という思いの力を感じます。
自分は、プリキュアの変身バンクは例年、リピートして何回も見るのですけど、「キラキラ☆プリキュアアラモード」で最も見たのは間違いなく「キュアジェラート変身バンク」でした。
女児向けアニメ「だからこそ」、丁寧なお仕事をされているのが画面の端々から伝わってきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.