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悲劇の巡洋艦「ジュノー」、就役後1年しないうちに沈んでしまったそれは不幸な軍艦キャプテンながはまのマニアックすぎるシリーズ

ポール・アレンさんがまた海底で発見、「ジュノー」はどんな軍艦だったのでしょう。【修正】

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 海底に沈んだ軍艦を次々に発見しているマイクロソフト共同創業者のポール・アレンさん。珊瑚海に沈んだ「レキシントン」(関連記事)を見つけたそのすぐ後に、今度はソロモン諸島にあるガダルカナル島の北岸沖、正確にはインディスペンスセイブル海峡の深さ約4200メートルに沈んでいた米海軍巡洋艦「ジュノー(CL-52)」を2018年3月17日に発見しました。


12.7センチ両用砲を特盛しちゃったアトランタ級2番艦「ジュノー」。あまりに盛りすぎてひっくり返りやすかったので、後から作るアトランタ級は反省して“盛り”を減らしている

 ちなみにこの辺りは、日本の“提督さん”には「アイアンボトムサウンド:鉄底海峡」(関連記事)として知られている海域です。


筆者が持っているソロモン海域の一番詳しい地図で、アイアンボトムサウンド=インディスペンスセイブル海峡の位置を確認する

 アレンさんのチームが所有する調査船「Petrel」は、3月17日に潜水ドローンによるソナー探索で船体を確認し、翌3月18日に遠隔操作による潜水艇によって沈んでいるジュノーの撮影に成功しました。公式Webサイトで撮影したジュノーのスクリュー翼とそのシャフトの画像を公開しています。

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アレンさんのチームが公開したジュノーのスクリュー翼とそのシャフトの画像(出典:paulallen.com

就役後、1年しないうちに沈んでしまった「不幸な軍艦」

 ジュノーは米海軍の巡洋艦でした。日本ではあまり知られていませんが、米国では撃沈されたときに一緒に乗っていた“サリバン5人兄弟”が全員戦死した「太平洋戦争の悲劇」の話でよく知られています。その亡くなり方も「一緒にいた僚艦が生存者を見捨てて逃げ去ってしまって、8日間も漂流しているうちにサメにやられてしまった」と、すごくむごい……。ちなみにこのときの戦死者は683人。救助されたのはわずか10人でした。


サリバン5兄弟が全員戦死したニュースは全米に衝撃を与えた。なお、米海軍は「われわれは止めたけれど、サリバン兄弟は一緒の船に乗ることを強く希望した」などと弁明していたりする

 ジュノーはアトランタ級軽巡洋艦の2番艦。軽巡洋艦ですが、実際には「防空艦」的な性能でした。普通の米軽巡洋艦が15.5センチ主砲を搭載するところ、アトランタ級は「12.7センチ両用砲」という敵艦にも使える対空砲をもりもりっと搭載していました。飛行機を撃墜するのは得意。でも、夜戦の砲雷戦はちょっと下手。こんな艦でした。なお最新の研究では、射撃指揮装置の「Mk.37」は対水上砲撃において精度が低かったという見解があります。

 初陣の南太平洋海戦という空母同士の戦いでは、姉妹艦の「アトランタ」と一緒に来襲する日本軍の攻撃隊をバッタバッタと撃墜し、けっこう活躍しました。しかし、夜戦の砲雷戦となった第三次ソロモン海戦ではお姉さんのアトランタがボッコボコに破壊され、えい航後退中に沈没。ジュノーも海戦のさなかに魚雷1本を食らって後退中に日本の潜水艦「伊26」の雷撃を受け、この魚雷が命中したわずか20秒後に轟沈します。


南太平洋戦争で対空射撃中のジュノー。矢印は急降下爆撃を行う日本軍の九九式艦上爆撃機

 ちなみに伊26が狙っていたのは近くにいた大型の巡洋艦「サンフランシスコ」と「ヘレナ」だったのですが、ジュノーはその外れた1本が当たって轟沈してしまうのでした。就役後1年しないうちに沈んだこと、冒頭に紹介したサリバン5兄弟の悲劇も重なり、こう陰でいわれていたりもします。「不幸な軍艦だった」と……。

写真:Naval History and Heritage Command

【2018年4月3日 11時修正】:初出時、一部記述に誤認がありました。正しくは「就任後1年しないうちに」となります。お詫びして訂正いたします

長浜和也

 IT記者は仮の姿で本業は船長(自称)。小型帆船を三浦半島の先っちょに係留する“一人旅”セイラー。伊豆諸島を旅するため、学連経験やクルー修行をすっとばして、いきなり1級船舶免許を取得してヨットに乗りはじめて早20年。かつて船で使うデジタルガジェットを紹介する不定期連載も。

 →「海で使うIT」

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