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今のままではスケールしない──けもフレ・福原Pがジャストプロで仕掛ける理想のVTuberとは?(前編)(1/2 ページ)

まざまなコンテンツをヒットさせてきた福原氏が、なぜこのタイミングでVTuberに興味を持って、何をやろうとしているのか。

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 2017年末から急速に認知度を上げ、今や大きなブームとなっている「バーチャルYouTuber」(以下VTuber)。VTuberとして活動を行っている人はこの数カ月で爆発的に増加し、現在その数は1000以上とも言われています。

 また、3月16日発売の「キズナアイ 1st写真集 AI」のように、VTuberのグッズ販売も始まっており、コンテンツ業界としても彼女ら/彼らの活躍には注目が集まっているといえるでしょう。

 そんなVTuber界隈では、企業がプロデュースするキャラクターのキャスト、いわゆる「中の人」を公募するケースが増えています。

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 バーチャルライブアプリ「にじさんじ」の公式バーチャルライバーや、「東雲めぐ」「ロボ子さん」といった現在活動を行っているVTuberも、キャスト希望者のオーディションを行い、中の人を選定した例があります。

 さらにタレント事務所である「ジャストプロ」が、VR配信キャラクターのプロデュースを発表し、「中の人」として男性1人、女性1人を募集すると発表しました(関連記事)。このプロデュース企画では、「けものフレンズ」のアニメーションを制作したヤオヨロズ取締役、福原慶匡氏の参加表明でも話題になっています。

 過去には「てさぐれ!部活もの」シリーズや「みならいディーバ」といった、さまざまなコンテンツをヒットさせてきた福原氏が、なぜこのタイミングでVTuberに興味を持って、何をやろうとしているのか、気になる人も多いでしょう。ジャストプロの見野歩さんにも同席して頂き、インタビューを行いました(以下敬称略)。

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▲みならいディーバ(※生アニメ)制作記者会見。同作は2014年にNOTTV他で生放送したアニメーション番組。フルCGキャラクターの声を担当する声優に、モーションキャプチャーのセンサーを付け、動きまで演じながら生放送で進行するというアニメで、現在のVTuber向けシステムの源流の1つともいえる

さまざまな技術・文化がうまくハマって生まれたVTuber

──これまでプロデューサーとしていろいろな業界を渡り歩かれてきて、コンテンツ業界と深いつながりのある福原さんですが、そもそもVTuber界隈に興味を持ったきっかけはどういったことだったんでしょうか。

福原 もともと「みならいディーバ」という作品を2014年にやらせていただいたんですが、このアニメで使っていたリアルタイムCGアニメーションのシステムは当時最先端で、高額なため商業でしか使えないものでした。それから4年たって、今は廉価なものも出てきて、VTuberが作れるようになってきたのかということで興味を持ちました。

 「見習いディーバ」を覚えてくださっている方は意外にも多くて、大きく商業的にスケールはしませんでしたがインパクトは大きかったと思います。ああいう早すぎた作品が、今VTuberの流れの1つになっていっているのが面白そうだなと感じました。

 あと、今回は別に自分から言い出したわけではなく、周りの方から「プロデュースお願いできませんか」というお声が複数かかってというのもあります。僕は基本的にあんまり仕事を断らないので(笑)。自分の力でお役に立てるんだったら、ということで始めました。

──VTuber関連の話が福原さんに来るというのは、やっぱり「みならいディーバ」を期待しているからでしょうか?

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福原 そうですね。VTuberやっている方で「みならいディーバ」や「てさぐれ!部活もの」を参考にしてくれる方も多くて、ある意味では土台になっているとは思います。実際にVTuberを手がけている人や中の人からも、会ってお話したいという問い合わせもありました。

──リアルタイムアニメーションの可能性は、「みならいディーバ」の頃から感じていたのでしょうか?

福原 テクノロジー的にはそうですね。今回VTuberの人気が出たのは、恐らくYouTuberという文化や、配信プラットフォームなどのメディアが発達した方が影響していると思います。

 いわゆる生放送の魅力と、動画のような作品の魅力はかなり対極にあります。映像で何回も見るものは作り込むけど、一回しか見られないものは、そのときのタイミングや勢いでOKだったりするじゃないですか。

 僕らが「みならいディーバ」で思ったのは、生放送のアニメはやっぱりつくりこんでいないから番組であっても作品ではないということです。だから一緒に生を体験しているファンは楽しめるけど、追体験した人たちはリアルタイムよりは旨味が少ないという。

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 例えば、録画で野球のいち試合を全部を観るのって、ちょっと嫌ですよね。どうせ録画なら、スポーツニュースとかの編集したハイライトでいい。そのハイライトに当たる部分が、たぶんYouTubeの編集済みの動画っていうところだと思うんです。そんな生放送と作品の両方のいいところを出せるメディアが発達したのが、今のVTuberを押し上げることに影響していると思います。

──先ほども触れてましたが、YouTuberという職業が認知されて、ユーザー側としても日常ネタやゲーム実況などの面白さを理解しているという背景も大きいですよね。

福原 そうですね。あと「VRChat」やフリーのCGソフト「Miku Miku Dance」(MMD)のように素地になるようなメディア・文化も多く発達していて、そうした背景が全部ハマったって感じですよね。

新しくてよくわからないものを形にするのが自分の仕事

──福原さんがVRを体験したきっかけは何でしょうか?

福原 横浜にあるARライブの専門施設「DMM VR THEATER」に立ち上げ時からプロデュサーとして関わっていることもあって、VRに触れ合うことは多いです。当然VRにすごく詳しいスタッフがいますので、常に情報はあふれかえっています。

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▲「DMM VR THEATER」

──過去のインタビューを拝見したところ、福原さんはプロデューサーとして適任な人を集めてきて、その才能を引き出して作品に昇華するということを多くのジャンルでやられてきた方なのだと感じました。今、VTuberに注目したのも、何かクリエイターきっかけでいいコンテンツができるという確信があったからでしょうか?

福原 どうだろう……。単純にVRは新しいジャンルで、今すごく混沌としているじゃないですか。本当に群雄割拠で、ツールの方もどんどん進歩していっている。反面、IP(intellectual property:知的財産)も自分でつくらなきゃ、自由に現場で取りまわして実験もできないですよね。

 システム系から来ている人はIPの育て方が分からないし、逆にIPから来た人はシステムがわからないという感じで、そこの歯車がかみ合っていないように思いますね。IPの立場の僕からすると、「現状のやり方だと最後スケールしないな」と感じます。

 IP側の人は、作品と思ってアプローチしてつくり込みたいので、システムライクなものづくりを嫌う傾向があります。だからスピード重視で立ち上げて、失敗したら「ごめんね!また改良するわ」というシステム系の企業の文化に慣れてないところも多い。だから今、VRは文化をまたいでものつくらなければいけない状況になっていると思います。

 実際、自分でDMM VR THEATERとかやっていても、日本にVRシアターは横浜にしかないですし、VRゴーグルも例えばスマートフォンと比較すれば全然普及していない。そもそもVRは体験してみないと楽しさが分からないのもネックです。

 つまりビジネスとしては成り立ちづらい部分がある。でも「コンテンツとして面白い」とは思いつつも、なんかみんなしっくり来てない今の業界が、変な感覚かもしれませんが楽しそうだなっていう……。僕は大体、ぐちゃぐちゃってした現場ばっかり突っ込まれるんで(笑)。

──突っ込まれるというか、自分で突っ込んでいるようにも見えます(笑)。

福原 まあ、その方が僕としては仕事しやすいです。映像の仕事も、完全に亜流のところから始めました。本当に素晴らしいものを、すごい時間と予算をかけて完成させるという仕事は、亜流の僕には基本的に回ってこないんです。

 そんな「新しくてわけわかんないもの」を形に整えていくことが、僕個人に求められていることなので、VRとの相性はいいなと思います。今のVTuberが、クリエイティブなのかタレントビジネスなのかというと、僕もちょっと判断できないのですが、でも面白いなとは思ってます。

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