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ここまでスゲー船だったのか 提督胸熱、ポール・アレンさんの潜水艦隊「RV Petrelとその仲間たち」キャプテンながはまのマニアックすぎるシリーズ(1/2 ページ)

太平洋戦争で沈んだ軍艦を探させたら世界一と言っちゃっていい超スゲー人たち。ちなみにPetrelとは「フルマカモメ」って意味です。(画像26枚)

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 太平洋戦争で沈んだ軍艦を探させたら世界一と言っちゃっていい「ポールアレンさんとその仲間たち」(関連記事)。“提督”の皆さんも、そうではないけれど軍艦好き、深海好き、船好きの皆さんも、その動向、そして「さらなる発見」に期待していることでしょう。


ポール・アレンさんの調査船「RV Petrel」(出典:PV Petrel/Facebookページ

 この「発見」の報告で目にするのが「RV Petrel」という名前です。RV Petrelは、アレンさんが率いる沈船捜索チームの名称と紹介されることも多いようですが、正しくはチームが所有する海洋調査船(Research/Survey Vessel)を意味する略号「RV」と、「Petrel」という船名を組み合わせた名称です。航空母艦のレキシントン(関連記事)を「CV Lexington」を表記するのと同じです。今回はこのRV Petrelを含めたポールアレンさんとその仲間たちの「って何?」と「スゲーところ」を紹介します。

「RV Petrel」とは

 RV Petrelは英国を船籍国とし、マン島にあるダグラス港を母港としています。登録簿における全長は76.45メートル、船幅は15.05メートルと、安定した状態が求められる海洋調査船ならではの「ややずんぐり太め」の船型です。船内総容積を示す総トン数は3371トン、安全に航海できる範囲で荷物をどれだけ載せることができるのかを示す載貨重量トン数は1506トンに達します。

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 就役は2003年。洋上プラントの建設や海中作業を手掛ける企業「Subsea7」が建造した海洋調査兼小規模建設作業船「Seven Petrel」として誕生しました(船名は他に「Seaway Petrel」「Acergy Petrel」の時期もある)。


最初の所有者であるSubsea7による、Seven Petrel当時の姿。前甲板のヘリポートと砕氷船を思わせるオレンジの船体が特徴だった

 就役当時の仕様では、50平方メートルの作業甲板に荷重20トン(実用引き上げ荷重は10~13トン)まで対応するクレーンを搭載しています。また前甲板には、19.6メートル四方で耐久重量が9.3トンまでのヘリ用飛行甲板を備えます。主機関に三菱重工製のディーゼルエンジン「S16R-MPTK」を4基搭載し、出力は6760キロワット。船速11.5ノットで巡航できる性能を持ちます。642立方メートルの燃料タンク、350立方メートルの清水タンク、1006立方メートルのバラストタンクを備え、乗員数55人、最大で67日の航海が可能でした。


Petrelの2軸スクリューと左右両舷にある舵が見える(出典:PV Petrel/Facebookページ

 さらに新造時点で、遠隔操作できる無人の潜水艇「ROV(Remotely Operated Vehicle)」1基を搭載して運用整備できる施設も備えています。船に装備した差分GPSやスラスターなどを活用して自船の位置を自動で保持する「ダイナミックポジショニング(DP)システム」も新造時から導入していたハイテク船だったのですね。

 アレンさんは2016年にSubsea7からPetrelを買い取ります。そして、大深度6000メートルの調査にも対応できるように大規模な改装を施します。例えば、深海探査に対応できる「新型の無人潜航艇を4隻搭載」して、併せてその整備と制御をするスペースを新設。調査、発見した画像などの解析機器とその施設のためのスペースも設けました。その分、乗員定数は以前の55人から30人(船員20人に調査員10人)に減らしています。

 PetrelのFacebookページにある船の写真を2014年に撮影されたSeven Petrelの写真と見比べてみましょう。船体が黒く塗られた以外に特に大きな変化はありません。船体後部の作業甲板に設置したクレーン、右舷船体中央に設けたROVを着水揚収する開口部、デリックの形状、左舷に寄せて設けた煙突(ディーゼルエンジンなので正確には排気管集合塔)などがあります。ただし新造時に撮影されたSubsea7のカタログ写真と見比べると、マストのアンテナドームが大きくなり、ブリッジの両舷と前方にもアンテナドームを増設しています。ちなみにマストに挙げている「球形」「ひし形」「球形」の黒色形象物は「操縦性能制限船」であることを示しています。

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現在のPetrel(出典:PV Petrel/Facebookページ

後部作業甲板。船籍港は英国マン島にあるダグラス港。Seven Petrel時代にはルクセンブルグ船籍だったこともある(出典:PV Petrel/Facebookページ

上空から見たPetrel。前甲板のヘリポートと後部の作業甲板、右舷中央で開いている艦載潜水艇出し入れ口に注意(出典:PV Petrel/Facebookページ

ROV「Argus 6000」とAUV「Remus 6000」に迫る

 アレンさんのチームによる改装で最も大きく変わったのが、搭載する「無人潜航艇」に関するところです。搭載する隻数もそれまでの1隻から4隻と大幅に増やしただけでなく、その機種にも最新モデルを用意して、水深6000メートルの大深度探査を可能にしました。新造時に搭載していたのはROVの「Solo 2」というモデルのみでしたが、改装後は最新型ROVである「Argus 6000」に加えて、AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律潜水航行が可能な無人潜水艇)の「Remus 6000」も搭載します。

 Argus 6000は、正式名称は「Argus Worker」といいます。標準スペックでは水深3000メートルまでですが、メーカーのArgusが用意する“オプション”を装備するとさらに深い「水深7000メートル」まで潜れるようになります。全長2.5メートル、幅1.6メートル、高さ1.7メートル。重さ3トンの船体に250キロまでの観測機器を搭載できます。マニピュレーター(遠隔操作できるマジックハンドのような船外アーム)は7軸稼働タイプと5軸稼働タイプを船首両舷に1基ずつ備え、1080p HDTVをはじめとする高画質カメラを4台搭載。130ワットのLED型照明を6基で深海を照らします。


アレンさんの大改装で搭載できるようになったROV「Argus 6000」

船内に搭載するArgus 6000のコントロールユニット。20フィートコンテナサイズにセットされたエリアで操船席2つやマルチディスプレイコンソールを備えている

スゲーなこの「秘密基地」感! アレンさんの大改装で新設した潜航調査司令室(出典:PV Petrel/Facebookページ

潜航調査司令室は20フィートサイズコンテナに操船席2つやマルチディスプレイコンソールを備えている(出典:PV Petrel/Facebookページ

こちらは大改装前「Seven Petrel」時代の潜航調査司令室(出典:PV Petrel/Facebookページ

Petrelからクレーンで着水中のArgus 6000(出典:PV Petrel/Facebookページ

 さて、Argus 6000はPetrelとワイヤーでつないだ状態で潜航するのに対して、AUVの「Remus 6000」は事前にプロットした航路に沿って自律して針路を維持変更しながら潜航します。その姿は「ちょっと太めの魚雷」のようですね。全長3.96メートル、直径71センチ、重さは862キロ。最大4.5ノットの船速で、連続航行時間は約22時間。潜航中の自船位置は慣性航法システムとソナーを母船に向けて発振して得られる音響情報を活用して把握します。


AUV「Remus 6000」(出典:KONGSBERG、以下同)

こちらもAUV「Remus 6000」

お仕事中の「Remus 6000」

こんな感じで垂直姿勢で着水させる

こちらは揚収中。1点フックで吊上げ可能

構成図。船上制御システムは1台のノートPCで済む

Petrelから出港せんとする「Remus 6000」(出典:PV Petrel/Facebookページ

レキシントンを見つけた「発見章」を貼ったRemus 6000(出典:PV Petrel/Facebookページ
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