創元推理文庫に「FGO帯」が登場! 企画のワケを東京創元社に聞いてみた(1/2 ページ)
「FGOファンへのオススメ本」も聞いてきました!
東京創元社の創元推理文庫6作品に、スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order(FGO)」のキャラクターの帯が付いて登場します。対象となるのは『シャーロック・ホームズの冒険』『ジキル博士とハイド氏』『オペラ座の怪人』『吸血鬼カーミラ』『吸血鬼ドラキュラ』『フランケンシュタイン』。英霊たちの「過去」をじっくり楽しめそうなラインアップです。
FGOは、累計1300万ダウンロード突破のスマホゲーム。伝説、神話、歴史上の古今東西の偉人たちとともに世界を駆け巡る物語です。FGOを巡っては、お気に入りキャラクターをより深く理解するためにファンが関連書籍を購入するケースがあることから、歴史書や人文書を扱う出版社で突然本の売れ行きが伸びる「FGO効果」もあると言われています。
東京創元社が作成したFGOキャラクター帯は、どのような経緯で生まれたのか。東京創元社にも「FGO効果」はあったのか? 東京創元社の営業担当者に話を聞きました。
英霊たちの「キャラ帯」が生まれるまで
――今回の帯が生まれるまでの経緯はどのようなものでしょうか。
半年以上前になりますが、会議が終わったあとに編集部員と雑談をしていて、当社でもお付き合いのある若い作家さんたち何人かの間でFGOが流行っている、という話になりました。FGOが若い方に絶大な支持を集めているスマートフォンゲームであることはもちろん、かねて紀伊國屋書店新宿本店さんがゲームに登場する偉人にまつわる関連書籍のフェアを開催されていて、それがとても好評だったことは営業部でも話題になっておりました。
FGOがきっかけとなって、キャラクターに興味を持ってくださった方に原典となる作品を届けられるのではないか、そして原典に触れることでキャラクターへの理解も深まり、プレイヤーの方々のなかでFGOの世界観がより豊かなものになるのでは――と思い、TYPE-MOONさんに企画を持ち込ませていただきました。
――これまで、東京創元社さんの本の売れ行きが「FGO」の効果で伸びたことなどはあったでしょうか。
2年ほど前に紀伊国屋書店新宿本店さんで独自に展開されたFGOのフェアでは『吸血鬼カーミラ』など、弊社の書籍も展開していただきました。その際に追加発注もいただき、FGOプレイヤーの方の原典への興味の強さを感じました。他にも、ホームズが活躍したシナリオでは、ホームズ作品だけでなく、古典翻訳ミステリの売れ行きが伸びました。シナリオの内容に触れるので詳しくはご紹介できませんが、翻訳ミステリで有名な探偵が多数登場しており、興味を持ってくれた方々が手を伸ばしてくれたのではと考えております。
――今回の本のセレクトについて、こだわりやオススメのポイントを教えていただけますでしょうか。
FGOには神話の英雄から歴史上の偉人まで数多くの英霊が登場していますが、そのなかでも英霊そのものの原典にあたる作品、または歴史上の偉人がモデルとなっている作品をセレクトしました。
シャーロック・ホームズをはじめ、『フランケンシュタイン』や『ジキル博士とハイド氏』など、ほかの出版社さんでも異なる翻訳・装幀でいくつもの版が刊行されていますが、今回フェアの対象となる6冊が同一の文庫で刊行されているのは、おそらく東京創元社だけではないでしょうか。こだわり……と言えるか分かりませんが、それはちょっとした自慢です!
例えば『吸血鬼ドラキュラ』『吸血鬼カーミラ』は英国怪奇文学の翻訳で著名な平井呈一さんの格調高い訳文で、一方『シャーロック・ホームズの冒険』をはじめとするシリーズは名翻訳家である深町眞理子さんの新訳でお楽しみいただけます。歴史的名訳はそのままに、現代の読者にも届けたい作品は清新な翻訳に。ほかの出版社さんで原典をお読みの方々にも、きっと新たな気持ちで楽しんでいただけるかと思います。
――ちなみに、担当者さんは「FGOの魅力」はどのようなものだと感じていますか?
あくまで私見となりますが、英霊たちが聖杯を巡り時代や場所を越えて戦いを繰り広げるFateシリーズは、神話や歴史上の英霊だけでなく近代以降に生まれた空想のキャラクターも登場して物語が紡がれていく、歴史と虚構の交差する点が魅力の1つと存じております。
その中でもFGOは、各章が時代も場所もさまざまな「特異点」が舞台となり、物語でもその時代、その場所に関わる英霊たちに焦点が合わされていて、彼らの人物像や背景がより掘り下げられているように思います。
史実や原典が丁寧に織り込まれたFGOの物語は、原典を知っている方々にも好評のように見受けられます。プレイヤーが物語の外にも広がっていく世界に興味を持って触れていくことで、ひとりひとりの中で物語が更に豊饒なものとなっていく点も魅力と呼べるのではないでないでしょうか。
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