同人と商業の「決定的な違い」とは? ついに完結『クズの本懐』横槍メンゴが大事にする”コミュニケーション”(2/3 ページ)
「クズの本懐 デコール」の秘話も聞きました。
アニメ化で分かった「自分の作品の魅力」
有田: 『クズの本懐』のすごさと新しさって、「青年漫画だけど青年漫画じゃない」「少女漫画だけど少女漫画じゃない」ところ。どちらからも半歩ずつ外れているんですよね。だからこそ男女ともに人気がある。
メンゴ: 変な漫画だなって、自分でも思います(笑)。「ストーリーがないじゃん」と言う読者さんもいました。
有田: 分かりやすいライバルが出てくるわけじゃないし、大きな事件が起こるわけでもない。ただ、ものすごく近いカメラで、高出力で感情を描いているんですよね。そして女の子がものすごくかわいい。
メンゴ: 私はりぼんとなかよしを愛読している「なかよし&りぼんっ子」だったんです。子どもの頃から「この世で一番かわいい絵を描きたい」と思っていました。そこは今でも変わっていないかもしれません。
有田: メンゴ先生の絵って、“主観的なかわいさ”なんですよ! 「好きな子ってこう見えるよな~」というかわいさ。花火がキラキラかわいく見えるのは、えっちゃんが花火を好きだからなんです!(熱弁) よくグラビアのカメラマンさんは「撮影相手に恋をして撮る」というような話を聞きますが、そういう「恋をしている視線」でキャラを見ている絵ですよね。「どうだ、俺の彼女はかわいいだろ?」という気持ちがバリバリ伝わってきます。
メンゴ: 女の子がみんなかわいく見えるんですよね。特に「かわいくなろう!」と思ってがんばっている女の子がかわいい。あと、男の子に興奮している女の子を見るのも好きですね。逆に男の子キャラは、女の子に比べて興味がないかもしれない……。でも今思うと、「一番かわいい絵」ってものすごく難しくてライバルが多いんですよ。そこをデビューしてから気付いたのは運がよかったです。デビュー前に気づいていたら、挫折していたかもしれません(笑)。
――そこはメンゴ先生の「やりたいこと」と「読者が求めているもの」が完全一致している部分ですね……! 女の子のかわいさやストーリーの毒っぽさのほかにも、作品に流れている「空気感」が支持されているように思います。
メンゴ: 空気感については、実は自分では全然感じられなくて……。そもそもできあがった作品を客観的に読めないので、分からなかったんですよ。でもアニメを見て「これか!」と、みなさんが言ってくださっている意味が初めてちょっと分かりました。
有田: アニメは、空気感や光の感じが、まさにメンゴ先生の作品そのもので、ファンとして非常にびっくりしました。特報の時点で「すごい!」と思いましたが、1話全部がそうでしたよね。
メンゴ: 本当に不満が1個もないアニメ化でした。最初は「自分の脳内の世界を、他人がくんでくれるはずがない」と思っていたところもありましたし、私の絵はアニメの絵にしにくいのでは……と心配していたのですが、いざ企画が進んでいったら、「(そんなことを思って)すみませんでした……!」と謝るくらいのものが作っていただきました。
たぶん、監督と感性が近かったんだと思うんです。大好きな『HUNTER×HUNTER』で例えさせてもらうと、ゴンとキルアがすごい能力者をオーラで分かるじゃないですか。それと同じで、心から好きなものは言葉で何が好きなのか言えないけれど、創作物に流れる空気で分かりあえるのだと思います。まとっているオーラというか、念というか(笑)。そこが通じ合っているからこそ、目に見えない部分を吸い上げて落とし込んでいただけたと思っています。自分の漫画を読むよりも自分の作品を客観視できるような、すごく不思議な感じでした。
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