死ねないばかりにいけにえに――悲しい業を背負った不死者の物語「人柱案山子」が恐ろしくも引き込まれる(3/3 ページ)
生きながらカカシとして神に捧げられた不死者は、数百年間で何を思ったか。
「山は見飽きたんだ」と、ホタルは海岸へ。広大な海を見て思いをふけらせたのもつかの間、押し寄せた住民に「お戻りください」と引き留められます。
するとホタルは海を背に、「我、人柱案山子成」と絶叫。怯えた猟師の弾丸に手足を吹き飛ばされながらもすぐさま再生し、話を続けます。「私は数百年この土地を見守り続けてきた。私は数百年の役目を果たした。神は満足なされた。神はもうお怒りでない。今後、カカシの必要なし! 私はいましめを解かれた」――その言葉にはうそも交じっていますが、長年の思索を経て解放された末に導き出された、ホタルなりの真実かもしれません。
「海へ、かえる」と言い残し、水中へ姿を消すホタル。あっけにとられていた住民たちは、やがて「神様はもうお怒りでない」「何も心配はいらない」と納得し、先刻の暴言も忘れてカカシ様へ感謝の言葉を贈るのでした。
そして時は流れ、ハルは義足に支えられながら大きく成長。「めでたしめでたし、じゃねえんだよ」「俺が事故に遭わなけりゃ、アンタはのんびりカカシでいられたのかな」と、ふとホタルの思い出を振り返っています。
そんな考え事をしながら歩いていたそのとき、左足が通りすがりの紳士と接触してしまいました。義足を傷つけたのではと謝る彼の顔は、なぜかホタルと瓜二つ。人混みへ消えるように去っていく姿を見て、ハルは「タフだなあ」とつぶやくのでした。もしかしたらホタルは、全てから解放されて永遠の時を自由に過ごしているのかもしれません。
「号泣した」「世界観に釘付け」「自分の中で初めての感情が生まれて言葉にできない」と、漫画には大絶賛の声が寄せられました。含蓄のある物語に考えさせられた人も多く、「数百年村を守ってきたホタルが去ったときの、住民達の言い草が心に来た」「ハルが音読した人魚姫が、のちにホタルがハルを救う場面と重なって見えてグッと来た」といった、踏み込んだ感想も。「数百年、カカシに縛られ続けてた村人も、ようやくカカシから開放されたのかな」と、物語の根幹を表すような指摘も見られます。
(沓澤真二)
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