ニュース

「仲良くなりたい」思いが交差を続ける―― 陰キャとギャルのすれ違い百合漫画『ふたりモノローグ』レビュー

みかげとひなたの告白の行方は――。

advertisement
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 2018年12月1日。「サイコミ」で配信されていたWebマンガ『ふたりモノローグ』が完結を迎えた。2016年10月の連載開始から2年余りで、きっちり全100話。内容も話数もきれいな幕引きである。

 小学生時代に親友だったふたりの少女、麻績村ひなたと御厨みかげ。彼女たちは過去にある行き違いから離れ離れになった間柄なのだが、高校に上がったおり、偶然にも同じクラスになっていた。ひなたは、ある日「あっ」と気付く。隣の席に座る、いかにも不良なおっかないギャル。彼女は10年前に仲良しだった「みかげちゃん」ではないか!

 いったい今までどうしていたのか。聞きたい。お話をして、また仲良くなりたい……が、いまや自分はすっかり腰の引けたネクラな女の子になってしまった。かつて、ふたりが疎遠になるきっかけを作ってしまったのは自分だ。まだ怒っているのでは? 絡まれてキレられたらどうしよう!? でも……。

advertisement

 一方、みかげはひなたが思いもよらない内心を渦巻かせていた。「ひなたちゃん」がついに自分のことを思い出した様子。気づいてもらえてうれしい! 自分たちは特別な関係、一生の親友だ。ある事情から離れてしまったが、自分は彼女を守れるかっこいいクール女子になるべく10年ずっと努力してきた。落ち着け、落ち着いて声をかけるのだ……!

 かくして、陰キャだが意外と芯の強い少女と、見た目派手だが意外にネガティブで弱心臓なギャルが、仲良くなりたい気持ちは同じなのにそれぞれの性格のためにズレた思考にからめとられ、それでもなんとかかんとか距離を縮めていく怒涛(どとう)のコミュニケーション&ディスコミュニケーション物語が幕を開ける。

 見どころは地味っ子ひなたがみかげ視点では超絶かわいい天使めいた美少女と認識されている情景。ひなたの一挙手一投足に尊さを感じてはみかげがいちいち死にかける極大リアクションに大笑いさせられる。

 「食べてしまいたいくらいかわいい」という強烈な衝動にかられたみかげが顔面をモンスター化させてひなたをおびえさせる図がちょくちょくあって面白すぎるのだが、そこでみかげの怪物ヅラがイメージ演出と思いきやどうも本当に物理的な変化を起こしているのでは……? と思えるところに注目したい。

 後になって登場する、ドロドロの破滅的メロドラマ思考の権化・サロマちゃんがドス黒い泥のような影に全身まみれる姿もふくめ、イメージと物理が判然とせず入り交じる絵面は本作の数ある持ち味のなかでもとりわけ“マンガらしいマンガ表現”である。

advertisement

 そのイメージと物理のミックスした表現がついにキャラクター個々の肉体レベルを超え、一つの空間を満たして概念バトルの場を形成するクライマックス(第98~99話)は、壮絶の一語。ぜひ見届けてほしい。

 また、キャラクターの心情を追う筋立ては最終回までに波乱があり、ふたりの関係は友人としての好意に加えてみかげがもともと抱えていた恋慕を軸にロマンス色を帯びていくことになる。

 (恋愛感情としての)片思いをこじらせるみかげがいつ告白にふみきるか……告白するとひなたに引かれて友情が破綻するのではないか……というスリルが長くストーリーの底に敷かれていたのが、ある時点で逆にひなたがみかげに“片思い”を芽生えさせ、ひなたのほうが告白の勇気をもてるかどうかに焦点がスライドする転換は鮮やかで、そうくるかー! と感心に包まれる。

 ラブコメ作品全般でしばしば、最初は主人公が高根の花に憧れていたのが、途中で相手が主人公にほれて、逆にそちら視点で主人公の方が憧れの対象として追いかけられるようになる“折り返し”の展開がみられる。『ふたりモノローグ』後半は、そういう折り返しのひじょうに見事な例として今後長らく記憶されるべきだろう。

 そして最後の最後、大団円のなかで念を押すように“気持ちは通じ合いつつ思考はズレ続ける”ふたりの姿は、『ふたりモノローグ』というタイトルに対しても、また人と人の歩み寄りを描く物語であることに対しても、とても誠実でグっとくる。

advertisement

 いやあ、ほんとうにいいマンガでした。

© COMICSPACE ALL RIGHTS RESERVED.

記事ランキング

  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  6. 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  7. 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  8. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. 藤本美貴、晩ご飯に手料理7品 多忙でも野菜とお肉たっぷりで反響 「お疲れ様です」「凄く親近感」【2024年の弁当・料理まとめ】
  10. 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」