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よしもとからの打診は「本気で世界を目指すからコンビを解散して」 芸人兼プロゲーマーから見た日本eスポーツ界(1/2 ページ)

YouTubeでも活躍中のプロゲーマー兼芸人。

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 芸能プロダクションの吉本興行がeスポーツ事業への本格参入を発表し、プロゲーマーチーム「よしもとゲーミング」が設立されたのは2018年3月7日のこと。日本のゲーミングチームは、その運営母体が小規模な企業であることも少なくなかったため、大手芸能プロダクションのeスポーツ事業参入は、ゲーマーコミュニティーの中でも大きなサプライズとなりました。

 その後、EVO2018でよしもとゲーミング所属の選手2人がベスト8入りするなど、設立1年ですでに日本eスポーツ界ではそれなりに実績を重ねたゲーミングチームという立ち場に。チームとしての規模も徐々に拡大しており、現在では実績のある多くのゲーマーがよしもとゲーミングに所属しています。しかし、2018年3月に記者会見で発表された最初の所属選手は3人。そしてその3人は、いずれもゲーマーとして優れた実力を誇る「芸人」でした。

 今も芸人として活動する一方、プロゲーマーとしての結果も求められるよしもとゲーミングのプロゲーマーはどのような生活を送っているのか――「よしもとゲーミング」に立ち上げ当初から所属し、FPSタイトル「コールオブデューティー」(CoD)のプロ選手としても活動する「Japanese小池」さんに“芸人兼プロゲーマー”の生活について聞いてみました。

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 なお、今回の取材は新宿区にある「よしもとゲーミング」のゲーミングルームでスタッフ同席のもと行いました。なかなかの広さ&アクセスの良さに加え、機材なども整っており設備投資にも力を入れている様子。「ゲームの世界で頂点を目指す」というよしもとゲーミングの意気込みを感じました。

機材もキッチリそろってました

「ゲーミングルーム」は新宿で広めの3LDK

――スーファミも64もある……。やはりゲーム関係の機材が充実していますね。あと、アルコールは禁止なんですね。

スタッフ:そうですね。ここでテレビの収録をしたりもしますよ。アルコールがダメなのは、まぁ「仕事場だから」という意味で。

禁酒のマークが複数貼られていた

――ソフトもeスポーツ関係のタイトルばかりかと思ったらそうでもないですね。「聖剣3」とか。

なかなか充実しているゲームソフトたち

スタッフ:今も別室でゲーム配信していますよ。見ていきます?

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Japanese小池(以下「小池」):僕らがやってる「ゲー人ギルド」というゲーム好き芸人のユニットの配信ですね。今日発売(※取材日は3月22日)の「SEKIRO」を寝ずにプレイしてます。

SEKIROはすでに中盤に差し掛かっていました。取材が「SEKIRO」発売日の夕方ごろだったと考えると、やはりゲームのうまさはかなりのものと思われます

――正直すこし散らかってるだろうと思っていましたが、若干の生活感があるものの基本的にはスッキリしていますね。テレビの収録をするなら当然かもしれませんが。 

スタッフ:「ストV」の選手が、他のプレイヤーを呼んで対戦会することもありますよ。仕事場ではありますが、部外者を入れてはいけないわけでもないので。

無造作に置かれていたRazerの高級コントローラー「Panthera」。レバーとボタンは換装済み?

――ちなみに家賃はいくらくらいになるんでしょうか。新宿区でこの広さですから月10万円や20万円ではないかと思いますが……。

スタッフ:具体的な金額は言えないですが、新宿区でそこそこの広さで3LDKと考えれば相場通りだと思います。さすがに10万円や20万円ではないですね。

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よしもとゲーミングからの打診は「本気で世界を目指すから、コンビを解散してくれ」

――ではそろそろ本題へ。まず、小池さんはよしもとゲーミングに入るとき、どういった形で打診されたのか伺いたいのですが。

小池:プロゲーマーになる前は、2年ぐらい「マケレレ」というコンビでやってたんですが、まず「ゲームの案件があるから」とよしもとから連絡があったんです。若手に案件の連絡がくることなんてめったにないですし、特に結果を残してない僕らのとこに案件のお話が来るなんて本来ありえないんですが、ゲームのユニットをやってるんで、そのときはそっちの関係でお話が来たのかな? と思ったんですよね。

 でも、その話が一切ゲームをやらない相方にも連絡が行っていたんです。「間違えて両方に送っちゃったのかな?」と思ったんですが、呼ばれたからにはバイト休んででも行かなきゃいけない。それで2人で行ってみたら、eスポーツ事業の人から「プロゲーマーにならないか」とお話されて……同時に「コンビを解散してほしい」という話が出たんですね。

――……え、解散?

小池:「よしもとは本気で世界を目指す。そのためにコンビを解散してゲームに集中してほしい。だから2人呼んだんだ」って。そこでいろいろお話を聞いてから「取りあえず2人で話し合ってくれ」と言われて、帰りによしもと本社の近くにあるサブウェイに行って、2人で「困ったね……」なんて。

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 よしもとゲーミングの担当の方もすごくいい人で熱意もある人でした。それに、もともと相方からは「今どきネタだけやって売れる奴なんてほとんどいないんだから、お前はゲームを続けて仕事につなげればいい。俺はネタのことをやるから」と言われていましたし、先輩のトータルテンボスの藤田さんからも「お前のゲームの実力があれば絶対にいつか仕事が来るから、続けていけ」とずーっと言われていたんです。

 相方はめちゃくちゃ良い奴で、話し合いのときに「藤田さんも仰ってるし、俺もそう思う。ゲームはお前のやりたかったことでもあるんだし、応援する。解散しよう」って言われて……それで解散を決めてプロゲーマーの件をお受けした形です。「まずはチームを作って、世界に行ってみせます」と。

Japanese小池さんが所属するCoDのチーム「Libalent Vertex」は、3月30日に行われた第2回「CWL日本代表決定戦」で優勝し、世界大会にも出場予定。「世界に行ってみせる」という宣言は現実となっている

――コンビを解散しろというのは残酷な告知ですね。

小池:いやー……まぁ「よしもとゲーミングが本気で世界を狙うならそう言うよね」とは思いました。ゲームだって甘い世界ではないですし、逆に本気で芸人で一番になりたかったらゲームも辞めなきゃいけなかったはずなんです。ただ、「今後プロゲーマー兼芸人として活躍してもらうことが、小池くんが芸人として売れる近道にもなると思っているし、その実力があるから声をかけた」とか言われて、それを聞いた相方も「それでお前が売れるんだったらしょうがない」と。

 ちなみに、その相方は「米谷」って奴なんですけど、コイツは絶対に売れますよ! 僕は「おばたのお兄さん」とか「レインボー」とかが同期なんですけど、相方はその中でも引けを取らないくらい面白い奴でしたから。

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――ベタ褒め……でも、相方さんすごくいい人ですね。

小池:相方とは養成所で知り合ったんですけど、その頃からすごい面白い奴だったんです。相方作るときって女性を口説くときとマジで一緒で、「はじめまして。友達から連絡先聞いたんだ。今度ご飯行かない?」って誘うとこから始まって、好きなタイプ聞くみたいに「ネタってどうやって作ってんの?」「なるほど、そういうタイプが好きなんだ」みたいな話をしながら遠回しに外堀を埋めていくんです。僕は3回目ぐらいの飲み会で「俺と……一本ネタやってみない?」と声かけた感じですね。「コンビ組まない?」の前にネタ誘うなんて、もう「付き合ってください」の前にホテル誘うのと変わんないですよ(笑)

――(笑)

小池:そこで「別にOKだよ」なのか、「いや、もう少しピンでやりたいから」と断られるのかわかんないんで告白と一緒です。僕らの場合はそこでお互い「……いいじゃん」となったんでそのままコンビ組みましたけど(笑)。

スタッフ:そういう感じでコンビを組んだという話はよく聞きますね。似たようなのだと、略奪愛とか……。

小池:気になってる奴が別のコンビ組んでるから奪っちゃうというパターンはありますね。なんだったら……ダブル不倫の可能性も全然ありますよ。

――なんですダブル不倫って(笑)

小池:「今のコンビを解散しようかと思ってるんだ」「こっちもコンビ解散しそうなんだよ」「お前ツッコミうまいから組まない?」「いいね、やろうよ」……みたいな(笑)。で、おのおのが「未来見えないから」とか適当な理由付けて解散して、3日後ぐらいにコンビ組んでるんですよ。やっぱ「別の奴とコンビ組みたいから」って解散を切り出すともめるんで……。

――なるほど。「お前浮気してたのか!?」みたいなことになるわけですね(笑)。

小池:そうですそうです。「ちょっと方向性合わないわ」っていう話をしとく必要があるんです。……あ、僕の場合は純愛でしたよ、先にホテル誘ってますけど(笑)。

――……なんかこれまでの話を聞くと、さっきまで相方さんをべた褒めしてたのは「別れたけどアイツはいい女だった」みたいなノリですね。

小池:あー……そうですね、同じですね(笑)。

「楽ではないけど生活できる金額」を月収で

――小池さんはもともとゲーマーだったんですよね?

小池:ここにあるゲームなんてほとんどやったことありますよ。「パワプロ」も、「シャイニングスコーピオン」も、「桃鉄」も、「ときメモ」も、「バイオ」シリーズも全部やってるし……マジでなんでもやってる自信がありますね。

ゲーミングルームには「NINTENDO64」やゲームボーイのソフト、ゲーム雑誌までそろっていた

 CoDは20歳くらいで始めて、最初の半年間は本当になんにもできなくて……キルデスレシオ(1ライフあたり何人を倒せたかを示す指標)が0.35とか。それでも友達とプレイするのが楽しくて続けていたら、世界98位の世界ランカーになってたんですよ。「俺ってこういうゲームで名前載ることあるんだ」と思って、そこでよりゲームが面白くなっていったんです。

――所属チームの「Libalent Vertex」ではリザーバー(控え)として選手をやりつつ、マネジャーとデータアナリストも兼務していると伺いました。「プロゲーマー」の中でも特殊なポジションかと思いますが、チーム内ではどういった役割を担っているのでしょうか。

小池:選手もやってますが、身の回りのことも含めてチームの世話はなんでもやってますよ。例えば大きい大会に出るためにモニターを持っていったり、食中毒になった人のために薬を買っていってあげたり、生活リズムの悪いやつのために睡眠薬を買っていったり。で、いざ着いてみたら俺のホテルはなかったりするんですけど……(笑)。よしもとはチームを勝たせるために僕をプロゲーマーにしたわけですから、そういうことをするのが僕の仕事だと思ってます。……ただ、コーチングはできないですね。

――コーチングはしないと……。それはなぜです?

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