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平成のプリキュアは、いかに“2度の危機”から復活したのか マクロ視点から振り返るサラリーマン、プリキュアを語る(4/5 ページ)

平成最後のプリキュア記事、気合入れて書いたら1万字を越えちゃいました。

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プリティーリズム~アイカツ!の脅威


プリティーリズム シリーズ3作品のキャラクター(Amazon.co.jpから)

 2009年~2012年(フレッシュプリキュア!~スマイルプリキュア!)の時期はプリキュアはさまざまなライバルコンテンツと争いながらも、バンダイが実施している「こどもアンケート」ではずっと3歳~5歳の女の子人気1位を獲得。「全国放送」の強みもあったとは思われますがアニメ制作会社、玩具メーカー、出版社、その他スポンサーの連携が取れ、まさにプリキュアは女の子むけコンテンツの黄金期を迎えていました。

 しかしそんな中、プリキュアはアニメでもなく、玩具でもない意外なところからライバルコンテンツの侵入を許してしまうのです。

 2010年に稼働を開始した女の子向けアーケードカードゲーム「プリティーリズム」。カードではなくハート形の宝石が出てくる斬新性、その楽曲の洗練さやゲームのクオリティーの高さなどから徐々に女の子に浸透し、2011年にアニメ「プリティーリズム オーロラドリーム」が放送開始した頃には、女の子の間で大人気コンテンツへとなっていました。そのブームはすさまじく、2012年の東京おもちゃショーのレポートでは、「東京おもちゃショー始まって以来の驚きの光景」として「プリティーリズム」の行列を報じています。

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 パブリックデーには、東京おもちゃショー始まって以来と思われる驚きの光景が見られた。両日とも会場前からオシャレな洋服に身を包んだJS(女子小学生)とその母親が大行列を作ったのだ。彼女たちの最大の目的はタカラトミーアーツの大人気筐体「プリティーリズム・ディアマイフューチャー」(中略)大会の整理券は初日400枚、2日目350枚が用意されたが両日ともに配布開始20分で終了し、行列したJS達の過半数が整理券を手にできない状況となった。(『月刊トイジャーナル』2012年7月号 P44)

 そんな「プリティーリズム」の大成功をみすみす見過ごすバンダイではありません。バンダイは「プリティーリズム」から遅れること1年6カ月、2012年10月に女の子向けカードゲーム「アイカツ!」を投入します。ゲームの稼働1週間前にはアニメの放送も開始。一気に巻き返しを図り、そのキャラクター造形や楽曲の良さから、子どもだけではなく大人も巻き込んで、一気に大人気コンテンツへとなりました(「アイカツおじさん」なる言葉ができたのがこの頃です)。

 しかし、その「アイカツ!」大ブームこそが同じバンダイの「プリキュア」をも苦しめることとなったのです。「アイカツ!」は小学生をメインターゲットとしていましたがブームの拡大につれ小学生低学年、未就学児にもその余波は広がり、プリキュアのターゲット層の一部が奪われてしまいます。それが2012年~2014年までのプリキュアの売り上げ低下の一要因となりました。


「アイカツ!」の大ブームがプリキュアを苦しめました(Amazon.co.jpから)

 IFを言ってもしょうがないのですがあのとき、「プリティーリズム」の大ヒットがなければ、「アイカツ!」は生まれることはなかったでしょうし、そうなるとプリキュアも今とは違った形になっていたものと思われます。「プリティーリズム」は今のプリキュアシリーズにも影響を与えているのです。

 そんな「アイカツ!」大ブームの真っ最中だったのが2013年「ドキドキ!プリキュア」でした。この年は電子玩具「アイカツフォンスマート」が女の子向けおもちゃの売り上げ年間1位になるなど、とにかく「アイカツ!」が強い年でした。

2014年「ハピネスチャージプリキュア!」


Amazon.co.jpから)

 2014年「ハピネスチャージプリキュア!」で、残念ながらプリキュア2度目の大きな落ち込みが訪れます。

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 しかし、その大きな要因は「外的な要因」が大きかったと自分は分析します。「ハピネスチャージプリキュア!」は内容的にも「恋愛要素」を取り入れ「世界中にプリキュアがいる」という設定が多くの女の子を夢中にし、KIDS視聴率も前年と同程度だったことを考えても、女の子の興味が離れていたというデータはみつかりません。

 それよりも前年からの「プリティーリズム」「アイカツ!」の小学生低学年への浸透に加え、「妖怪ウォッチ」の空前の大ブームが女の子の購買にまで影響を与えたこと、3月に公開されたディズニー映画「アナと雪の女王」の大ブームのトリプルパンチを見事にくらう形となり、関連商品の売り上げを大きく落とすこととなったものと思われます。

 妖怪ウォッチが男児だけではなく女児にも大人気になっている事で女児キャラクターにも影響が出始めており、プリキュアは昨年より数字を落としています。(『月刊トイジャーナル』2015年1月号 P28)

 秋の映画の興行収入は5億3000万円。前年の9億5000万円から大きく数字を落とす結果(昨対55.8%)となり、バンダイのトイホビー売り上げも2014年度は65億円と、前年の66.3%まで落ち込むこととなりました。

 (ちなみに「映画ハピネスチャージプリキュア!」の興行収入が半減した理由は別記事で書いています)

 ハピネスチャージが「妖怪ウォッチ」「アナと雪の女王」に取られていたことはバンダイ側からも言及されています。

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バンダイ:トイ戦略ゼネラルマネージャー渡辺伸吾氏
ガールズに関しては本当に反省すべき部分は多いと思っています。特に「プリキュア」は完全に「妖怪ウォッチ」と「アナと雪の女王」に取られた形です。(『月刊トイジャーナル』2015年2月号 P43)

 「ハピネスチャージプリキュア!」は決して内容的に問題があったのではなく、子どもの人気がなかったわけでもなく、「他の巨大なライバルコンテンツに予想外の大ブームが到来すると、その影響を一番に受けるのが、女の子向けNo.1コンテンツであるプリキュア」という事実が露呈したことに他なりません。そんなプリキュアシリーズは、次作から「コンセプトを明確にする」ことで売り上げを回復させていくのです。

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