「電気のない生活」をしてきた少年が原始時代にタイムスリップ サバイバル能力で“人類を救う”漫画が新感覚(1/4 ページ)
ジャンプ+で連載中の『アラタプライマル』を紹介します。
「人類を危機から救う方法は原始の時代にあります」――少年ジャンプ+で連載中の漫画『アラタプライマル』がじわじわと注目を集めています。
舞台は現代より少し先の2027年。快適に暮らせていた社会が、突如として全世界同時停電に見舞われると、さらに一部地域では街の一角ごと原始時代に強制的にタイムスリップしてしまいます。主人公の皆素新太(アラタ)はとある事情によりサバイバル能力に全振りした人物で、案の定タイムスリップに巻き込まれます。どうやらそれは“必然”だったとのこと……。原始時代のサバイバルにミステリー要素が加わった同作について、担当編集のコメント付きで紹介します。
担当編集プロフィール
籾山悠太(もみやま ゆうた)
週刊少年ジャンプ編集部→デジタル事業部→少年ジャンプ+
現在の担当作:『アラタプライマル』『星の王子さま 』『顔がこの世に向いてない。』『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』
主な担当サービス:「ジャンプルーキー!」「ジャンプPAINT」「マワシヨミ ジャンプ」「MANGA Plus by SHUEISHA」
タイトルの意味
『アラタプライマル』というタイトルは何を指しているのか。これは単純に主人公の名前“アラタ”と“プライマル(原始の)”が合体したもの。舞台となる原始時代はもちろん、いろいろな属性を取っ払った人間の本質、むき出しの何かを描くという思いを込めているそうです。
「作家さんの提案で決まりました!」(籾山さん)
『トリコ』で修行した原作者×『カラダ探し』の実力派漫画家
本作は原作を及川大輔さん、漫画を村瀬克俊さんが担当しています。及川さんはもともとおいかわ昇太郎名義で活動していて、村瀬さんが週刊少年ジャンプで連載中にアシスタントとして携わっていました。その後、『トリコ』(島袋光年)のアシスタントになり、同作終了後に『カラダ探し』(※村瀬さんの代表作。ジャンプ+初期作にして累計250万部超のヒット)を手伝っていたそうです。
「村瀬さんは非常に実力のある方で、次作もぜひお願いしたいと思っていました。打ち合わせの際、『原始時代のサバイバルものはどうか? 及川くんと話していたら面白くなりそう』と提案があり、詳しく聞く中でこちらが求めていた方向性とも一致しました」(籾山さん)
前作の『カラダ探し』は学校の怪談的な題材で大ブレイク。当時読んでいた読者で中学生だった人たちも現在は大学生になっています。新作ではそうした地続きのファンはもちろん、より広い層に届けたいとのこと。
「『カラダ探し』を超えるヒット作にしたいと考えています。前作に続いて読んでほしかったので、2019年1月25日に完結、2月8日新連載開始と、ほとんど間を空けず、同じ金曜日更新となりました。ちなみにジャンプ+の曜日は、『笑っていいとも!』が好きだったので、ああいう感じになればいいなと」(籾山さん)
原始時代の迫力ある生物たち
マンモスやスミロドン(サーベルタイガーの一種)……舞台が原始時代(紀元前4万年前)とあって、現代では絶滅した生物たちが暮らしています。これらが村瀬さんの画力を持ってすると、非常に迫力のある存在となるので、単純にドキドキします。古代生物ロマン! こうした時代や生物たちの考証は、及川さんがいろいろ調べているそうです。
「読んでみてリアリティを感じるかを意識しています。あまりに荒唐無稽な描写はしたくないけど、そもそも原始時代はわかっていないことも多いので、いい意味で『こうだったらより面白い』という部分は盛り込んでいく。漫画として面白い表現を目指しています」(籾山さん)
アラタの特異な主人公像
空気が読めない主人公というと、孫悟空、ヴァイオレット・エヴァーガーデンをはじめそれなりにいますが、アラタはそうした中でも最上位クラスの存在。“電気で動く物の動きを止めてしまう”という特殊体質により、山奥で電気を使わない生活をしてきたため、一緒に暮らしている父親以外とはまともな人間関係を築けていません。学校の生徒たちからは「電磁パルス人間」と疎まれ、実際にコミュニケーションは大の苦手という状態から、物語がスタートします。
「アラタがどう成長していくかという部分は楽しみにしてほしいです。『火ノ丸相撲』大相撲編みたいに最初に“何かすごいことをやる”と明示してから描くパターンもあるのですが、完全にどうなるかわからないパターンもあって、本作では後者の面白さを追求したい」(籾山さん)
優れたサバイバル能力
一方、山奥で暮らしていただけあって、動植物に対する豊富な知識をはじめ、火起こし・狩り・調理その他、大自然の中で生きていく能力がめちゃめちゃ鍛えられています。虫に襲われた人々を守るため、適切な場所でファイアスターターにより“最高の火”をつけたり(3話)、樹々を看板のように見分けたり(15話)、都会では生かせなかった本領を発揮するシーンはとてもかっこいいです。
「ファイアスターターでの火起こしは実際に取材でやってみました。けっこう難しくて、アラタはすごいなと思いました」(籾山さん)
張り巡らされたミステリー要素
冒頭に発生する世界大規模停電。実はこれはアラタの母親が14年前に残したメモに記されています。「停電はその後に起きる人類のさらなる危機の発端にすぎず、人類を救う方法は原始時代にある。そしてアラタの体質・生活全てはそのためのものだった」と。一体どういうことなのか!? 物語が進むに連れ、この世界の秘密に対するヒント、そしてさらなる謎が出てきます。
「(世界の謎について)期待していてください! あっと驚く、みんながおもしろくて納得できるような展開を作家さんと練っています。もし人気がなくてすぐ終わっちゃったらそこまで描けないですけど……」(籾山さん)
ジャンプ+では『彼方のアストラ』が“精密に張られた伏線”や“意外な展開”で好評を博し、2019年のマンガ大賞を受賞しましたが、『アラタプライマル』もそうした謎解き部分に注力しているそうです。余談ですが、及川さんが携わってきた『トリコ』では、美食神アカシアのフルコース、伝説の食材GOD、グルメ細胞の悪魔(赤、青、緑、白、黒の5色)などの壮大な伏線・設定が終盤にかけて一通り回収されていました。
油断して読むとやられる
現在、物語はタイムスリップしたアラタたちが避難所で一段落した後、自衛隊員らとチーム編成をして、本格的に原始時代の世界を探検するステージに突入しています。ここからは、アラタならではの切り抜け方が一層描かれるとのこと。なお、本作では第2~3話にかけてある種の洗礼が待っています。映画「ミスト」のような衝撃があるのでご注意ください。
「サバイバル作品の面白さには、迫ってくる危機と、それをどう回避して生き延びるかの2つがあります。あそこでは、その片方をしっかり見せたいと思いました。何が起こるかわからない、怖い世界にいるんだと。平和なところでアラタが頑張ってもあまり意味がないので……」(籾山さん)
出張掲載:第1話
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