レビュー

内野聖陽の神演技「きのう何食べた?」10話 ごはんを題材にして描き出す、“家族”を大切にする方法(1/2 ページ)

食卓が幸せなのは、ごはんがおいしいからだけじゃない。

advertisement
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 「キライになったでしょ、俺のことっっ!」

 「……」

 「普通ひくよねっ! 心の狭いこと言ってるってわかってる。自分も浮気したことあるくせに、シット深いって最低だよね!」

advertisement

 「ケンジ!」

 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 迫真の演技で視聴者を引き込むケンジ役の内野聖陽。それをしっかり受け止めるシロさん役の西島秀俊。ドラマ24「きのう何食べた?」が単なる“飯テロドラマ”なんかじゃないことが、はっきりわかるシーンだった。“ごはん”を題材にして、何かを見ている人たちに伝えようとしている。だから、こんな芝居が飛び出すのだ。

 先週放送された10話は、好きな人同士が一緒になって出来上がった“家族”というものは、実は脆くて壊れやすいものだということと、壊さないようにするにはどうすればいいのかということがくっきり描かれていた。

好きな人同士の“家族”を壊したくない イラスト/たけだあや

溢れ出るケンジの想い

 冒頭のやりとりは、シロさんに小日向さん(山本耕史)と2人きりで食事に行かないでほしいとケンジが懇願する場面。過ちなんてあり得ないと一笑に付すシロさんだが、ケンジには同じようなケースで浮気をして、そのときの恋人と別れてしまった過去があった。

advertisement

 シロさんのことが好きでたまらない。シロさんのことを失いたくない。ケンジはこれまでシロさんと何度も何度も食卓を囲み、そのたびに「幸せ」を噛み締めていた。シロさんを失うことは幸せを失うことだ。

 嫉妬、疑い、怯え、自己嫌悪……さまざまな負の感情がとめどなく溢れ出てしまうが、シロさんは逃げずにガッシリと受け止める。ハグやキスだと嘘っぽいが、肩を抱くところにシロさんの包容力を感じる。女らしいとかヒロインとか乙女心とかじゃなくて、男と男、人と人。何も言わず、ケンジの要望どおり小日向さんに断りの電話を入れるところも優しい。

 中江和仁監督は1~3話までの控えめな演出とはうって変わって、内野聖陽の演技を真正面からのカメラで捉えていた。ケンジの感情がより一層ストレートに視聴者に伝わっていたことと思う。

 それでいて、開始10分頃にこのシーンを持ってくるという構成の妙も見逃せない。クライマックスだからといって、ドラマの終盤に置くのはちょっと重い。深夜の食事で胃もたれするようなものだ。ドスンという気分ではなく、ふんわりとした気分で床につきたいのが週末の気分である。実際この後、シロさんとケンジは柔らかい日差しの中で、ふんわりしたクレープを頬張って幸せを噛みしめるのだ。

10話の見どころ。ケンジ役の内野聖陽の迫真の演技。女らしいとかヒロインとか乙女心とかじゃなくて、男と男、人と人、ケンジとシロさんのかけがえのない関係が強く刻まれた イラスト/たけだあや
       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 刺しゅう糸を20時間編んで、完成したのは…… ふんわり繊細な“芸術品”へ「ときめきやばい」「美しすぎる!」
  2. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」【大谷翔平激動の2024年 現地では「プレー以外のふるまい」も話題に】
  3. 友達が描いた“すっぴんで麺啜ってる私の油絵"が1000万表示 普段とのギャップに「全力の悪意と全力の愛情を感じる」
  4. 後輩が入手した50円玉→よく見ると…… “衝撃価値”の不良品硬貨が1000万表示 「コインショップへ持っていけ!」
  5. 毛糸6色を使って、編んでいくと…… 初心者でも超簡単にできる“おしゃれアイテム”が「とっても可愛い」「どっぷりハマってしまいました」
  6. 「これは家宝級」 リサイクルショップで買った3000円家具→“まさかの企業”が作っていた「幻の品」で大仰天
  7. 「人のような寝方……」 “猫とは思えぬ姿”で和室に寝っ転がる姿が377万表示の人気 「見ろのヴィーナス」
  8. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  9. 山奥で数十年放置された“コケと泥だらけ”の水槽→丹念に掃除したら…… スッキリよみがえった姿に「いや〜凄い凄い」と210万再生
  10. 13歳少年「明日彼女に会うから……」 パパを説得してヘアカットへ→大変身した姿に「生まれ変わった」「全く別人みたい」【海外】